50歳、更年期のアルコールとの向き合い方。

Lifestyle 2025.05.24

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年齢を重ねるにつれて、アルコールとの付き合い方は見直しが必要になってくる。受け入れることを選択した人、対処法を見つけた人、あるいは断酒することに決めた人......。今回はお酒を断つことになった女性から、その経緯について伺った。

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「その夜、白ワインを1杯飲んだ後、耐え難いほどの頭痛、首のしびれ、そして突然の吐き気に襲われました」photography: Shutterstock

ほてり、頭痛、動悸、寝汗......。これらは、女性が45歳から55歳の間に起こる更年期の典型的な症状に当てはまるが、アルコール摂取を含むさまざまな要因によって、悪化する可能性があるという。リヨンでキャスティングディレクターを務めるエリザベス(52歳)もそのひとりだ。「50歳でお酒をやめたのは、信念からではなく、身体がそうさせたからです」と彼女は回想する。「数年前から体重増加、気分の変動、倦怠感など更年期の初期症状が出ていました。女性同士の競争が激しい環境で働いていて、特に、容姿やストレス耐性がとても重要視されていたので、症状を受け入れるのは厳しいものがありました」

彼女は、それまでの飲酒習慣は主に「社交的なもの」で、プレミア上映の際にシャンパンを数杯、夕食時に1~2杯、週末にはもう少し飲む程度だったと認めているが、自分の身体が突然お酒を受けつけなくなるとは、想像していなかった。「すべてはベルリンで開催されたあるフェスティバルに参加していた時に始まりました。イベントの準備と父の癌の告知というストレスのピークが訪れた直後でした。その夜、白ワインを1杯飲んだ後、耐え難いほどの頭痛、首のしびれ、そして突然の吐き気に襲われました。その時は、ドイツのワインの品質が悪いせいだと思っていたのです」とエリザベスは冗談めかして振り返る。

フランスに戻った彼女は、ランド地方に住む姉と1週間の休暇を取ることにした。医師に相談するより、現実から目を背けたのだ。「当時は、父の病院の診察に付き添っていたため、医者に対して嫌悪感を抱いていたのです」と彼女は謝罪する。「ストレスや過労のせいだと思っていました。身体が『もうやめろ』と訴えているとは想像できず、アルコールとの関連性に気づくまでしばらく時間がかかりました」。この最初の"危機"から数ヶ月、彼女はライフスタイルを変えるという考えには行きつかず、現実を否定することを選んだのだ。「更年期が私の女性らしさの一部を奪っているように感じていたし、楽しい人生を送るタイプだと周囲から言われていたので、ペリエのグラスを片手に夜を過ごす自分を想像できませんでした。特に私の業界では、お酒を断ることは、ほとんど侮辱とみなされるのです」

「足がふらつき、目の焦点が合わなくなってしまいました」

彼女は、個人的な習慣であると同時に社会的慣習から、飲酒を続けた。「でも、ほんの1杯飲んだだけで、また同じことが起こりました。まず額に痛みを感じ、すぐに吐き気を催すのです。以前は、数杯飲まないと重さを感じなかったのに。それから、アペリティフの段階で、息苦しいほどの強烈な熱さが襲ってきました。夜中に汗だくで、心臓が激しく鼓動して目が覚めることもよくありました」。それなのに周囲の人間は誰も気に留めていないようだったという。

しかしある日、映画監督との昼食の最中に、サンセールのワインを1杯飲んだだけで席を立たざるを得なくなった。「足がふらつき、目の焦点が合わなくなってしまいました。あまりにも恥ずかしくて、数週間は仕事でお酒を飲む場を避けていました。その夜、夫にそのことを話したら、夫は優しく私をからかいました」

そうしてかかりつけ医に診てもらったところ、更年期に伴うホルモンバランスの乱れが原因と思われる、突然のアルコール過敏症と診断されたのだ。「これまでアルコールを問題なく処理できていた代謝が、もはや正常に機能しなくなったのです。ホルモンバランスの乱れで、働きが鈍っていた肝臓が過剰反応を起こしたのです。わずかな量でもすぐに炎症反応を引き起こし、ほてり、動悸、消化不良といった症状が現れました。そうして、受け入れがたい現実に直面したのです。もはや適度な量でもお酒を飲めなくなったのです。本当にショックでした」

「自分の一部を失ったような感覚でした」

社会的な恥辱だけではなく、日常生活への影響も深刻だった。「ある誕生日会で、友人たちが『1杯だけ』とシャンパンを強く勧めてきました。周りがアペリティフを楽しんでいる中、私が断ると『おいおい、パーティーを台無しにするなよ!』なんて言われました」。またある夕食会では、「乾杯の時に、周りの心配そうな視線の中、炭酸水のグラスを掲げざるを得ず、疎外感を感じるようになりました。私がお酒を飲まないことが『もう年だから』というサインになったかのように、誘いが次第に減っていきました」と、彼女は喉を詰まらせながら告白した。「最初の数ヶ月は、自分の一部を失ったような感覚でした。大人になってからというもの、お酒は私の生活の一部でした。旅先で見つけたワイン、ボトルを囲んで語り合う夜に、即興で楽しむアペリティフ......。それらすべてが一気に消え去り、新しい自分を見つけるにはしばらく時間がかかりました」

しかし、月日が経つにつれ、彼女は新しいバランスを見つけ、この"呪い"を更年期への適応力を高める機会と考えるようになったという。「夜は深く眠れるようになり、目覚めも穏やかになり、疲労感も減りました。そして、予想に反して自由も手に入れました。パーティーの熱狂に囚われることなく、いつでも好きな時に帰れるようになりました。テーブルにワイングラスが置かれているのを見ると、過去の自分への愛着が湧きますが、物足りなさや嫉妬は感じません。更年期は、身体が発するメッセージに耳を傾けることを教えてくれました。たとえそれを聞きたくなかったとしても、です」

From madameFIGARO.fr

text: Alicia Dorey (madame.lefigaro.fr) translation: Eri Arimoto

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