【パリ】日本人シェフとして初めて辿り着いた最高峰。レストラン・ケイが魅せる「グランメゾン」の世界。
Paris 2025.10.04
旅時間の中で一度は訪れたい――そんな想いを抱かせるのがグランメゾン。フレンチの伝統と革新が交差する唯一無二の美食体験へ、いざ。
3ツ星シェフ、小林圭が魅せる最高峰の世界。
昨年末に公開された、木村拓哉主演の映画『グランメゾン・パリ』。美食の都パリで、日本人シェフがミシュランガイドの3ツ星獲得に挑む姿を描いたこの作品は、まさに小林圭シェフの歩みと重なる。
「僕の料理を食べに来てくださった方ひとりひとりに、一生の中で特別なひとときを提供したい」と語る。「人生最高の舞台を用意」。それこそがグランメゾンであるための要だ。
小林シェフにとってレストランは劇場と同じ。
「舞台芸術と同様、綿密なリハーサルがあってこそ、素晴らしいフィナーレを迎えられます」
サービススタッフと料理人が一糸乱れぬ連携で役柄を演じ切ることで、最上のサービスが生まれる。唯一無二の「小林圭の料理」を提供し続けることも大きな使命だ。料理の真価を決めるのは、まず素材。トリュフ、キャビア、フォアグラといえど、その質には優劣がある。美食の激戦地で最高の食材を入手するために必要なのは、生産者との揺るぎない信頼関係、そしてシェフの独創性と情熱だ。その情熱が新たな創造へとシェフを駆り立て、生産者の心をも動かす。ひと皿ひと皿に研ぎ澄まされた信念が宿り、食べる者の心を打つ料理となる。
オープン時から提供し続けているスペシャリテ「庭園風季節のサラダ」は、小林シェフにとって革新の象徴。スモークサーモンを中心に据えたこの逸品は、視覚や味覚のバランスをミリ単位で整えながら、いまでも進化し続けている傑作だ。時間があれば美術館にも足を運ぶという小林シェフ。いちばん愛する芸術家はピカソだ。
「基礎的なデッサン力を極めたからこそ、前衛的な創造が生まれる」
その在り方は、小林シェフの料理にも通じる。フランス料理の伝統を踏まえ、細部にまで精緻を極めることで"グランメゾン"はさらなる高みへと歩き続ける。

小林 圭
1977年生まれ。99年渡仏。南仏やアルザスのレストランで郷土料理を学び、2003年より3ツ星アラン・デュカス オ・プラザ・アテネに7年間勤務。11年、自身の店をオープンし、20年に3ツ星を獲得。現在、御殿場にあるメゾン ケイをはじめ国内で5店舗を監修。映画『グランメゾン・パリ』で料理監修を担当した。
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Restaurant KEI
レストラン・ケイ
[ 1区|パレ・ロワイヤル ]
パリを拠点に世界的に活躍する建築家、田根剛が2021年にリニューアルを手がけた。細工技巧が施されたクリストフルのシャンデリアを生かし、精緻の結晶のような空間が完成した。©Vincent Fillon
ミシュランガイドの本場フランスで3ツ星を掲げるのは計30軒。パリではわずか10軒のみ。その最高峰に日本人シェフとして初めて辿り着いた小林圭。フレンチの技術を極めると同時に、日本人ならではの繊細で独創的な世界を追求する。スペシャリテは「庭園風季節のサラダ」。レモン風味の真っ白な泡の中に、スモークサーモンと40種類もの野菜を潜ませた逸品は、食感や香りの妙が鮮やか。ブラッディメアリーソースを纏ったアカザエビの料理は、キャビアを敷き詰めた黒の絨毯とともに。サンルイのクリスタルグラスなど、一流の食器に盛られた料理は、視覚と味覚が同時に刺激され、まさに芸術。感性を揺さぶる独創的な世界が美食家を魅了し続ける。
ランチコースは185ユーロから。季節の素材を生かした料理を提供。まろやかさと潮の味のバランスがいい牡蠣を昇華。潮の香りのジュレ、エシャロットのコンフィ、キャビアの塩味、赤ワインビネガーのソルベをアクセントにした「Huître en Gelée d'Eau de Mer」
繊細な甘味があるアカザエビは、イカ墨、生ハム、鳩の肝でとろみをつけたブイヤベースソースを添えて。「Langoustine d'Écosse」
レストラン・ケイ
5, rue Coq Héron 75001
01-42-33-14-74
ⓂLOUVRE-RIVOLI
営)19:45~20:45L.O.(火~木)、12:30~13:15L.O.、19:45~20:45L.O.(金、土)
休)日、月
要予約
https://restaurant-kei.fr/
★Google Map
●1ユーロ=約172円(2025年10月現在)
●日本から電話をかける場合、フランスの国番号33の後、市外局番の最初の0を取ります。フランス国内では掲載表記どおりかけてください。
●各紹介アドレスのデータ部分のⓂは地下鉄の駅を示しています。
●掲載店の営業時間、定休日、料理・サービスの価格などは、取材時から変更になる可能性もあります。ご了承ください。
*「フィガロジャポン」2025年5月号より抜粋
photography: Taisuke Yoshida text: Aya Ito