ロエベ財団 クラフトプライズ 2025の大賞は、日本の青木邦眞氏が受賞!
Culture 2025.06.04
ロエベは、第8回目となるロエベ財団 クラフトプライズ 2025の大賞を青木邦眞氏の《Realm of Living Things 19》(2024年)に授与することを発表。

デザイナーの深澤直人、建築家/インダストリアルデザイナーのパトリシア・ウルキオラ、ルーブル美術館装飾美術部門ディレクターのオリヴィエ・ガベ、プリツカー賞受賞の建築家ワン・シュウら、デザイン、建築、ジャーナリズム、批評、キュレーションなど各界の第一線で活躍する12名の審査員によって、30名のファイナリストの中から選出された青木邦眞氏。審査員は、技術的完成度、技能、革新性、芸術的ビジョンにおいてもっとも優れた作品を選び出すべく選考を行なった。青木氏のテラコッタ彫刻作品は、伝統的な紐作りの技法を率直な方法で用いている点と、素材が生のままの姿で表現されている点が評価されて選出。今回はさらにナイジェリア出身のニフェミ・マーカス=ベロ氏とインド出身のグループ、スタジオ スマクシ・シンに特別賞が授与された。

今年のロエベ財団 クラフトプライズでは、伝統的なクラフト技法を従来の素材から新たな素材へ転用した革新的な作品が選ばれている。例えば、バスケット作りの技法を粘土に、機織りの技法を金属に用いるなど、伝統的なモチーフが新たな解釈や再構築を受けている。一方で、他の作品ではアーティスト自身が独自の道を切り拓き、ユニークな彫刻的フォルムを生み出し、新たな方向性を示したものも。これらの新しいフォルムの中には、幻想的で遊び心あふれるものもあれば、表面にジェスチャーを加えるような仕上げによって、手仕事の痕跡がより明確に現れているものもある。

ファイナリストたちは、133の国と地域からなる4600点以上の応募の中から、2025年2月に選考員によって選出された。18の国と地域を代表する彼らは、陶器、木工、テキスタイル、家具、紙、ガラス、金属、ジュエリー、漆など多岐にわたる分野と素材で作品を制作。
本賞は2016年にロエベ財団によって設立され、現代のクラフトマンシップの卓越性、芸術性、革新性を称え、今日の文化におけるクラフトの重要性を認識し、その才能、ビジョン、革新への意思によって、未来の新しい基準を打ち立てるであろうアーティストを評価することを目的としている。同賞は1864年に職人たちによるクラフトの工房として創始されたロエベの起源を示唆するものでもあるのだ。

text: Natsuko Kadokura