チュイルリー公園に出現したミニ庭園が舞台。 ディオール 2026-2027年 秋冬 コレクション。
Fashion 2026.03.10
ディオールのウィメンズコレクションの場として、いまや恒例となったチュイルリー公園の特設会場。だが今シーズンはいつもと趣が違うデザインが来場者を驚かせた。
コンコルド広場に最も近い8角形の池「バッサン・オクトゴナル」を取り囲んでグリーンのベンチが置かれ、ランウェイが中央を貫く。池には睡蓮が浮かび、モネやスーラを思わせる。いかにも作り物然とした睡蓮が、ジョナサン・アンダーソンらしいシュルレアリスティックな雰囲気だ。

チュイルリー公園のバッサン・エグザゴナルに庭園のイミテーションが。睡蓮の浮かぶ池の中央をディオールの女性たちが歩いていく。© VALENTIN LECRON
3月3日午後、青空の広がるチュイルリー公園にはたくさんのセレブリティが集まった。BLACKPINKのジス、Stray Kidsのヒョンジン、タイの俳優オーム&リンリン、トンタワン・タンティウェーチャクンといったアジアからのゲストや、常連のアニャ・テイラー=ジョイ、ディーヴァ・カッセル。アンバサダーに就任したばかりのエヴァー・アンダーソンとフローレンス・ハント、ソフィー・ワイルド。日本からは俳優の河合優実と今田美桜がディオールのショーに初来場した。
2026-2027年 秋冬 コレクションでジョナサン・アンダーソンが着想を得たのは、パリの中心にあるチュイルリー公園を散策する人々の姿だった。ルーヴル宮とコンコルド広場を結ぶチュイルリー公園は、16世紀に女帝カトリーヌ・ド・メディシスによって建設され、18世紀、ルイ14世がアンドレ・ル・ノートルに再設計を命じて今の姿に生まれ変わった。一般に開かれた王家の庭園を訪れるには、それにふさわしい服装が求められたという。

上空から見た会場の様子。© ADRIEN DIRAND
その昔は着飾った上流階級の人々が集い、現在はパリジャンも観光客も思い思いの服装で散策する公園。その中に造形された小さな公園のイミテーション、そのメインストリートを、ディオールの女たちが歩く演出だ。
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ショーの幕を開けたファーストルックは、ディオールらしいグレーのニットのバージャケットに、1949年の「ジュノン」ドレスからのインスパイアによる花びらを重ねたようなミニスカート。銀糸の縁取りとラインストーン刺繍が煌めくルックだ。

LOOK 1:短い丈、ペプラムにたっぷりフレアが入った「バー」ジャケット。足元はドット柄のポルカ・ディオールのシューズで。

LOOK 4:軽く薄いチェックのセットアップは細かなプリーツで優しく体に沿う。

LOOK 7:短い丈の「バー」ジャケットとスカート。「メダイオン」のボタンが並ぶ。
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ルイ14世が一般に扉を開いたチュイルリー公園にインスパイアを得た今シーズンだけに、コレクションの全体に漂うのは18世紀の気分。この時代のシルエットに大きな影響を受けたムッシュ ディオールのシルエットの中でも、ことにジョナサン・アンダーソンがデビュー当初から再解釈する「ジュノン」ドレスや「デルフト」ドレスは、ミニドレスに、ジャケットにと進化を続けている。

LOOK 16:小さなラインストーンを散りばめたニットのアンサンブル。足元はローズ・ディオールのサンダル、イアリングは睡蓮。

LOOK 56:「デルフト」ドレスからのインスパイアによるレースのドレス。

LOOK 61:「バー」ジャケット、シークエンスを散りばめた何層ものフリル、ジーンズの組み合わせ。
小さなくるみボタンが並ぶトップスやパンツ。18世紀のチェアが起源となった「メダリオン」は、ジャケットのボタンやバッグのモチーフに。メンズコレクションに登場したプリーツの衿とブロケード。素材やディテールの随所にこの時代のエスプリが散りばめられ、クチュールメゾンらしい足元までのトータルルックで、あるいはデニムやブーツといったカジュアルなアイテムとの組み合わせで提案され、まさに庭園を訪れる人々の多様な装いを暗示する。

LOOK 40:レースが美しいアシンメトリーなジャケットに、サイドにくるみボタンをあしらったパンツ。

LOOK 47:サテンエリのタキシード風ジャケットは前見頃にリボンを織り上げたパーツが加えられて。「メダリオン」のブックトート、ジーンズにブーツでカジュアルアイテムと。
素材へのこだわりも今シーズン目を引いた。柔らかな凹凸のあるニットは、小さなラインストーンを散りばめて、ラグジュアリーにランクアップ。リボンをニットのように織り上げたドレスも印象的だ。メンズコレクションに続いてブロケードも多数登場。幅広のブロケードを織り上げるために、アトリエには新しい織り機が導入されたという。

LOOK 50:くるみボタンがずらりと並んだブロケードの「バー」ジャケットはガリアーノの時代からのインスパイア。「ジュノン」ドレスからのスカートはデニム。

LOOK 65:ラストルックはサテン衿のコートドレス。睡蓮のサンダル。
アクセサリー使いでは、服と同じモチーフでトータルルックを完成させるシューズとバッグがクチュールメゾンらしい。今シーズン、ボタンになったメダリオンは、バッグや靴のモチーフにも展開。舞台となった池にちなんで、睡蓮はアクセサリーやサンダルのデザインに昇華された。
庭園と花々への愛や18世紀への憧憬を根底に据えながら、アートに通じる遊び心を兼ね備えた現代性。ジョナサン・アンダーソンが手がけるディオールは、メンズ、ウィメンズ、そしてオートクチュールまで、メゾンの美意識と価値観を一貫した世界観で提案することを可能にした。
text: Masae Takata(Paris Office)






