【フィガロジャポン35周年企画】 上野水香のバレエの世界に心酔する、特別トークイベントをレポート。

Culture 2026.02.26

2025年3月、創刊35周年を迎えたフィガロジャポンでは、「アールドゥヴィーヴルへの招待」をテーマに読者の皆様にさまざまな体験の場を提供しています。

1月25日(日)には、東京バレエ団ゲスト・プリンシパルの上野水香をゲストに迎え、彼女のこれまでのステージ映像を観ながら、舞台の見どころや裏話を本人が解説するイベントを在日フランス商工会議所「ボンジュール・フランス」と共催。招待された100名の読者を魅了した、その特別な時間を振り返る。

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フィガロジャポン編集長の森田聖美を聞き手に、上野水香のバレエの世界にどっぷり浸ることができるトークイベントを開催。

この日、会場となった東京日仏学院のエスパス・イマージュには、多数の応募の中から当選した100名の読者が来場。フィガロジャポン編集長の森田聖美による冒頭挨拶では、創刊35周年を迎えたフィガロジャポンがずっと大切にしているアールドゥヴィーヴルのあり方について解説。さらに、パリ生まれのフィガロが創刊当初からバレエとは密接な関係にあることに触れて、この日の主役である上野水香を呼び寄せる。大きな拍手が沸き起こる中、上野は読者の目前に颯爽と姿を現した。

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ミントのトップスとライラックのスカートというパステルカラーのコーディネートで登場した上野。ひと足早い春を会場に運び込んだ。
トップス ¥40,700、スカート ¥61,600/ともにハトラ イヤリング ¥9,500/ジェンマ アルス ネックレス 参考商品、ブレスレット ¥61,600、リング(右親指) ¥19,800/以上ヨースター(エンメ) ブレスレット ¥42,900/スワロフスキー・ジュエリー リング(左中指) ¥30,800/スクア シューズ 参考商品/ピエール アルディ

森田編集長から上野の来歴が紹介される中で、バレエの世界に入ることになったきっかけを問われると、「引っ込み思案だった5歳の時に母親から勧められて始めたバレエでしたが、自分が踊ることで周囲が喜んでくれたのがとにかくうれしくて、次第にのめり込んでいきました」と上野。踊るという行為が喜びに起因しているのは現在でも一貫しており、「踊ることは人生の喜び」と断言する彼女がバレエの世界に導かれたのは、持って生まれた身体能力に恵まれたこともあって、当然の成り行きであり、運命だったと感じられるエピソードだ。

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昨年2月に神奈川県民ホールで上演されたマラーホフ版『白鳥の湖』。映像編集を上野自ら手掛けただけあって、見せ方がダンサー目線のカメラワークになっている貴重な映像に仕上がっていた。

続いては、近年の上野水香の舞台映像を紹介する時間に。最初に上映されたのは、上野水香の代表作品のひとつ『白鳥の湖』から。2025年2月に上演されたマラーホフ版『白鳥の湖』のダイジェストシーンを観ながら、衣装やメイク、役の解釈について話題が及んだ。キャラクターを演じる際に「役を自分に引き寄せるタイプ」と語る上野は、黒鳥について「オディールは、父親(悪魔ロットバルト)の言うことをよく聞く"いい子"」という独自の解釈を披露したが、たとえ悪役であっても人間味あふれる役作りを追求する上野ならではの視点には説得力があり、魅力的なキャラクターがいかにして誕生するのか伺い知ることができた瞬間だった。

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地下30mまで掘られた工事現場の限られたスペースで、白鳥を舞う上野(スクリーン中央)。振付は、元東京バレエ団ソリストのブラウリオ・アルバレスが手掛けた。神奈川県の公式YouTubeチャンネルで視聴可。

次に、鎌倉市出身の上野が「かながわ観光親善大使」を務めていることから、神奈川県の文化芸術プロモーションムービーが上映された。神奈川県では、相模原市緑区で建設が進むリニア中央新幹線「神奈川県駅」が開業するまでの間、工事現場を活用した文化芸術の取り組みを進めている。現在建設中の地下トンネル内で、『白鳥の湖』より「情景」の音楽に合わせて白鳥を踊る上野を、ドローンも駆使してさまざまな角度からとらえている。「全幕では踊られることのない曲を使用した、完全にオリジナルの作品です。工事現場でクラシックを踊ることはシュール過ぎないかと悩んだのですが、実際に映像を見てみるとかえってそれがおもしろくて。ユニークな場所を表現するのにふさわしいアイコニックな作品になっています」(上野)

プロモーションムービーはYouTubeでも公開中。

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光と影のコントラストが印象的な『ルナ』では、闇の中から白の総レオタードにポアントというミニマルな衣装の上野が浮かび上がり、静謐な世界を情感豊かに表現する。ゲストの映像を観る眼差しも真剣そのもの。                                                 

3つ目の映像はコンテンポラリー作品『ルナ(La Luna)』。巨匠モーリス・ベジャールがバッハの曲を基に、月という神秘的な存在と、その光の下で目覚める女性の魂や内面を描いたこのソロ作品は、ベジャールの大作『ボレロ』が"動"だとすると、"静"と呼ぶべき対極の存在だと上野は指摘する。月の光に照らされた女性のたおやかさや魂のメッセージを伝えるこの演目について、「音楽も美しく、すごく切なくなる作品。うずくまっているところからすっと立ち上がって脚を上げる振りがありますが、人生で苦しいことがあったとしても踊ってみせようとする自分の気持ちとリンクして、練習中に涙が出てくることも」と自身の心情にオーバーラップする特別な作品であることを明かした。一方では、照明の明暗を活かして、脚の出し方ひとつにしても最も美しく見える角度を緻密に計算していることに言及し、森田編集長を感嘆させる場面も。

