AIでサプリ選びは大丈夫? 医師が警鐘を鳴らす意外な落とし穴。

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※この記事は、フランスの新聞社「Le Figaro」グループが発行する
「madame.lefigaro.fr」で掲載されたものの翻訳版です。
データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。

疲れた、気力が湧かない、お腹の調子が悪い。こうした体の不調をなんとかしようとサプリメントに頼ろうとAIで検索し、選ぶ人が増えている。しかしながらこうした風潮に対してフランスの一般医であり、栄養学の専門家でもあるファイザ・ボッシ医師はAIの利用に慎重になるよう呼びかける。

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店頭でもオンラインでも手軽に買えるようになったサプリメント。健康志向の人が増え、ネットの至る所で目にするようになったこともあり、睡眠不足、慢性疲労、食生活の改善といった悩みを「簡単に解決してくれる手段」として広く浸透している。サプリメント選びに悩んだ人々はいまやAIに頼る。つまり、AIが健康に関する疑問に即答してくれる “新たな情報源”として定着しつつあるのである。頼りたくなる気持ちもわかるが、リスクも考えるべきだろう。ChatGPT、Mistral、Gemini、Claude……といったツールにどこまで自分の健康について相談すべきなのだろうか。ファイザ・ボッシ医師はAIの利用を必ずしも否定しない。そしてAIの“良い使い方”と“悪い使い方”を区別すべきだと言う。

情報収集に役立つ

ファイザ・ボッシ医師は情報収集ツールとしての利用に肯定的だ。「AIは総じて安心感を与えてくれます。AIの知識を個人が利用できること自体は良いことです」と言う。医療従事者から見ても、こうしたツールに一般的な質問をして情報を得ることは有用だという。たとえば、冬になると疲れを感じ、「ビタミンD不足かもしれない」と考える人は、AIに質問することでビタミンDが主に日光によって合成されること、免疫機能や骨の健康に重要な役割を果たすこと、そして過剰摂取によって吐き気や腎障害を引き起こす可能性があることを学ぶことができる。また、医者で受けた検査の結果をより良く理解したり、次回の診察時に医師へ質問すべき内容を整理したりする助けにもなる。こうした情報は数秒間で得られる。あくまでこうした範囲で利用する限り、AIは有益だ。

医師の代わりにはならない

「注意が必要なのは、もっと個別化された質問です」とファイザ・ボッシ医師は言う。自分はどのサプリメントを選ぶべきか、どのくらいの量を摂取すべきか、どの頻度で飲むべきかといった具体的な助言を求めはじめた瞬間、AIは根本的な限界に突き当たる。AIは患者の既往歴や現在服用している薬を把握していない。だからこうした判断も下せない。

そもそも欠乏症であるかどうかを判断するには厳密な医療プロセスが必要となる。「まずは問診を行います」。食生活や既往歴を知ることが重要だからだ。そのうえで血液検査などの生物学的検査を行う。「ビタミンB12、鉄分、ビタミンD、甲状腺機能など、ある程度ターゲットを絞って検査を実施」するそうだ。重要なのは検査結果そのものよりもそれをどう“解釈”するかだ。「血液検査だけでは全身の状態は分かりません」と医師は言う。つまり検査結果をAIに入力しただけでは欠乏症を適切に特定することはできない。患者の全体的な健康状態を踏まえて結果を読み取り、何が必要なのかを判断できるのは専門家だけなのだ。

症状を見誤った場合、深刻な事態にもなりかねない。「たとえば、疲労感があるのでマグネシウムを摂取していたけれど、実際には重度の貧血や甲状腺疾患が隠れていた場合です」と医師は一例を挙げた。症状を見逃すと治療開始の遅れにつながる。「一般向けのAIに医療判断を委ねてはなりません」と医師は力を込めて語った。

過剰摂取と相互作用

医師の判断を仰ぐことなくAI頼りにサプリメントを摂取すると、現実的なリスクも伴う。「誰もが気軽に利用していることを懸念しています。多くの人はサプリメントを単なる健康商品と捉えていますが、実際にはビタミン、ミネラル、植物成分、さらにはホルモン作用を持つ成分まで含まれており、相互作用や副作用を引き起こす恐れがあります」と医師は言う。複数のサプリメントに同じ成分が含まれている場合、知らないうちに多く摂取してしまう可能性もある。「ビタミンD、ビタミンA、鉄、ヨウ素、セレン、亜鉛などを過剰摂取してしまう危険性があります」とのこと。それにより、腎不全や腎結石に至る危険もあるそうだ。

特に注意が必要な人もいる。「閉経後の女性向けサプリメントには植物由来成分がホルモン作用を持つものがあります。乳がんなどの既往歴がある場合は慎重に使用すべきです」と医師は指摘する。ダイエット系やデトックス系の商品でも植物エキスで肝障害が起きる危険性がある。「“天然”は必ずしも“無害”を意味しません」

常用薬がある場合、サプリメントが処方された薬の作用を妨げる可能性もある。「特にセントジョーンズワートを含むサプリメントは、抗凝固薬の作用を変化させ、過剰出血を引き起こす恐れがあります」と医師は警告する。この植物は気分改善効果で知られ、フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)も注意喚起を行っているが、現在でも自己判断で使用する人が後を絶たない。しかもオンラインで購入されるサプリメントの品質そのものも、必ずしも保証されているわけではない。「こうした製品には、十分なトレーサビリティが確保されていないものもあります」と医師は憂える。

見落とされがちなもうひとつの危険

最後に、健康についてAIに相談する際に見落とされがちなリスクにも留意しよう。それは、センシティブな個人の健康情報をAIに提供してしまうことである。医療データは最も保護すべき個人情報のひとつであり、こうしたプラットフォーム上にさらすことには深刻なプライバシー上の問題が伴う。「個人の健康情報をAIに提供する量は、少なければ少ないほど良い」

過度に情報を明かさず有益な検索を行うためには、相談の背景や個別の食事法、スポーツ習慣に関して一般的な内容にしておくことが推奨される。また、相互作用を確認する目的で現在の治療内容に触れる場合もあたりさわりのない内容に留めるのが望ましい。「サプリメントについて最も安心なのは、“医師・薬剤師・栄養専門医”の組み合わせです。チャットボットよりも、はるかに信頼性があります」と医師は結論づけた。

From madameFIGARO.fr

  • text: Tatiana Sequeira Nascimento (madame.lefigaro.fr)