小籔千豊、お悩み相談ライブから生まれた新刊『愛の小籔大説教』と次なるビジョン。
Culture 2026.04.18
"あなたの悩みを説教全開で解決しまくる笑いゼロの2時間半"と謳い、来場者のお悩みに即興で答えるトークライブ「小籔大説教」が大人気!「なぜか相談されることの多い人生だった」と振り返る小籔千豊が、10年以上続けてきたライブから生まれた書籍『愛の小籔大説教』を発売した。彼に聞く人生との向き合い方、次なるビジョンとは?

小籔千豊|Kazutoyo Koyabu
お笑いタレント、喜劇俳優、俳優、司会者、ドラマー
1973年生まれ、大阪府出身。吉本興業に所属し、2006~2022年は吉本新喜劇の座長を務め、関西以外での認知度向上に尽力。テレビバラエティ、ドラマ、映画、ラジオ、情報番組など活動は多岐にわたる。バンド「吉本新喜劇ィズ」「ジェニーハイ」のドラム担当。2008年からは音楽とお笑いを融合した音楽イベント「KOYABU SONIC」を主宰。趣味はダーツ、ポーカー、写真、映画鑑賞、『フォートナイト』。2016年からは、悩み相談トークライブ「小籔大説教」を実施。毒舌を交えながら親身に、観客の悩みに説教をする内容が人気を博している。
――さまざまな先人たちの書籍を通じて知識や視野を広げてきた小籔さんが、「これは読んでおいたほうがいい」と薦めたい本は?
酒井雄哉さんの『一日一生』にはいろいろな発見がありました。比叡山・延暦寺で千日回峰行というとんでもない修行を2回も満行された、偉いお坊さん。本の中で印象に残っているエピソードがあるんです。千日回峰行の間、朝露で草鞋の足元がぐちょぐちょに濡れて汚くなる。「なんやねん。鬱陶しいな、嫌やな」と思いながら歩いているんですが、途中、喉が渇いて川の水を飲んだ時、「なんておいしいんだ」と感動する。と同時に、さっきまで憎んでた朝露が集まって水源の元となり、この川の水を作っていることにハッと気付いた。以来、朝露の中を歩くことが苦痛じゃなくなったと。僕も「腹立つな」と思った出来事が、わずか数時間後に感謝に変わることもあるし、自分の視点ひとつだなと。そう考えるようになって、何かにムカついた時もちょっと"幽体離脱"して俯瞰で自分を見ることができるようになりました。さらに酒井さんの本のすごいところは、そんな偉い方なので難しい言葉で教えを説くのかと思ったら、親しみ深い、くだけた語り口で読みやすいんです。固い文章だったら頭に入ってこないことも、耳元でお話されているような感じでスッと受け入れられた。それってすごく大事だなと思います。
――新刊『愛の小籔大説教』も、お客さんの悩みに対して非常にわかりやすく答えています。それは語り口が大切という実感があるからですか?
もとは子どもたちのために、難しい政治の本や仏教の本を全部噛み砕いて伝えようと思っていたので、「小籔大説教」はその延長ですね。僕は小さい時から本を読む習慣はあったものの、芸人になってからは活字を追うよりも喋っているほうが楽しくて。でも、僕が一生のうちに知れることが偉人たちの100分の1だとしたら、本を読むことで、そのすごい人たちの経験を半分くらいは得られるかもしれない。だから本は読まなあかんなと。この間、又吉(直樹)からもらった新刊『生きとるわ』もおもしろかったですし、笑い飯・哲夫の『えてこでもわかる 笑い飯哲夫訳 般若心経』もおすすめしたいです。
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相談者は小学生から60代まで。仕事、友だち、恋愛、子育て、老い、死など幅広い悩みに対し、自身の経験や本で得た学びをもとに、真面目にわかりやすく回答する。『愛の小籔大説教』(主婦の友社刊 ¥1,760)
――お笑いタレントとしての活動に加え、「コヤブソニック」の主宰や音楽活動、YouTubeでのゲーム配信、英会話など、忙しい中でも新しいことに取り組み発信しています。時間の作り方やタイムマネジメントで意識していることは?
