川村明子のスリランカ紀行 #03 スリランカの「光の館」、ジェフリー・バワ建築ホテル。

Travel 2018.04.07

スリランカのゲストハウスを巡った旅の前半から、後半に入る6日目はジェフリー・バワ建築のホテルへ。
最後のゲストハウス滞在となったキャンディの宿では、前日に合流した旅の友、フードエッセイストの平野紗季子さんと築200年の竃で作る料理教室を体験。ハーブとスパイスの芳香、ココナッツミルクが成す優しい風味の余韻に浸りながら移動したその先に待っていたのは光の館だった。

DAY 6
Kandy キャンディ → Dambulla ダンブッラ

初日と同じように、お経を唱える声が少し離れたところから聞こえる朝。香煙がゆるやかに立ち上るようすが目に見えるかのような空気が辺りに満ちている。まだそこまで暑さを感じない光の差すテラスは、清々しい。The Kandyan Manorには、固有の時が流れている。そんな錯覚にも似たものを覚えた。

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朝ごはんには、前回とは若干違う形の、でもやはり少しふわっと、同時にかさっとした食感のイギリスパンが出てきた。塩コショウで味付けされた目玉焼きと、山盛りのパパイヤにスターフルーツも。どこでもフルーツはまずパパイヤが出てくる。きっと旬なのだろう。本当はパパイヤはあまり好きじゃあない。口の中に広がる、独特のもこっとした風味と、なんだか全体的に中途半端な感じが苦手なのだ(パパイヤ、ごめん)。だけれど、スリランカではよく食べた。私の知っていたパパイヤよりも、ほんの気持ち、味がスッキリしている。

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前日にお願いしたお料理のレッスンは11時からで、まずはバティヤ父さんと一緒に買い出しへ。トゥクトゥクに乗って向かったのは、例の商店街から脇に少し入ったところにある小さな市場。なじみのある野菜の中に、ちらほらと知らないものがある。

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父さんが「これは全部ナスだよ」と手のひらに乗せて見せてくれた。あ〜この小さくて硬いナス、パリのインド食材スーパーで売ってる〜! そっかやっぱり本場で食べるものなんだな。インゲンも長さと形違いで4種類。言われなければインゲンの兄弟とは到底思わない棘とげしているものもあった。後ろ手に見える紫色の筍のようなものは、バナナの花! この季節にしかないそうだ。

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キャンディ・マーケットで目にして気になっていた葉っぱは、噛みタバコと教えてもらった。なるほど〜だから駄菓子屋さんにもあったのか。日本も昔は駄菓子屋さんの入り口にタバコを売る窓口があったものね。そんなことを思っていると、果物を半分に切って、次々と渡される。中でもおいしかったのはカスタード・アップル。マンゴの味に似ていて、でもそこまで甘ったるくなく、つゆだく。マンゴよりもずっとおいしい。

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八百屋さんが並ぶ通路の正面では、渋い色合いの布をまとったおじちゃんが、ワニでも捌けそうなイカつい包丁で魚を切り身にしている。切り株を小分けにしただけのようなまな板にも目を奪われたけれど、私はスリランカの男性が巻いている腰巻のような布が、どうにも気になっていた。広げたらどれくらいの大きさなのだろう。海でも使えるだろうし、大きさによっては夏に床に敷くのによさそうだよなぁ。色がいいよなぁ……私も1枚欲しい。市場の奥まで行ってみると、なかなか印象的なTシャツを着た笑顔の女性が立つお店が1軒。ガラスケースにはクッキーもあるし、いつもいるかに思えるおばちゃんも座っていて、市場のひと息スポットである風情に溢れていた。

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八百屋さんに戻ると、父さんがお会計をしているところだった。隣には、ひと息スポットにも顔を出していたおじちゃんが立っている。グリーンと白のストライプのシャツにピンクの腰巻。かわいい組み合わせだよねぇ。

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ゲストハウスの母さんの料理教室を体験!

