綾瀬はるか主演ドラマ「ひとりでしにたい」が生まれた背景を脚本家・大森美香に聞く。

Culture 2025.06.19

綾瀬はるか主演、カレー沢薫原作のドラマ「ひとりでしにたい」の放映が6月21日より始まる。インパクトのあるタイトルであり、独身女性の終活を描いた斬新な作品なだけに、放送前からSNSがざわついている。本作の脚本を担当した大森美香にインタビューを行い、2回にわたってお届け。前編となる今回は、大森がいかにして「ひとりでしにたい」の脚本執筆に向き合ったのか?について聞いた。

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推し活や自由な生活を謳歌していた山口鳴海(綾瀬はるか)がある日、終活を考えるように? ©NHK

「ひとりでしにたい」は、独身女性の終活という、ドラマでは珍しいテーマです。最初に原作を読まれた印象はいかがでしたか?

最初にプロデューサーさんからオファーをもらって、1巻をいただいて読んだ時に難しい話だなと思いました。情報量がとても多い作品なので、1巻を読み終えるだけでも随分時間がかかってしまって......。で、2巻、3巻と読み進めていくうちに、「この作品をほかの脚本家さんに書かれたら、悔しいな」という気持ちがどんどんわいてきました。

以前のインタビューで大森さんは「原作がある脚本は、最低でも3回は原作を読む」とお話ししてくれましたが、今回「ひとりでしにたい」は何回読まれましたか?

もう3回どころではないですね。終活という内容もデリケートですし、原作が不思議なリズムで読んでいくうちに、物語の続きが「これはどうなるんだろう?」と気になってしまう魅力があるんですよ。だから通し読みでは6〜10回くらい読んでいるはず。書いている合間にも、ちょい読みをしているから、実際はもっと読んでいるかもしれません。

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鳴海にとって憧れだったはずの叔母・光子(山口紗弥加)が、孤独死を迎えることに。©NHK

─ 原作の中で強烈に印象に残ったシーンはありますか?

うーんと......(間を置いて)あ、第1話に出てきますけど、亡くなった叔母さんの遺品から、とあるものが出てきたところ! 原作として、すごく最初から飛ばしているなあと思いました。子どもには見せられないかなとも(笑)。あとは主人公の鳴海(綾瀬はるか)さんの弟のお嫁さんも......。ここはドラマでも出てくるので詳細を伏せますが、ふたりの対決に驚き、ゾッとしましたね。

─ そう、今回は主演が綾瀬はるかさん! 主演が彼女に決まったのは執筆途中だったと伺いましたが、それを聞いた時のお気持ちは?

実は(主演が)綾瀬さんだったらいいな、と思っていたんですよ。決定して、脚本が途中から当て書きになりましたし、書きながら声が浮かんできて、めちゃくちゃ執筆のペースが早くなりました(笑)。

─ 撮影現場にも行かれましたか?

はい。もう執筆は終わっていたんですけど、どんなふうに進んでいるのか見たいというミーハーな気持ちで......。現場では、綾瀬さんがセリフを話すと「こういう感じになるのかあ」と耳を傾けていました。

─ 綾瀬さんと一緒に、原作者のカレー沢薫さんにお会いになったと聞きました。

そうなんです。綾瀬さんと私とプロデューサーさんと。なかなか原作者さんとお会いすることはないので貴重な時間でした。カレー沢さんの『クレムリン』という作品を読んだことがあってずっとシュールな漫画家さんのイメージがあったのですが、今回、終活をテーマに書かれていると聞いてとても興味が湧き、最近はあまり漫画原作のお話はお受けしていなかったんですけど、思わず「原作を送ってください!」とプロデューサーさんにお願いしましたね。

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想像以上に難しく、険しい道の終活に鳴海は何度も落ち込む。©NHK

─ 終活をコミカルに描いたドラマですが、視聴者はどんな気持ちで受け止めるといいでしょうか?

ぜひ、笑ってほしいです! 終活だからといって「重い」とは思わず、楽しく見てもらえるようにと考えながら書きました。原作者のカレー沢さんもそういう気持ちをお持ちなのではないかな、と。終活と言われると、ほんの少し先のことなのに考えたくないし、必ず訪れることなのに話題を避けてしまうと思うんです。そういった話題だからこそ、家族揃って笑って見てほしいです。我が家も、子どもにはまだ早いかもしれないけど、実母や夫には見てほしい。いや、子どもにも見てほしい。私もこの脚本を書くことで終活を考えるきっかけができたんですよ。視聴者のみなさんにも何か感じてもらえたらいいですね。

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鳴海と同僚・那須田優弥(佐野勇斗)との関係性はどう進んでいくのか。©NHK


「ひとりでしにたい」プロデューサー 高城朝子さん
終活がテーマのドラマではありますが、実は価値観が変わっていくという側面も持つ作品です。まだ日本には典型的に頑固なお父さんとか、女性はこうあるべきだとか、かなり"決めつけ"のような考え方が存在しています。登場人物たちも当初はそういった面を持っているのですが、1話を追うごとに彼らも身近にある価値観が変わっていく。見ているうちに視聴者の皆さまも同じように、物事への視点が変わるかもしれません。

大森美香
脚本家。テレビ局勤務、ドラマADなどを経て深夜ドラマ「美少女H」(フジテレビ・1998年)脚本家・演出家デビュー。月9「不機嫌なジーン」(フジテレビ・2005年)では向田邦子賞を史上最年少で受賞。朝ドラ「あさが来た」(2015年)、大河ドラマ「青天を衝け」(ともにNHK総合・2021年)など代表作多数。

「ひとりでしにたい」
2025年6月21日(土)スタート
NHK総合 毎週土曜22時 <全6回放送>

<出演>
綾瀬はるか、佐野勇斗、山口紗弥加、小関裕太、恒松祐里、満島真之介、國村隼、松坂慶子

<あらすじ>
山口鳴海(綾瀬はるか)は仕事に趣味の推し活にと、独身生活を謳歌していた。しかし憧れていたキャリアウーマンの伯母・光子(山口紗弥加)が、思いもよらない孤独死をしたことをきっかけに焦って婚活を始めるが、年齢の壁によってあえなく撃沈。さらに年下の同僚・那須田優弥(佐野勇斗)からは「結婚すれば安心って昭和の発想ですよね?」とバッサリ切り捨てられる。そこで鳴海は"婚活"から180度方針転換して、"終活"について考え始めるが......。

interview & text: Hisano Kobayashi

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