映画『スペシャルズ』はコワモテの男性5人組が、とある事情からダンスに奮闘していく姿と、暗殺計画が同時進行する物語だ。監督は「ミッドナイトスワン」「ナイトフラワー」を手がけた内田英治。映画公開前から韓国での上映も決定している、今年の話題作だ。笑いとシリアスが調和した物語で、楽しく、終始、口元がゆるんでいたような。ここでは本作で感じたものを書き連ねていく。まずは映画のあらすじから紹介しよう。

物語は『スペシャルズ』の消せない過去から始まる。暴力団・風間組の熊城(椎名桔平)によって集められた、過去にダンス経験が......あるかもしれないし、うっすらかもしれない4人の男たち。元殺し屋のダイヤ(佐久間大介)、桐生(中本悠太)、シン(青柳翔)に加えて、元ヤクザでムショ上がりの村雨(小沢仁志)。ここに熊城も加わりダンスチームを結成する。5人の目的はダンス大会への出場ではなく、会場へ孫の応援にやって来る、裏社会のトップの暗殺だ。彼らはレベルの高いダンススキルを持つ、小学生の明香(羽楽)の指導のもと、ダンス大会の予選、本戦へと大奮闘。そう、いつしか暗殺の目的を忘れるほどに。
映画鑑賞には観客それぞれの視点がある。本作なら、初主演でアイドルの気配を一切消していた佐久間の演技に注目するのも、内田監督の世界観に浸るのもいい。ちなみに私は『スペシャルズ』が、おじさんとワルによるダンススポ根物語だと印象に残った。
その印象の理由が、61歳の椎名桔平、63歳の小沢仁志のふたり。他メンバーの40歳の青柳を「おじさん」と称するのはやや違和感があるし、佐久間と中本に関しては現役のアイドルで、ダンススキルは抜群。劇中でも特にふたりは"ダンスができる"ほう、にカテゴライズされていた。
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椎名桔平、小沢仁志の熟練した演技が光を放つ
椎名といえば『謎解きはディナーのあとで』(フジテレビ系・2011年)の風祭京一郎役でも見られるように、全力の空回りの演技がお手のもの。熊城は反社会に生きる者として、格好つけているものの、スマホの着信音は「センチメンタル・ジャーニー」。ダンスに向き合い、コソ練をしていても左右の手足が同時に動いてしまう。そんなおじカワの花を咲かせていた。

では小沢仁志は......といえば、思い起こすのは哀川翔と並ぶ「Vシネの帝王」。洗練されたスペースのFIGARO.jpで書くワードとしては、ふさわしくないかもしれないが、編集担当のKさんも同意してくれたので、よしとする。小沢は1980〜90年代を中心にヤクザ作品へ出演しまくっていた、視聴者のアニキ。斬れ味の鋭い演技で私たちを震わせていた。いまでこそ、各作品でオールマイティーな役を演じているが、おじさん、おばさん世代にとっての邪悪のヒーローだ。その小沢がちょっと可愛いヤクザとして、映画に降臨している。
「俺は最後まで踊りてえ」

ブルーのスーツに身を包んだ、小沢演じる村雨がそう言っていた。村雨は『スペシャルズ』でも、リアルでも最年長。初老なのに20代のメンバーや、ダンス指導をする明香についていけるわけがない。それでも村雨は必死に練習を重ねる。身体ではなく、眼光の鋭い仏頂面が踊っているようなシーンも散見されたけど、そんな姿もまぶしい。おじさん特有の言い間違いで「ランニングマン」を「ダンシングマン」と言っても、若者のカルチャーのすべてに驚いていても、村雨はダンスに本気だった。そんなひたむき様子から、ついメンバー5人中、ふたりに視線が向いていた。演技はもちろん、ここまでふたりが多くのレッスンを重ねてきただろうと、(観てもいないのに)走馬灯がよぎる。
これは自分も立派なおばさん域に突入してわかるのだが、心と体が日々、乖離していく。それを食い止めるのに悪戦苦闘。それでも若い頃にクラブで遊んできた世代にとって「踊る」とは、どこか日常めいたもの。「これくらいなら」と勇んでみても、熊城と同じように左手と左足が同時に出てしまう。「踊る」がいつの間にか、憧憬になっていく......。

そんな感想を持ったうえで『スペシャルズ』が、中年讃歌だと解釈した。初めは「なぜまた、ダンス?」と思ったけれど、内田監督がダンスを題材に選んだ理由がラストまで観ていくとよくわかる。そして「頑張ろう」と小さな衝動がわく。年齢問わず、特に人生の潮目が変わる40〜50代には響くものがあるはずだ。ラブコールとして補足しておくと、本作の存在は、本誌で主演の佐久間大介さんを取材した際に知った。仕事だと2回ともオンライン視聴をしてしまったので、3回目はぜひ劇場の大きなスクリーンで、彼らの勇姿を確かめたいと思う。
⚫︎原案・脚本・監督/内田英治
⚫︎出演/佐久間大介(Snow Man)、椎名桔平、中本悠太(NCT)、青柳翔、小沢仁志
⚫︎110分
配給:エイベックス・フィルムレーベルズ ©2026『スペシャルズ 』フィルムパートナーズ
全国で公開中
https://eiga-specials.com/
コラムニスト、ライター、編集者
平成から現在に至る まで、毎クール連続ドラマを視聴し続けて、約3000本を網羅したドラマファン。趣味が高じて「ベスト・オブ・平成ドラマ!」(青春出版社)を上梓、準レギュラーを務めるFM静岡「グッティ!」にてドラマコーナーのパーソナリティーを務める。他、多数のウェブ、 紙媒体にて連載を持ち、エンタメに関するコラムを執筆中。





