「フランス料理として日本を再表現する」アンヌ=ソフィー・ピックが愛する「繊細さ」。【インタビュー】

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アンヌ=ソフィー・ピック/シェフ

Anne-Sophie Pic/アンヌ=ソフィー・ピック
1969年、フランス生まれ。1889年創業メゾン・ピックで祖父から3代、ミシュランの3ツ星を獲得してきた。レストラン屋上にはガーデンがあり、厨房には必ず日本人がいる。日本への愛は深く来日数も友人も豊富。食材への敬意はもちろん、茶道や生け花の嗜みも。

繊細な日本文化を、フランス料理として再表現。

アンヌ=ソフィー・ピックは、女性シェフとしては現在世界で最も多くのミシュランガイドの星を持っている。フランス国内外で活躍するが、ホームとなるレストランはローヌ川沿いの街ヴァランスにある3ツ星、メゾン・ピックだ。

「祖父の代から続く店の歴史は、そのままファミリーの歴史でもあります。ミシュランの星を取っては失い、一つひとつ取り戻してはまた失い、再び取り戻していまがある。私にとって星は誇りです。プレッシャーでもあるけれど、大切なのは“待ち”ではなく、常に“攻め”の姿勢でいること」

堂々とそう語る姿には、ミシュランの星への敬意と、料理への意欲があふれていた。彼女のクリエイションに目を向けると、日本にインスパイアされたものが少なからずある。初来日はいまから30年も前のことだ。料理人になるとも、なりたいとも思っていなかった学生時代にまで遡る。

「見るものすべてが発見で、まさにカルチャーショック。あの時の衝撃と感動はいまも深く心に残っています。何度来日しても新しい発見があって、新鮮な気持ちになるんです」

特に惹きつけられたお茶や抹茶には造詣を深めてきた。料理人になり、メゾン・ピックの皿の上にそうした素材が組み込まれたのは自然な流れだが、安易に取り入れたわけではない。知れば知るほど、慎重にならざるを得なかったのだ。

「日本の食材を裏切ってはいけない。文化としてもリスペクトした上で、自分のフィルターを通しフランス料理として再表現しています。私はアロマを大切にする調香師のような仕事をしていると思っているのですが、素材の組み合わせで抹茶の香りや味わいを損なっていないか、日本人が見ても首を傾げることなく大切に使われているか。自分がいいと思っても、必ず厨房にいる日本人にもチェックしてもらいます」

この2月、代官山のディオール バンブー パビリオンにオープンした、日本で3店目となるカフェ ディオール byアンヌ=ソフィー・ピックにも抹茶や玄米茶、蕎麦茶、日本酒などの風味を生かして、フルーツやハーブなどと合わせたケーキやサンドイッチといったメニューを用意した。

「庭の草花を愛し、それをクリエイションに生かしたムッシュ ディオールとは近い価値観があると思う。いつもどおりの仕事でこのカフェに寄り添うメニューができたわ」

今年大阪にオープンした旗艦店「ハウス オブ ディオール⼼斎橋」でも「ムッシュ ディオール 大坂」を開業、そちらでも自身のイノベーションを存分に生かしている。

「やりたいことはたくさんあります。やはり日本の魚介は魅力的です。いま、日本の料理人や産地からたくさん学んでいるところ。最近はウニに魅せられています。ミシュランの星? それは……ええ、取れればうれしいわね」

© Lara Giliberto

代官山のディオール バンブー パビリオンにオープンしたカフェ ディオールbyアンヌ=ソフィー・ピック。ディオールの不朽のコードを再解釈したオリジナルメニューを展開、デザートは特に注目。写真はシェフが愛するイチゴ、米、日本酒を繊細に調合した代官山限定メニュー「ル カナージュ シュクレ」¥5,000

  • photography: Taisuke Yoshida
  • text: Chieko Asazuma

*「フィガロジャポン」2026年6月号より抜粋