「性欲を我慢すればパフォーマンスが向上する」ってホント? 専門家に聞いてみた。
Lifestyle 2024.07.01
パリ・オリンピックの選手村では配布用のコンドームが30万個用意されるそうだ。それにしても選手たちの性生活はどうなっているのだろう?専門家2人に話を聞いた。
アスリートの性についての真実。photography : jacoblund / Getty Images
今年の3月15日、選手村村長のローラン・ミショーはニュース専門局「スカイニュース」に出演、選手村でコンドームを30万個配布する予定であることを語った。このニュースを聞いて、こんな疑問を抱いた人もいたに違いない。競技前にはセックスしない方がいいとか、性欲を我慢するとパフォーマンスが向上すると聞いたことがあるけれど、本当のところはどうなのだろう。科学的な根拠があるのだろうかと。
競技前のセックスは禁止?
選手たちは競技前日にセックスしないよう言われているという話は広く信じられている。実際のところはどうなのか。INSEP(フランス国立スポーツ体育研究所)のスポーツ体育研究室でハイパフォーマンス・スポーツ社会学を研究しているエレーヌ・ジョンシュレイはこれを即座に否定した。「まず、コーチがアスリートの性生活に干渉するのは倫理上好ましくありません。しかも、セックスがスポーツのパフォーマンスに生理学的な影響を与えるという科学的な証拠は存在しません」
INSEPの婦人科医兼スポーツドクターのキャロル・メートルも同意見だ。「アスリートがセックスを楽しむのなら、なにも悪いことはありません。医学的見地から禁止されることはないですし、それでエネルギーを消費したからといって、翌日のパフォーマンスに影響ないでしょう。ほとんどの選手は30歳以下の若者なのですから」
トップアスリートの83%は、セックスをしてもスポーツの成績に影響しないと考えている。これはINSEPが2016年に、18歳から30歳のアスリート341人を対象におこなった調査の結果だ。競技会が近づいても普段の性生活を変えないと回答した人は53%いた。一方、競技会の有無で性生活が変わると回答した人のうち、95%は競技前と競技中はセックスの頻度を減らし、終了後に回数を増やすと回答した。だが「それはもっぱら個人的な選択の結果で、集中したいからとか、(配偶者が必ずしも選手村に滞在しているとは限らないという)状況があっての結果」に過ぎないと、キャロル・メートルは分析している。
競技前日にセックスをするかどうかは結局のところ、個人の問題だとエレーヌ・ジョンシュレイは言う。「アスリート本人が自分のパフォーマンスとセックスの関連性をどのように考えるか、あるいは気にしないか次第です」とのこと。セックスした方がリラックスできると思う人もいれば、体力の消耗が気になる人もいるだけの話だ。
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性欲を我慢すればパフォーマンスが向上する?
性欲が溜まるとスポーツのパフォーマンスが向上するという俗説もある。だがキャロル・メートルに言わせると「これは全くの誤解で、逆にフラストレーションが集中力低下を招き、好ましくありません。日々のトレーニングを重ねて、スキルや身体能力が向上し、自分を客観視して競技のストレスをうまくコントロールする精神力を身につけるなかでパフォーマンスも発揮できるようになります。フラストレーションの衝動でなんとかなるものではありません」とのこと。
スポーツのパフォーマンスを向上させる要素のひとつが個人的な充足感であり、その結果として、やる気が出て頑張れるようになるのだから、この結論は当然なのかもしれない。キャロル・メートルが言うように、「セックスは個人と家族の幸福の構成要素」なのに対して、フラストレーションはそうではないのだから。
text : Lena Couffin (madame.lefigaro.fr)