パレ・ロワイヤルの星付きパンタグリュエルで、味覚と視覚の感動の旅に出る。

Paris 2026.01.21

5年前に2区のサンティエ通りで歴史を始めたレストランPantagruel(パンタグリュエル)。シェフはオテル・ブリストルやオテル・バーガンディのレストランを経由し、ビストロGalopinへ、という経歴を持つジャゾン・グージィだ。開店して1年後に、早速ミシュランの1つ星を獲得している。2025年8月にレストランはパレ・ロワイヤルに近いリシュリュー通り10番地に引っ越をした。以前より、観光客にもずっとアクセスしやすい場所である。

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パレ・ロワイヤルの広場に面した劇場コメディー・フランセーズのすぐ近く。控えめな佇まいのレストランPantagruel(パンタグリュエル)。©ilyafoodstories

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左:食事の始まり。まずこのメニューから。 右:食事の締めくくり。グリーンではなくピンク色した21世紀のノンアルコール・アブサント。ハイビスカスとルイボスなどのハーブティーにアブサントを飲むときに角砂糖をのせるスプーンに、カシスの角型パート・ド・フリュイを乗せて。パンタグリュエルでのお祭り気分の時間が終了。photography: Mariko Omura


300平米という広い店内のインテリアを任されたのはフィリップ・メディオニ。中世のインスピレーションからイヴ・クライン・ブルーという20世紀まで時代の旅である。パンタグリュエルは16世紀にフランス人作家ラブレーが書いた長編『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の登場人物で、巨人で大食漢のガルガンチュアの息子がパンタグリュエルという設定だ。壁にはこの小説の挿絵となったギュスターヴ・ドレの版画が額に収めれ、壁を飾っている。壮大でファンタジーあふれるパンタグリュエルの物語は、シェフを大いに魅了したのだ。中世を感じさせる淡いブルーの壁に包まれた空間で、壁の額と同様に視線を捉えるのは色鮮やかなカーペットである。これもブルーが基調なのだが、周囲のモチーフはオマール、野ウサギ、アーティチョークなどの食材。聞くと、これはシェフが調理するのが好きな素材なのだという。

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リシュリュー通り側のレストラン。ギュスターヴ・ドレによるラブレーの『ガルガンチュアとパンタグリュエル』の挿絵を壁に飾って。©ilyafoodstories

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モンポンシエ通り側。こちらでも色鮮やかで風変わりなモチーフのカーペットが目を奪う。なお地下にはバーカウンターを備えたシガールームも備えている。©ilyafoodstories

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さてシェフのお料理はというと......パンタグリュエルではアラカルト・メニューはなく、昼夜ともにお任せコースのみ。ランチは65ユーロと130ユーロ、ディナーは130ユーロと185ユーロとそれぞれ2種ある。ランチの2コースにおいては、追加料金でシェフのご自慢であるクロック・オマール(25ユーロ)やMelunのブリー・チーズとクルミ(20ユーロ)をコースに組み込むことも可能だ。いずれのコースも別料金で、ワインのペアリング、ノンアルコール飲料のペアリングをプラスできる。

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左:いよいよ食事の始まり。まずはアミューズ・ブーシュから。フランス産の3種のきのこをチュロス、ジュレ、サンドで。 右:シェフ・パティシエのブノワ・コストはパンも担当。よそのテーブルに運ばれるのを見ただけで気をそそられる青海苔を乗せたバター控えめのブリオッシュ。卵料理用に合わせたクリエイションで、海苔と味噌をミックスしたバターが添えられる。photography: Mariko Omura

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シーズンを問わずランチタイムの人気追加メニューは、ロブスター関節部分の身をパンと組み合わせたクロック。添えられたロブスターのビスクのこってり感はオレンジの酸味で優しい味わいに。©ilyafoodstories

パンタグリュエルではアミューズ・ブーシュからデザートまで、同じ素材が異なる調理法によって3種、ときには4種で一つの料理としてテーブルに登場する。これはひとつの食材を中心に、それを取り巻く"衛星"という発想からだ。