「時間がない」と思わないことが大切。時間がないと言っている人って、甘えているか、頑張っていることを誰かに気付いてほしいんじゃないかな?と思います。僕も昔、とんでもないスケジュールを与えられた時があって。4日間で新喜劇の舞台を毎日こなしながら新しい台本を3つ覚えて、夜はラップユニットの歌詞を2つ作らなくてはならない。「誰がこなせんねん!」と発狂しそうになって、周りに聞こえるように大きくため息をついてみたり......。いま思えば、未熟やったなと思います。でも追い詰められた時に「こうしている間も時計の針が進んでいるということは、俺は確実に前に進んでいる。4日間ただ我慢して耐えてみよう」と切り替えたら、終わった後、4日前に囚われていた苦しみがゴミみたいに思えたんです。
――なるほど。「時間がない」ことにフォーカスしない、という。
本当に時間がない人って少ないと思うんです。自分は北半球で一番忙しいのか? 大谷翔平や井上尚弥に比べて限界までやっているか? 違いますよね。それに大谷選手のように極めている人って、時間の使い方に対しても「まだなんかやれることあるやろ」と極限まで工夫できるんです。一方、俺の削れる時間ってなんやったっけ?と振り返ったら、スマホのしょうもないショート動画を見ている時間だったりするんですよね......。睡眠時間は削らんでいいと思うんですけど。あとは、完璧主義になりすぎないことだと思いますよ。
――春からの新しいトピックとしては、健康習慣を提案するオンラインサロン「小籔ヘルシー教」が始まりました。どんな内容を発信していくのでしょう?
「小籔大説教」が心のヘルシー解決を目指すイベントならば、身体のヘルシーについて考えるのが「小籔ヘルシー教」。僕はすごい健康志向の家に生まれて、祖父から「肉は食べるな、玄米を食べろ」などの制約も多く、当時は珍しかった酵素や青汁のようなものを飲まされたりと意識の高いモデルのような生活を送ってきて。その反動で中高生の頃は「みんなと一緒の食生活をするんじゃ!」とヘルシー的に非行に走ったこともあったんです。でも新喜劇に入り、結婚して子どもが生まれ、オカンが死んで、40歳を超えた頃、もう一度祖父の教えがよぎって自分なりに考えようと。僕は専門家でも医者でもないけれど、多くの相談に答える中で、あれこれ対策法を教えても自分の身体に向き合おうとしない人は、身体ではなく脳みそに贅肉がくっついているんやなとわかったんです。
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――情報を知っただけで終わるか、それを本当に自分のものにするかは、その人次第ですね。
健康を意識するスイッチを入れられるかどうか、それが大きい。オカンが死んだのが55で、僕もその年齢に近付いていることもあり、50〜60歳は健康をテーマにして生きて、子どもたちに「うちのパパ、ほかの人より元気やな」という姿を見せたい。同じようにヘルシー教に入ってくれた人がみんな、10年後に健康意識高く過ごせていたらいいなと。太っている、痩せているというだけの話ではない、健康に対する考え方や気付きを共有して、健康のエンターテインメントサークルみたいにしていけたらと思ってます。

「小籔ヘルシー教」(https://www.heruheruheruheru-kieeeee.com/)は月額制のオンラインコミュニティ。ここでしか聞けない話も配信していく予定だ。
――フィガロはアールドゥヴィーヴル(暮らしの美学)をメッセージとしていますが、小籔さんのが生活の中で大切にしている美学はなんですか?
アールドゥヴィーヴル!? うーん、質問の答えになるかわかりませんが、生きてるんやったら、自分にできることをして誰かの役に立ちたい。僕は「この世がパーティだとしたら?」と考えていて。みんながワインを持ってきたり、チョコレートケーキを持ってきたり、ご飯を作ってくれる人もいてパーティは楽しくなる。そんな中で何も持っていない、料理もできない俺は迷惑かかってへんか?と。それなら自分なりのやり方でちょっと場を盛り上げたり、ポツンと溶け込めていない人に声をかけたりして、パーティから帰る時=死ぬ時に「まあまあやったな」と納得できるように生きたい。人と比べての勝ち負けではなくて、食べるもの、着るもの、時間の過ごし方を自分で選んで生きること。これって自己満でしかないんですけど。自分の中でいいことをした時に幸せを感じ、結果的にそれが誰かに必要とされたり、感謝される生き方が正しい形かなと思います。
photography: Kei Kondo (3rd)




