パリジェンヌ・セシルが指南する、アンティーク食器、テール・ド・フェールのテーブルコーディネート術。

Paris

フランスのアンティーク食器「テール・ド・フェール」。その世界に魅せられたアトリエ「ブランシュ・パティーヌ」のオーナーでもあるセシルが陶磁器の魅力を徹底解説。ジアン、サルグミンヌなど日本でも知られた陶磁器窯の見極め方、蚤の市でのハンティング方法、テーブルコーディネートアイデアまでをご紹介。

第3回目は、セシル流、テール・ド・フェールを使ったテーブルコーディネートを指南していく。

>>第1回 パリジェンヌ・セシルが案内する、フランスのアンティーク食器、テール・ド・フェールの世界。

>>第2回 パリジェンヌ・セシルが教える、アンティーク食器、テール・ド・フェール探しのポイント。


第3回
テーブルに物語を――テール・ド・フェールが彩る、今日の食卓

アンティークの食器と聞くと、「飾っておくもの」というイメージを抱く人もいるかもしれない。だがテール・ド・フェールの魅力は、150年前の食器が今もなお、毎日の食卓で使えることにある。そして使うことで、日常の食卓に優しい温かみが生まれる。

ブランシュ・パティーヌのオーナー・セシルのテーブルコーティネイトのモットーは、「バラバラのものを組み合わせること」にある。「私のスタイルは、異なるモチーフ、異なるモデルを混ぜてひとつのテーブルを作ること。たとえばショワジー=ル=ロワの食器は青や緑の微妙なニュアンスを持つものが多く、異なるモデルを並べても自然に調和するのです。そこから生まれるテーブルの表情が、私は大好きです」

違うデザインのプレートを組み合わせ、異なる製造所のものを混在させる。それが「失敗」ではなく、センスになる。アイボリーとグリーン・ブルーの落ち着いたトーンが、どんな組み合わせにも不思議と馴染むからだ。

左:すべて同じシリーズで揃える必要はない。テーブルの上で広げてみて色合いのバランスを見てみよう。右・同系色、ニュアンスの近いものを選ぶのもコツのひとつ。©︎maki kotabe

テール・ド・フェールは、現代のテーブルウェアとも相性がよい。白やナチュラルカラーのリネンのクロスやナプキンは、アイボリーの素地と自然に調和し、温かみのある食卓を演出する。シンプルなガラスのコップやモダンなカトラリーと合わせても浮くことなく、むしろ食器の繊細な絵柄が際立つ。テーブルの上にひとつテール・ド・フェールがあるだけで、たちまちフランスの田舎の食卓のような雰囲気を纏う。はじめての一枚を探すなら、プレートやラヴィエ(オードブル皿)など日常的に使いやすいものから始めるのが賢明だ。状態の良いものを選ぶことが肝要で、エナメルに欠けやひびのあるものは避けたい。食器の裏側の証印であるエスタンピーユを確認し、表面を触ってみること。滑らかでしっとりとした手触りがあれば、エナメルが良い状態を保っている証拠だ。「刃物の傷もなく、エナメルが完璧な状態のものを触ると、本当に違います。その感触は、言葉では伝えにくいけれど、一度知ったら忘れられない」とセシルは語る。

左:違うモデルを組み合わせてスタイルアップ。一人の食事も大切な愛おしい時間に。右:もちろん好きなモチーフを同じシリーズで合わせても素敵だ。©︎maki kotabe
テール・ド・フェールにモダンなカトラリーやリネン、日本の豆皿などを合わせても。photo&styling by maki kotabe

テール・ド・フェールを手に取る時、そこには150年分の記憶が宿っている。かつての食卓で交わされた会話、家族の笑い声、大切な人との時間。「ここに来るお客様はみなさん『時間が止まっているみたい』とおっしゃいます。これらの食器には魂があると、私は本気で思っています」とセシルは語る。実際に使うたびに愛着が増していくという。それがテール・ド・フェールならではの温かさであり、この食器を特別なものにしている理由である。フランスの食文化が育んだ一枚を、ぜひ今日の食卓に迎えてみてほしい。

左:アトリエの一角。収納せずにインテリアの一部として楽しむことも。右:キッチンでの見せる収納も真似したい。©︎maki kotabe
©︎maki kotabe

ブランシュ・パティーヌのオーナー、セシル。美術史を学び、アートギャラリーやオークションハウスで働いた後、2015年に「ブランシュ・パティーヌ」をオープン。テール・ド・フェールを学び探求し、その魅力に再び価値を与えている。過去から未来へとその歴史を紡ぐ専門家。著書『TERRE DE FER Collections de céramique française』は2024年に出版。@blanchepatine

※ブランシュ・パティーヌ オーナーによる著書はフランス国立図書館(BNF)にも収蔵。現在はフランス語版のみ。

Blanche Patine
29 Rue des Vinaigriers, 75010 Paris
https://www.blanchepatine.com/
アトリエへの訪問は要予約。
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  • editor & photography: Maki Kotabe