—熊谷さんの作品は、古代の出土品のような趣きあるフォルムと、ガラス器ではあまり見たことのない色の混じりあいにひかれます。この作風にいたったきっかけは?
熊谷:僕は美大でガラス工芸を専攻してガラス制作のさまざまな技法を学びました。ひととおり体験してみて思ったのが、「これまで見たことのないものを作ってみたいな」ということだったんです。それで鋳造(ちゅうぞう)という技法を選びました。その理由は、鋳造だと自分では予想ができないことが次々に起こるからです。
—予想ができないことというのは?
熊谷:鋳造は、石膏型にガラスの粉や塊、再利用のガラス片などを詰めて窯に入れ温度を上げて溶かす技法です。その後時間をかけてゆっくり冷ましていき最終的に石膏型を割って中身を取り出します。トンカチで叩き割るまで、どんなものができたか、自分にも予想がつかないんです。
—なるほど。具体的にはどのように作業するのですか?
熊谷:僕は、ガラスの原料と一緒に土や金属の粉も混ぜて型に入れます。最終的に1000度近くまで温度をあげて溶かすと、性質の違う原料が型の中で対流を起こし混じり合う。同時に、金属は成分の違いによって、ブルー、パープル、グリーン、イエローなどさまざまな色に発色し、土は流れて不揃いな景色を作ります。
—時間をかけて冷ましたあとは?
熊谷:ひとつひとつ石膏型を割って中身を取り出します。毎回型を割ってしまうので、基本的に同じものはできない。すべて一点ものなんです。角皿や楕円皿など平皿は同じ型を何度か使えるようにしていますが、使うガラスや金属、土の量などは毎回変えています。
—選ぶ材料や、その割合、温度によるガラスの対流、冷ます時間など、さまざまな要因が偶然的に重なってひとつひとつ違うものができるのですね。
熊谷:石膏型をとるための原型も毎回いちから作ります。一般的に、原型は粘土を用いて陶芸のように作ることが多いと思うんですが、僕はロウを使っています。ロウは湯煎するくらいの温度ですぐに柔らかくなるので、綺麗な形に成形するほうが難しくて、自分が考えているのとは違う歪みが生まれることがある。その形をいかすんです。
—どこをとっても、一期一会で生まれる作品なんですね。作品を観るお客様も、その時の気持ちや好みに合う一期一会を楽しみにしてくれているのではないでしょうか。今回は、酒器や鉢などうつわ作品も充実していますね。
熊谷:口に触れたり、盛り付けるうつわは、石膏型から外し余分な部分を削ってからファイヤーポリッシュという技法で再度温めて磨いています。磨くのは主にお猪口の縁や鉢の見込みですね。滑らかな触りごこちになっていると思います。
—熊谷さんはお料理をしますか? というのも、平皿も鉢も飾っておくだけでも綺麗なのですが、食材が映えそうな色あわせで献立が浮かぶんです。
熊谷:料理は日常的にしますね。最近はソーセージを作るのに凝っていたり。料理のためのうつわを作る時は、色のグラデーションが奇抜になりすぎないようにしています。表面に土が流れている作品は焼物のようでもあり、特に料理が映えるかなと思います。自宅で買ってきたお寿司をのせて食べることがありますよ。まぐろの赤身なんか、綺麗です。
—確かに、光の当たり方で焼物のようにも見えますね。
熊谷:白い壁ではカラフルなガラスに見え、木棚に飾ると焼物のように見えると思います。部屋の中で置く場所を変えたり、光の強弱による見え方の違いなども楽しんでもらえたら嬉しいですね。季節ごとにいろいろな楽しみ方ができると思います。
※2021年3月29日まで横浜の「sumica 栖」にて「熊谷峻展」を開催中です。