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料理教室は、スージー母さんの担当だ。前日にロティを焼いてくれた炊事場とは別の場所に連れていかれる。屋外に設置された流し付きの作業台の奥に、薪をくべる竃が幅を利かせた、秘密の台所があった。「この家は200年前に、グラン・グラン・ファーザーが建てた家で、このキッチンもその当時のものなの。とてもトラディショナルなのよ」。外の作業台の前には自家菜園が拓けていて、ハーブやら野菜やらがたわわに生っており、どこまでが菜園なのかわからないほどに茂っている。

材料はすでに切って、クレイポットやボウルの中にそれぞれ用意してあった。まず、ココナッツミルクを取るという。ココナッツをおろすだけじゃなくて、ミルクを取るのだ。 ヌワラ・エリヤの家で見た器具よりもずっとオールドタイプのおろし器で削り、おろした実にお湯を加え(お水だとミルクはとれない)、手で混ぜ合わせて押し出すようにする。それを漉してとれたのが一番搾り。これは火にかけるとすぐに香りが飛んでしまうので、仕上げに使う。残った搾りかすで二番搾りをとり、こちらをすぐにお料理に利用する。

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この日作るのは5品。最初に取りかかったのはお魚のカレーとパンプキンカレー。基本の材料はほぼ同じで、お魚の方がスパイスがいくつか多めだ。

  1. お魚、カボチャそれぞれにココナッツミルク(二番絞り)をかける
  2. 紫タマネギ、ニンニク、青唐辛子、カレーリーフを加える
  3. カレーパウダーを投入。お魚にはふつうに、カボチャにはほんの少しだけ
  4. お魚にだけチリパウダーを振りかける
  5. ターメリックとフェネグリークを加える
  6. お塩をふる。お魚にはブラックペッパーも
  7. お魚にだけ使うスパイス“ゴロカ”登場。
  8. それぞれにパンダムリーフを加え、混ぜ合わせ、蓋をして竃の火にかける

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火にかけている間にナスの一品を。揚げナスをドライにしたものに、紫タマネギ、ニンニク、トマト、青唐辛子、お塩、ライムを加え、手で混ぜればできあがり。

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そしてそしてバナナの花のカレーだ。刻んだバナナフラワーに、ココナッツミルク少し、トマト、紫タマネギ、ニンニク、カレーリーフ、塩・コショウ、粉唐辛子(赤)、カレーパウダー。これを手でよく混ぜ合わせる。
空のクレイポットを火にかけ十分に熱してからオイルを注ぎ、マスタードシードを入れる。シードがポップコーンのように弾けて香りを出したら、用意していた具材を加え、蓋をして火を通す。

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先に火にかけていたお魚とカボチャのカレーは、ある程度火が通ったところで蓋を開ける。中の温度が下がってきたら、一番搾りのココナッツミルクを注ぎ、パンプキンの中には粒マスタード(フランスもの!)を加えた。ふと見ると、薪の中にはココナッツの殻もある。

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ここで外の作業台へ移動。ポル・サンボルを作る。ここには真ん中が少しだけ窪んだ石の板がくっついていて、それがとても原始的なすり鉢なのだ。石板の上に、タマネギ、赤唐辛子、お塩、モリディブフィッシュ、おろしたココナッツを置き、すっごく太めな綿棒のような石の重しを転がして材料を潰すようにする。そう、モルディブフィッシュはやはりお出汁を取るものではなくて、サンボル(=火を通さない和え物)に加えるのが一般的みたい。最後にライムを絞ってできあがり。

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材料と工程を見てわかったのは、脂肪分がとても少ない。それこそが優しい味を作っていて、日本人が親しみを感じる所以じゃないかなぁ。チリパウダーか青唐辛子が入っているし、どれも辛味はちゃんとあるのだ。それでも攻めてくるような味はどこにもない。スージーは火にかけるものも含め、5品とも、材料を全部加えたあとに手で和えていた。あの工程で、スージー特製スパイスが注がれているのだろうなぁ。あと二番搾りのココナッツミルクの存在も大きい気がする。やっぱり、彼女のお料理は、さりげなくおいしかった。

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バナナの花は、若い筍と小さくて柔らかいアーティチョークを足して2で割ったような印象だ。味よりも食感が、春っぽい。揚げナスの和え物はごはんが進む味で、お汁をちょろっとかけたサラサラのごはんがしみじみおいしくて、またしても無言になった。