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ベジャール本人から指導を受けて、いまでも『ボレロ』を現役で踊っているバレエダンサーは、「私とエリザベット・ロスさん(モーリス・ベジャール・バレエ団)だけだと思います」(上野)

最後に登場した映像は、上野水香の代名詞にもなっているベジャールの『ボレロ』だ。舞台中央に置かれた赤い円卓の上で、"メロディー"役のダンサーが旋律を踊り、その周りを囲む"リズム"役の群舞と融合しながら、うねるような熱量を生み出していく本作品は、日本では東京バレエ団のみ上演が認められている。上野は、ベジャールから『ボレロ』を踊ることを許され、本人から直接指導を受けた数少ない日本人ダンサーのひとりだ。「ベジャールさんに最初に見ていただいた時に、『素晴らしい。いい「ボレロ」になるだろう』って仰っていただいたんです。未来を見据えて、きっと可能性を感じてくださったんじゃないかな」(上野)

そうして憧れの『ボレロ』を実際に踊れるようになったものの、自身が思い描いていたラインを出すところまでなかなか行きつかず、ずっとプレッシャーを感じていたという。しかし時間をかけて踊り込んでいくうちに、「何も考えることなく、ただこの作品に身を投じようと思った時、初めて納得がいく踊りができました。お客様もすごく喜んでくださって。それが4、5年前の話。それまでは本当に大変でした」と、長年の葛藤を克服し、新たな境地にたどり着いたことを打ち明けた。「恐怖の存在だった円卓が、いまでは小さな宇宙というか、この上なく自由な世界になっています。そこでお客様や"リズム"のダンサーたちと繋がって、ひとつになる瞬間を待ち望んでいる自分がいます」(上野)

いまでは『ボレロ』は、上野の代表作に挙げられるようになったが、作品の持つ魅力や奥深さについて、上野は改めて強調する。「『ボレロ』は、ダンサーを映し出す作品。1回1回が違った踊りになるんです。そういう意味でも怖くもあり、おもしろくもあり、奥が深い。さらにもっと奥を覗いてみたいですね。東京バレエ団がとても大切にしているレパートリーなので、20年間、何度も『ボレロ』を踊る機会を得られて、自分はすごく恵まれていたなと思います。やり続けることで見えてきたものが間違いなくありますから」(上野)

今回のイベントで上映された『白鳥の湖』、『ルナ』、『ボレロ』はいずれも3月の東京バレエ団の公演『上野水香 オン・ステージ』で上演される。上野本人の思い入れや作品にまつわるエピソードを知ったうえで実際に舞台を観れば、新しい角度から作品を楽しむことができそうだ。

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お気に入りの『ボレロ』ダンサーは、ジョルジュ・ドンとシルヴィ・ギエム。「自分が踊る前には必ず、ジョルジュ・ドンの映像を見るようにしています。彼の踊りからは、香りのようなものまで伝わってくる」(上野)

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続いては、質問コーナーの時間に移る。イベントに参加した読者から事前に募った質問には、「もし男性ダンサーだったら、どんな役をやってみたい?」「フランスのどんなところに惹かれる?」「いちばん好きだった日本の漫画は?」といった興味深いものが。森田編集長との息の合った軽妙なやりとりも見ものだった。

そして最後には、お楽しみの抽選会がスタート。景品には、上野がプロデュースするコスメブランド、ピウプリマより「チャームローズセラム」、レペットの「パッケージ付きミニチュアバレエシューズ」、単行本「Mizuka バレリーナ 上野水香 ものがたり」、「Mizuka ハンドタオル」といったプレゼントが上野から提供された。当選した人は、忘れられないサプライズになっただろうが、それ以外の来場者にとっても上野水香から直接話を聞くことで、バレエの世界に一歩近づくことができる貴重な機会になったに違いない。

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会場では、上野が愛用する品々を中心に、レペットのバレエグッズやファッションアイテムを展示。

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フィガロジャポン本誌の特大カバーが35周年イベントの目印に。エスパス・イマージュに繋がる階段にて。

東京バレエ団『上野水香 オン・ステージ』
【東京公演】会場:東京文化会館
3月20日(金祭)17:00~(Aプロ)、3月21日(土)14:00~(Bプロ)、3月22日(日)14:00~(Aプロ)
【福岡公演】会場:福岡市民ホール 大ホール
3月25日(水)18:30~
【大阪公演】会場:フェスティバルホール
3月26日(木)18:30~
問い合わせ先:
NBSチケットセンター
03-3791-8888
https://thetokyoballet.com/performance/mizuka-ueno2026/
衣装問い合わせ先:
エンメ(ヨースター)
03-6419-7712

ジェンマ アルス
https://jp.gemmaalus.com/

スクア
info@suqua.jp

スワロフスキー・ジャパン
0120-10-8700(フリーダイヤル)

ハトラ
mail@hatroid.com

ピエール アルディ 東京
03-6712-6809


 

photography: AYA KAWACHI styling: Noriko Miyazaki(Mizuka Ueno) Hair&Makeup: Sumire Ono(Mizuka Ueno) text: ERI ARIMOTO

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