見て楽しい、食べておいしいクッキー缶。小さな箱にぎっしり詰まったクッキー缶は、おすすめの手土産です。もちろん、自分で味わうたのしみも。文筆家・甲斐みのりさんが教えてくれたクッキー缶をご紹介します。
♦店名:BAKER
♦製品名:どうぶつクッキー ¥3,564
「関西方面でクッキー缶は、"カンカン"の愛称で親しまれています。中身を食べ終えたあとは、薬や裁縫道具などを入れる小物入れとして、どの家庭でも再利用する文化があり、自分の実家にもまるで宝箱のように、クッキー缶が生活の中に存在していたことが原体験としてあります」。
こんなふうに、クッキー缶が生まれるまでの道のりを教えてくださったのは、兵庫県芦屋市で週2日(不定期)営業する「BAKER」店主の中尾雅子さん。
BAKERは英語で"焼く人"という意味を持つ通り、地元の生産者から仕入れる無農薬や有機の作物など素材を生かした自家製酵母パンと焼き菓子を販売する店だ。もともとクッキー缶は、店の5周年記念に販売しようと決めた商品。作るからには「子どもや、孫の代まで手元に置いてもらえるような缶にすること」が第一のコンセプトだったそう。
そうして、優しくシンプルな線が、どこか懐かしくて温かな風景を織りなすイラストレーターのkilldiscoさんのイラストならば、時代を超えて誰かの"カンカン"になるはずと確信を抱いて依頼することに。
今回紹介するクッキー缶は、BAKER×killdiscoのコラボレーション第二弾。愛らしく缶を彩る描き下ろしの動物、いぬ、うさぎ、くま、ねこは、型抜きのクッキーにも。このクッキー缶のためにバランスを考えて考案した9種類の小さな焼き菓子と合わせて、ちょっとずついろいろな味が楽しめるクッキー缶が完成した。
国産の小麦、喜界島の粗糖と、身体のことや、仕上がりの風味を考えて、厳選した素材で作る焼き菓子は、素朴ながら力強い味わい。まるみを帯びた動物たちのクッキーを手に取ると、ふうっと力が抜けて、和やかな気持ちに満たされる。
私自身、目を閉じて幼少期の記憶の中にもぐりこむと、実家の部屋の中に、いくつものクッキー缶が点在し、懐かしさに駆られる。それぞれの缶の蓋に「電池」「ろうそく・マッチ」「くすり」とマジックで書いた父の字までもが、くっきりと思い出される。
店主の中尾さんが願う通り、からっぽになったBAKERクッキー缶には小さな宝物を詰めて、これからもずっとともに暮らしていきたい。
<種類>
・どうぶつクッキー4種
・クランベリーチョコサブレ
・ブルーベリージャムサンド
・ヴァニラサブレ
・POKPOK(ヴィエノワ)
・ショートブレッド
・チョコアーモンドのドロップクッキー
・塩サブレ
・ラズベリーボーロ
・コーヒーアーモンドサブレ
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♦店名:こむぎのおいしいおかし
♦製品名:くまのおやこ缶 ¥3,500
スイーツメディア「ウフ。」がプロデュースする、日本の食材のおいしさを生産者とともに発信していく焼き菓子ブランド「こむぎのおいしいおかし」。
名前に"小麦"とついているように、始まりは北海道江別市で昭和23年から続く製粉会社「江別製粉」との出会いから。製造・販売を行うだけの菓子ブランドではなく、生産者の魅力や情報、国産小麦の味や香りやおいしさの秘密、これからの可能性をしっかりと発信しようと、さまざまな小麦を試しながらお菓子作りが行われている。
そんな中、缶も中身も愛らしいサブレ缶がラインナップ。
「くまのおやこ缶」の缶そのものは、海原のように畑一面を黄金色の穂が埋め尽くす秋冬の小麦畑のイメージ。東京藝術大学美術学部彫刻科を卒業し、大学院では文化財保存学専攻を修了したというイラストレーターの白尾可奈子さんが、北海道産の小麦と、北海道に生息する熊の親子をグラフィカルに描いた。
中身は、くまの形のサブレ生地で、キャラメルとメープルを合わせたガナッシュをはさんだキャラメルサンド。生地にもメープルを使用しているのは、くまが好きなはちみつを彷彿とさせることから。粒子が粗めでさっくりと焼き上がる菓子用小麦粉の「クーヘン」という小麦粉を選んでいるので、生地とキャラメルがリズミカルに絡み合い、メープル特有のコクのある甘さが、じんわり身体に余韻を残す。お皿の上でくまを自立させることができるほどの厚みがあり、1つでしっかりおなかも満足できる食べ応え。
もう1種類、夏の青い小麦畑をイメージした「きつねのおやこ缶」も取り揃う。こちらの生地には、菓子用小麦粉の「ファリーヌ」という小麦粉を使うことで、ほろっとほどけるような仕上がりに。バニラが香る2枚のサブレの間には、フィヤンティーヌと呼ばれる薄く焼いたクレープ生地とドライクランベリーを混ぜ込んだ、ショコラとピスタチオペースト。
ウェブショップでは、くまときつねの"サブレだけ"のセットも販売しているので、小麦粉の違いや、サブレそのものの風味や食感を楽しみたい方は、合わせて購入するのもおすすめ。食べ終えたあとには、雄大な大地と自然が広がる北海道の風景が浮かんでくる。
photography: Yuko Sayama

文筆家。旅、散歩、お菓子やパンや手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどについて執筆。地方自治体の観光案内冊子も手がける。著書は『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』『にっぽん全国おみやげおやつ』『愛しの純喫茶』など50冊以上。
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