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ジェフリー・バワ建築のホテルは「光の館」。

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デザートには、水牛のヨーグルト「カード」を、ハチミツと一緒に出してくれた。前夜のお夕食もおいしかったけれど、同じ場所でいただいたお昼ごはんは、光とぬるい空気が一種の魔法をかけるのか、リラックスとか力が抜けるとかそういうこととは一次元違って、なんだか自分が溶けてしまいそうだった。

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テラスの壁にはスージー母さんとバティヤ父さんの結婚式の写真が貼られている。先代の時代のものもある。この宿に固有の時間が流れているように感じるのは、積み重ねられてきた時の長さによるものかもしれない。

どうしてもここで味わった空気を壊したくなくて、移動の手段を得るために喧騒と塵埃にまみれることになるキャンディの中心地に行く気になれなかった。まだしばらくは余韻に浸っていたい。どうしようかぁとふたりで相談し、次なる目的地・ダンブッラまでトゥクトゥクで向かうことにする。距離は60kmほど。

母さん父さんに「また来ます!」と告げ、別れを惜しみながらも出発。町を離れてしばらくすると、スーパーのスパイス売り場で見かけたスパイスメーカーの看板が立て続けに現れた。スパイスの産地マータレーだ。あたり一面スパイス畑のこの道を、ドアも窓もないトゥクトゥクで通り抜けるなんて、最高の選択だった。

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この旅でいちばん最初に予約をしたジェフリー・バワ建築のホテル、ヘリタンス・カンダラマ。ダンブッラの街から東へ10km近く行ったところにある。着いてみると湖の目の前に位置し、直線的な建物に反して、いたるところで柔らかい光線が幾重にも見える、光の館だった。

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日の入りまで館内を散策。緑の中に埋もれるように建つ館は、外から見る姿よりも内部にいる方が、周りの環境と繋がっていることを感じる。

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全長が1km弱という横に長い建物の、どこから眺めても、視界の先に人工的な建物が見当たらない。そして、廊下も柱も直線であることで、大きな額縁の中に景色が切り取られ、それが連続していくような印象を受ける。

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人工的な建物がないだけではなく、湖の向こう側には明かりも見当たらない。こんなにも先まで明かりのない場所にいまだかつて身を置いたことはない気がした。

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ただ、レストランだけは、一種幻想的な体験のできる建物の中にあって、とても世俗的な場所だった。ビュッフェスタイルだったので、ゲストハウスでは食べていないカレーをいろいろ楽しんだ。

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翌朝は空中宮殿、シーギリヤ・ロックへ。

DAY7

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お部屋からは正面にシーギリヤ・ロックが見えた。外壁を覆う蔦を楽しむように猿がそこかしこにいて、窓には「開けっ放しにしないように!」と忠告が貼ってある。それでも朝の空気を吸いたくてベランダに出た。右からも左からも三々五々聞こえてくる鳥のさえずりは、朝礼前の学校の教室を思わせた。

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だいぶ日が登ってきて、濃い緑色を湛えていた木々が一斉に輝き始めたようだ。旅の友が合流してからも、毎朝夜明け前に起きることは続いていて、日の出とともに各自思いおもいに過ごし、原稿やらメールのチェックやらがひと段落したら出かける。この日はシーギリヤ・ロックに登る予定だった。時間があったこの朝、私はゆったりお風呂に浸かることにした。

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シーギリヤ・ロックは灼けるように暑かったから朝の涼しいうちに行ったほうがいい、とアドバイスをくれたのは電車で出会った女の子だ。9時半出発と少々出遅れたものの、幸いそこまで暑くはなかった。ホテルで呼んでもらったトゥクトゥクのドライバーに往復でお願いしたいと伝え、帰りに落ち合う場所を確認しあい、入場料30ドルを支払って登頂へと誘う道を歩き始める。そびえ立つ岩山を目前に、初めてフルマラソンに参加したときのスタート前の心持ちを思い出した。あそこまで行ったら何が見えるかな。

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頂上では、心ゆくまでゆっくり過ごそうね、と話していた。この頂に王宮が築かれたのは5世紀のこと。長方形の遺構をたどりながら、四方に向かって座り、雲の流れとそれが作る影を眺め続けた。見渡す限り広がる緑は、十分に水を含んだ色で、それらの内に生命の営みがあることを感じさせる。

