人波の向こう側へ。京都の紅葉を独り占めできるホテル3軒。

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京都の紅葉は美しいが、それだけに人も多い。けれど「泊まる」という選択をすれば、同じ景色は別のものに変わる。拝観時間にも人波にも縛られない。まだ誰も歩いていない早朝の森、湯船から見上げる対岸の山肌、灯りを落とした夜の庭。日中は誰のものでもない紅葉が、朝と夜は泊まった人のものになる。嵐山、南禅寺、鷹峯──紅葉を敷地のなかに抱えた3軒を訪ねる。


翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都|京都・嵐山

川面に映る嵐山を、部屋から、湯から

平安の昔から、嵐山は貴族たちの別荘地だった。大堰川に舟を浮かべ、管絃を奏で、紅葉を詠む。同エリアにある小倉山は古くからの紅葉の名所で、「小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ」と百人一首にも詠まれている。千年前から、ここは秋を愛でるための土地だった。

渡月橋から川沿いを少し上がったところに立つ「大門」。明治期のものと伝わる。この重厚な構えが、「翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都」のエントランスだ。

敷地内に残る「延命閣」は、川崎造船所を創業した川崎正蔵が明治期に構えた別荘で、築120年を超える。2015年、ホテルはこの歴史を抱え込むかたちで開業。客室は全39室、うち17室に専用の露天風呂が付く。天然嵐山温泉をたたえる貸切露天風呂は、檜の「洛」と岩風呂の「庵」、2つある。

窓の外には保津川の流れと、対岸の山肌。秋にはその斜面がそのまま色づく。着替えも化粧も気にすることなく、嵐山の紅葉と向き合える。見頃は11月中旬から12月上旬。昼は赤と黄が入り混じり、川霧が山肌を覆う朝はひときわ幻想的だ。渡月橋に紅葉狩りの人々がやってくる前に歩く朝の嵐山は、驚くほど静かだ。

川に張り出したテラスをもつ「茶寮 八翠」は、1910年に建てられた「八賞軒」を改装したもの。かつて八人の詩人がこの地の八景を詠んだことに由来する名だ。宿泊せずとも楽しめるアフタヌーンティーは「発酵」がテーマだ。会席の様式にフランス料理の美意識を重ねた「京 翠嵐」でいただくディナーもまた、特別なものとなるはずだ。

翠嵐 ラグジュアリーコレクションホテル 京都
京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町12
075-872-0101
https://www.suihotels.com/suiran-kyoto/
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南禅寺参道 菊水|京都・南禅寺

1日6組だけが知る、名庭師・植治の池泉庭園

南禅寺の参道沿いに、約830坪の敷地がひっそりと開けている。明治28年頃、呉服商・寺村助右衛門の別荘として建てられたのが、この宿の始まりだ。

南禅寺界隈は、明治期に琵琶湖疏水が通ったことで一変する。引き込まれた豊かな水を庭に生かし、政財界の要人たちが競うように別荘を構えた。その庭の多くを手がけたのが、近代日本庭園の祖とされる七代目・小川治兵衛――通称、植治。無鄰菴も對龍山荘も、植治の手による。「南禅寺参道 菊水」の池泉廻遊式庭園もまた彼の仕事だ。

同宿は料理旅館として約60年を重ねたのち、2018年に別邸としてリニューアルした。レストランでは京都近郊のテロワール(風土)が育む旬の食材を生かしたイタリア料理を提供する。腕を振るうのは、ミシュラン三つ星店での研鑽を積んだヘッドシェフ・田中秀和。彩りまで計算された一皿は、庭が四季ごとに見せる表情を写し取ったかのようだ。

紅葉の盛りは11月中旬から12月上旬。池の面に映り込んだ紅が、鯉が動くたびに静かに崩れ、また戻る。客室はわずか6室。南禅寺の門前という立地でありながら、夕刻を過ぎれば庭の音は水と風だけになる。静寂に身を浸してから眠り、翌朝、誰もいない庭に下りてひと回りする――ここに泊まる醍醐味を心ゆくまで味わいたい。

南禅寺参道 菊水
京都市左京区南禅寺福地町31
075-771-4101
https://kyoto-kikusui.com/
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アマン京都|京都・鷹峯

「森の庭」に、紅葉が降り積もる

京都駅から車で30分。「アマン京都」は、金閣寺の北西、洛北・鷹峯の山裾に佇んでいる。ここは、江戸初期、本阿弥光悦が工芸家たちと移り住み「光悦村」と呼ばれた、芸術の地。門をくぐれば、市街の喧騒は一気に遠くなる。

もともとこの土地を所有していたのは、西陣織の織物商だった。織物美術館を建てる計画で、およそ40年をかけて土地を整え続けた。各地から石を運び込んで積み、水を引き、木を植えた。だが美術館は実現しないまま、森は静かに眠りについた。その夢を別のかたちで受け継いだのが「アマン」だ。設計はケリー・ヒル・アーキテクツ。周囲の森まで含めれば約32万㎡という敷地に、黒を基調とした低層の建物が沈み込む。

同ホテルが掲げるキーワードは、石、水、光、森、苔の5つ。なかでも石は、この土地の記憶そのもの。前の所有者が各地から集めた石材は、庭に据えられた景石としてだけでなく、園路の敷石や、客室へ上がる沓脱石としても使われている。人の手が入っているのに、自然がそうしたようにしか見えない――その境目のなさが、この庭のすごさだ。

どの季節に訪れても絵になるが、圧巻はやはり秋。しっとりと濡れた石と苔の上に、もみじが降り積もる。緑と赤が重なり、森全体がゆるやかに、そして芸術的に色を変えていく。

森の庭を進んだ先には、2025年にオープンした茶室「仙窟」が静かに佇む。苔むした巨石に囲まれた石畳の先に広がる隠れ家のような空間で、一椀の茶と向き合うひとときは格別だ。

客室は全26室。近隣に湧く源泉を引いた天然温泉は、アルカリ性単純泉の内湯と、露天の岩風呂で楽しめる。湯に浸かりながら色づいた木々を見上げれば、京都にいることを忘れてしまいそうだ。

なお、四季折々の厳選食材を生かしたおまかせ懐石を提供する「鷹庵」と、炭火や薪火、発酵・熟成の技法で京都の旬食材の魅力を引き出す「ザ・リビング パビリオン by アマン」は、宿泊者以外も利用できる。森に抱かれた席から、窓いっぱいに広がる紅葉を愛でる――それだけでも、ここに足を運ぶ理由になるはずだ。ただし庭園の散策は宿泊者限定。紅葉の季節は宿泊者が優先となる場合もあるので、早めの予約を。

アマン京都
京都市北区大北山鷲峯町1
075-496-1333
https://www.aman.com/ja/resorts/aman-kyoto
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  • editor: Aya Hasegawa