プラダと妹島和世による「犬島プロジェクト」の全貌をレポート!
Culture 2025.06.17
プラダの巡回型文化イベント「PRADA MODE」の第12弾「PRADA MODE 大阪」が、2025年6月に大阪・うめきた公園で開催。建築家・妹島和世との再コラボレーションにより、プラダと彼女の「犬島プロジェクト」が紹介され、自然と共生する建築の魅力が伝えられた。
今回は、大阪でのイベント前に犬島にて開催された「犬島『家プロジェクト』」や「犬島 くらしの植物園」のプライベートプレビューの様子をレポート!
プラダが寄贈した「犬島 くらしの植物園」内の常設パビリオン。©Prada
瀬戸内海に位置する、小さな島、犬島。直島から豊島を経由して船で約1時間。穏やかな海を眺めながら向かう先は、島全体が美術館ともいえる、島民40名ほどの小さな島。
かつて犬島は採石場と銅の精錬で栄え、20世紀初頭には約5000人が住んでいたそう。しかし、産業衰退とともに人口も減少し、精錬所も約100年放置されたままに。そんな犬島を元気にしたい!と2008年にベネッセアートサイト直島を運営する福武財団が妹島を招き、プロジェクトの一環として島の再生をスタート。妹島は古民家を解体して使える資材を再利用しギャラリー等を整備。そして、「F邸」の公開を機に「犬島『家プロジェクト』」が本格的に始動した。
犬島「家プロジェクト」F邸。©Prada
「F邸」の改修に取りかかった際、妹島は解体した建物がすでに一度リノベーションされていたことに気づいたという。その経験から彼女は「新築とリノベーションは区別されるものではなく、時のサイクルの中で巡っていくものだ」と語る。まさにこの犬島「家プロジェクト」はその考えを体現しており、土地の地形、日々変化する海の色を感じ取りながら、土地固有の石や自然を活かし、風景と寄り添いながら作られ、アーティスト、建築家、建設業者、そして島の住民たち、誰もが参加者となって進んでいった。
このプロジェクトのアート作品をキュレーションしたアーティスティックディレクターの長谷川祐子はこの島を「桃源郷」と呼んでいたが、海を超えて辿り着く、儚くも鮮烈な夢のような場所。訪れた人に宇宙のはじまりのような感覚を味わって欲しい__そんな思いから、2013年からの展示には名和晃平の作品を選んだという。
妹島による犬島「家」プロジェクトの一部をご紹介。
犬島「家プロジェクト」F邸 名和晃平「Biota (Fauna/Flora)」2013
「Biota」というのは、特定の地域や時代に生息する生き物の状態をあらわす概念。まさに生命(いのち)が誕生しようとする瞬間が表現されている。©Prada
犬島「家プロジェクト」A邸 ベアトリス・ミリャーゼス「イエロー フラワー ドリーム」2018
本作の原画のレプリカが「PRADA MODE 大阪」の会場にも展示された。©Prada
犬島「家プロジェクト」S邸 荒神明香「コンタクトレンズ」2013 ©Prada
そして今回、プラダは「犬島 くらしの植物園」内に常設のパビリオンを寄贈。プライベートプレビューでは、このパビリオンを舞台に、建築家の塚本由晴、劉家琨(リュウ・ジャークン)、フェナ・ハークマ・ワゲナーの3人による鼎談が行われ、「日本の里山、中国の街、イギリスの都市」をテーマに街づくりとコミュニティの関係について語られた。
常設パビリオンにて開催された3名の建築家によるトークショーの様子。©Prada
ほかにも渋谷慶一郎によるミュージックパフォーマンス、「犬島 くらしの植物園」の花を摘んで竹林の奥にある竹に生ける体験、妹島設計によるピザ窯でのピザ作り、アーティスト・小牟田悠介による犬島の石を使った「ハーブが見えないひとのための道標」というワークショップなど、さまざまなプログラムが開催された。
「犬島 くらしの植物園」にて花を摘む、アーティストの道念邦子。©Prada
妹島とともに犬島「家プロジェクト」を手がけるアーティスティック ディレクターの長谷川祐子はプレビューの場でこう語った。「22世紀に向かって"センサリーラーニング(五感を通じた学び)"がとても重要になってきます。AIなど情報が先行する時代だからこそ、リアリティを感じること、感情と自身の身体を通してどのように情報を学んでいけるかがとても大切」。
まさにこの犬島での体験は、自然、カルチャー、建築を通して、五感をフルに使って味わう美しいひととき。今後は、この島に学校をつくる構想も進んでいるようだ。
常に精力的で皆への気配りも忘れない妹島和世。©Prada
「対話と発見を通じて共生が形作られ、皆さんの参加によって成長し続ける新たな風景が生まれるはず」という妹島の言葉通り、犬島そして大阪へと人やカルチャーが紡がれ、新たな可能性やコミュニティが広がっていく。今回のプラダと妹島のコラボレーションによる「プラダ モード大阪」および「犬島プロジェクト」の革新的な試み、今後の発展がより楽しみだ。
犬島も会場のひとつとなる「瀬戸内国際芸術祭2025」も8月1日からスタート。ぜひその機会に犬島を訪れてみて。