大学生の頃、家族でオーストラリアへ旅行したときに、エアーズ・ロックに登った。アボリジニが神聖な存在として崇める岩山の頂上には多くの観光客がいたのを覚えている。360度見回したあとの孤立感が強烈で、風を受けて立つナウシカを思い出した。

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同じ岩山でもシーギリヤ・ロックからの景色は、温かみがあってなにか柔らかかった。それは朝、木々の合間からさまざまな生物の声を聞いたからかもしれないし、梢から漏れる光を浴びたからかもしれない。天候に恵まれたこともあるだろう。悲しい終わりを遂げた王の城跡という歴史も、豊かな自然が包み込んだのだろうか。そよぐ風は気持ちよかった。

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思う存分滞在して、引き返すことにした。登るときには見えていなかった、絵本にそのまま描かれそうな自然の風景に一歩一歩近づくように下りていく。だいぶ下りたところで見つけた駐車場の表示の方にいくと、テーブルと小屋があって、お弁当を食べているおじさんや、家族連れがいた。

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行きとは違う道を通って帰る途中、トゥクトゥクのドライバーが「ジュース飲む?」とフレッシュなフルーツを絞ってくれる店に立ち寄ってくれた。ホテルで少し味見をしてもう一度飲みたかったウッドアップルを選ぶ。酸味があってどろっとしていて、きらんっと魅力的な味ではないのが逆に魅力な気がするジュース。スリランカではとてもポピュラーらしい。

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喉を潤し、再び乗り込んで走り出すと、前方に荷台に人を乗せた小型トラックが見えた。横を通り過ぎながら、ドライバーのお兄さんは何度も覗き込むように振り返り、追い越すとすぐにトゥクトゥクを止めた(このお兄さん、なかなかにマイペースなのだ。でも嫌な感じは全然しなかった)。少し先でトラックも止まる。何が始まるんだ?と思い近づいていくと、採れたてのトウモロコシが荷台にいっぱい。お兄さん、どうやら買って帰るらしい。いいなぁ〜。

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お部屋に戻るとお猿たちがテラスの先で歓談中。本当に、共存している。できることなら窓を開けっ放しにしたかったけれど、思っている以上にきっとたくましく、あっという間にiPhoneを持っていかれちゃったりするのだろうと容易に想像できて、おとなしく窓に貼られた忠告に従った。

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夕方予約をとっていたアーユルヴェーダのスパまでの時間は、プールへ。水際がカンダラマ湖に続いて見えるよう設計されたプールの先には、シーギリヤ・ロックの姿があった。ジェフリー・バワはインフィニティ・プールの生みの親。それで海岸沿いのホテルでも行きたいところがあったのだが、移動距離と日数から今回は諦めていたのだ。こんな内陸部の湖畔のホテルでそれを体験できるとは思っていなかったから、すごーくうれしかった。

アーユルヴェーダに則ったトリートメントで毒素を取り除き、ディナーに出かけ(前夜とは違うお店に行ってみたのだけれど、どうもバワはそこまで食事にこだわりがなかったと思われます……次回も滞在するとしたら2夜連続ビュッフェレストランに行くことでしょう)お部屋に戻る途中。湖の方を見ると、真っ暗だった。明かりのない世界。この夜はたまたま新月で、月明かりさえもなかった。「私、こんなにも光のない、暗い景色、いままで見たことないと思う」とつぶやくと、紗季ちゃんが「ホテルの明かりがなかったら、もっと暗いですよね」と言った。

闇夜から明けた翌朝、図らずもこの旅のクライマックスを迎えることになる。

#04に続く

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川村明子
フードライター
1998年3月渡仏。ル・コルドン・ブルー・パリにて料理・製菓コースを修了。
台所に立つ時間がとても大事で、大切な人たちと食卓を囲むことをこよなく愛する。オペラ座でのバレエ鑑賞、朝の光とマルシェ、黄昏時にセーヌ川の橋から眺める風景、夜の灯りetc.。パリの魅力的な日常を、日々満喫。
Instagram:@mlleakiko、朝ごはんブログ「mes petits-déjeuners」も随時更新中。
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