モデル・森星の家を彩る、時間とともに美しさを増す作家ものたち。【あの人の暮らしの名品 vol.1】
暮らしの中で、何を選び、使い続けるのか。愛用するものには、その人の美意識や価値観が映し出されている。クリエイターや表現者たちが日々の暮らしに迎え入れた品々と、それを選び続ける理由を通して、「Art de vivre(暮らしの美学)」を紐解く。

第1回は、モデル・tefutefu クリエイティブディレクターとして活躍する森星の愛用品。現在、彼女が拠点のひとつにしているのが、関東近郊にある古民家を再生したアトリエ「ikikata atelier」だ。土地の素材を生かした器や、伝統的な技術を現代の暮らしへと取り入れた家具、手仕事の跡が感じられる生活道具が集められている。
「ものを選ぶときに大切にしているのは『時が重なることで、さらに美しくなる素材』であること。完成されたものを購入するだけではなく、作り手と対話し、互いの思想を交わしながら、場所にふさわしいものを一からつくることも多いです」
そんな彼女の暮らしと美意識が感じられる、3つの名品を紹介する。
裏山で採った土を使った、熊谷幸治さんの土器。

「長く使い続けるために、日々の暮らしで使うことを心がけています。この土器も、普段の食卓に欠かせないもののひとつです。古民家の裏山で採集した粘土を使い、土器作家の熊谷幸治さんに制作を依頼しました。地域の料理人から教わった料理を大皿に盛り付けたり、小皿に取り分けたりして使っています。
使い込むことで、味わいがでてきたところもお気に入りです。オリーブオイルを使った料理を盛るうちに、油が少しずつ土へと染み込み、独特の色と質感を帯びるようになりました。多少荒々しく扱っても揺るがず、たとえ欠けても美しい。堂々とした佇まいも、惹かれる理由ですね」
以前、子どもたちのサマーキャンプのために古民家を開放した際にも、この土器が活躍したという。虫探しやスイカ割りを楽しんだあと、子どもから大人までが縁側に並び、土器でお茶を飲んだ。
「軽やかな土の手触りを感じながら、みんなでお茶を飲んでいる姿がとても微笑ましくて。いまも心に残っている光景です」
縄文ヴィーナスから着想した、KUSAKANMURIの茅葺スツール。

スツールも、森星が作家と相談しながら仕立てたものだ。制作を手がけたのは、重要建築物の茅葺屋根の修復にも携わる「KUSAKANMURI」の相良育弥。縄文ヴィーナスを着想源に、独自のフォルムに仕上げられている。
「茅だからこそ表現できる曲線や、縄文の造形にも通じる独特の比率にこだわってつくっていただきました。座面には柔らかな麻袋が使われていて、さりげない部分にも相良さんの心遣いを感じます」
経年変化を感じられるのもまた、このスツールを暮らしに迎え入れた楽しみだという。使い続けることで茅の色が少しずつ移ろい、アトリエで過ごした時間が刻まれていく。置かれているのは、古民家アトリエの長屋門だ。アフリカ原産の木材、ブビンガの一枚板でできたダイニングテーブルを囲むように、さまざまな素材や形のスツールをランダムに配している。
「世界各国から集まった人たちが、ひとつの大きなテーブルを囲んでいる。そんな景色を想像しながら、集めたスツールたちを眺めています」
水俣の物語を現代へつなぐ、金刺潤平の和紙のカーペット。

スツールの下に敷かれているのは、熊本県水俣市を拠点とする「浮浪雲」の金刺潤平が手がけた和紙のカーペット。丈夫なカジの繊維から作られた和紙を薄く叩き、編み合わせて作られている。森星は何度か水俣にある金刺さんのアトリエを訪ね、土地と和紙をめぐる歴史を知ったという。
「水俣で和紙が発展した背景には、農業用のシートとして使われていた歴史があるそうです。金刺さんはその物語を受け継ぎ、和紙を現代の暮らしに合うカーペットとして再解釈されました。常に新しい表現を追求する、金刺さんの精神性にも惹かれています。
使い心地にも、和紙ならではの魅力があります。裸足で歩くと、夏は涼しく、冬には温かみを感じられる。使い続けるうちに、和紙が少しずつ柔らかくなってきました。心地がよく、そのまま寝転がる人もいるんですよ」
軽くて持ち運びやすいため、使い始めた当初は都内のアパートに敷き、現在は古民家アトリエのリビングで愛用している。くるくると巻いて立てておくことも、広げてくつろぐこともでき、場所や過ごし方に合わせて使えるのも魅力だ。

Profile
森星/Hikari Mori
1992年⽣まれ。東京都出身。資生堂やブルガリのブランドアンバサダー就任や、MET GALA の出席、国内外の雑誌や広告、パリコレクションでのショー出演などファッション業界での活躍に加え、日本の伝統的文化を世界に発信する「tefutefu, Inc.」立ち上げや公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーに就任するなど幅広い分野で活躍している。
Instagram @hikari
- photography:Hikari Mori
- Edit & Text:Megumi Saito