ランチおよびディナーの5章からなるMenu Gargamelleの第1章である「帆立貝、そば、ロスコフの玉ねぎ」を例にとろう。メインとなるのは軽く火を通した帆立貝に、ペッパーソース。"衛星"たちは、オニオンのコンポートとホタテのひも、蕎麦のリゾットにオキシダティヴ・ワインのエマルジョン、ホタテのタラマのミニタルトだ。大小4皿がテーブルに並ぶと、それだけで華やかで楽しい気分になる。シェフが経験で培った調理の技と溢れ出るクリエイティビティを駆使した料理の味わい深さに、さらに食卓の賑わいがおいしさをプラスするよう。このコースでは第二章がいけじめの鯛、セロリ、コック貝、うなぎ。第3章がビーフ、人参、牡蠣。鯛やビーフも''衛星''皿たちと共に登場するのだ。

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「帆立貝、ソバ、ロスコフのオニオン」はブルターニュづくしの宇宙だ。植物炭が黒く描く帆立貝のフレームがグラフィックだ。この料理にソムリエが選んだのは、ロワール渓谷のビオディナミック白ワインであるTerre de l'EluのBastingage。©ilyafoodstories

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セロリのタリアテッレなどの衛星が取り囲むいけじめの鯛。©ilyafoodstories

また、海の素材と川の素材、海の素材と陸の素材という組み合わせも、味に深みが出るとシェフが得意とするところ。海の幸は陸の素材の調味料の役も果たすのだ。例えばビーフに、牡蠣のタルタルが程よいミネラルと塩気ともたらすというように。季節によっては肉料理が雌シカとウニの組み合わせだったこともある。パンタグリュエルではユニークなミックスが奇抜なアイディアで終わることなく一つの料理として完成されているのだ。これは経験が浅くアイデア倒れも少なくない若いシェフには、太刀打ちできないことなのでは?

シェフのクリエイティビティが日本人客にわかりやすいのは、プロローグとして登場するL'Oeuf pantagruélique(ルフ・パンタグリュエリック)だろう。大きなたまご型の陶製の器がキッチンからテーブルにやってくる。蓋を開けると......シェフが日本で食べて感動した"卵かけ御飯 »から発想し、ライスはスフレにしてカリッと、そして卵の黄身はマリネして膜を作って、とテクスチャーを少しフランス料理化して完成させた逸品である。食べてのお楽しみ!

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日本の卵かけご飯にインスパイアされた卵料理。©ilyafoodstories

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左:南仏生まれのシェフの子ども時代の思い出であるアイスクリーム売りのワゴン車が登場。4種から2つのトッピングを選んだコーンアイスが手渡しされる。右:パンと柑橘類のデザート。こちらも3点で登場する。シェフパティシエはブノワ・コスト。©ilyafoodstories

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シェフの想像力、クリエイティビティは尽きることがない。そんなシェフの料理を誇りを持ってサービスするスタッフ、シェフの料理にベストマッチのワインを見出すことを楽しんでいるソムリエ。ガストロノミー・レストランという堅苦しさを感じさせないデニムのユニフォームをまとった全員が、高いプロ意識を発揮している。シェフの人柄が反映されているのだろう。おもてなしの心が感じられる、実に気持ちの良いレストランである。1つ星ながら、なんだか3つ星体験をしたような満足感。便利な場所に引っ越してきたパンタグリュエルだけど、ちょっとくらい不便な場所でもまた体験しにゆきたくなるというレストランである。

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左:感動と寛大を大切に料理するシェフ、ジャゾン・グジィ。右はシェフのパートナー。 右:ソムリエのキャロリーヌ・ジュエ(右)もサービスのチーフであるカミーユ・スケルシオニも28歳という若いチームだ。シェフ以下、スタッフ全員がデニムのユニフォーム! ©ilyafoodstories

Pantagruel
10, rue de Richelieu
75001 Paris
営)12:15~13:30L.O.、19:00~21:00L.O.
休)土、日
https://www.restaurant-pantagruel.com/
@restaurant.pantagruel

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editing: Mariko Omura

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