トマ・ドキール、『ラ・バヤデール』のソロル役を踊りエトワールに!
6月21日、マチネの公演で『ラ・バヤデール』のソロル役を踊ったトマ・ドキールがエトワールに任命された。パリ・オペラ座バレエ団初のベルギー人エトワールの誕生に、ベルギーのメディアは興奮気味。2年前、国王夫妻のフランス国賓訪問に際してパリのベルギー大使館邸で催された昼食会にマクロン夫妻とともに彼が着席する姿からも想像できるように、彼はベルギーではスターなのだ。ちなみに彼が生まれたのは、ベルギー南部のフランス国境に近い町でフランス語圏。ヴァイオリニストの父、10年クラシックバレエを学んだ母という家庭に生まれている。


2010年パリ・オペラ座バレエ学校の第5ディヴィジョンに入学した彼は、2015年に入団。2017年コリフェに上がり、20歳の若さで『白鳥の湖』ではロットバルト役を任され、プリンス役のユーゴ・マルシャンを相手に堂々たる演技を見せた。落ち着きのある大人びた風貌、正確なポジションのダンスを観客に見せ、存在を示す良い機会となった。2020年スジェに昇級。『くるみ割り人形』『ドン・キホーテ』で主役を任され、2024年にコンクールではなく任命によりプルミエ・ダンスールにジャック・ガッツォットとともに昇級した。マチアス・エイマンが休んでいて男性エトワールが不足気味なこともあり、プルミエ・ダンスールに主役が託される機会が増え、彼も昇級以降、『眠れる森の美女』『パキータ』『シルヴィア』『ロミオとジュリエット』と大作が踊られるごとにエトワールをパートナーに主役を踊っている。とりわけ4月のロミオ役ではブルーエン・バティストーニが相手で、代役ではなく最初からの配役だった。さらに降板したギヨーム・ディオップに代わってヴァランティーヌ・コラサントととも公演があり、この時に任命を期待した人も少なくなかったようだ。何もなく公演は終わったけれど、プルミエ・ダンスールの中でも次の任命は彼に?という声がここでさらに大きくなった。


今シーズン、この『ラ・バヤデール』は2022年の春以来の公演である。その時トマはブロンズ・アイドルを踊り、今回も同様の配役だった。しかし、ユーゴ・マルシャンとマルク・モローの2名のエトワールが怪我で降板。ソロルの代役である彼がふたりのそれぞれの1公演で踊ることになった。その最初がユーゴに代わって踊ることになった6月21日。パ・ド・ドゥの多い作品では主役が降板するとパートナーもともに降り、カップルそのものが入れ替わることが多いけれど、この公演では予定通りニキヤ役がドロテ・ジルベール、ガムザッティ役はロクサーヌ・ストヤノフのまま。このことから、この日に彼の任命がある!という気運が高まり……実際、新たに男性エトワールが誕生することになった。ちなみに彼はドロテ・ジルベールがパートナーの公演でエトワールに任命された4番目のダンサーだ。任命の際に見せた彼女とロクサーヌの心からの笑顔には、この公演で彼をエトワールに!! という願いが叶った喜びが感じられ、実に感動的な任命劇だった。

今回『ラ・バヤデール』は映像化され、配役はユーゴ×ドロテ×ロクサーヌ。そしてトマはブロンズ・アイドルに配役されている。ほかのブロンズ・アイドルに比べると、彼の余裕と気品は別格。この役で任命されたポール・マルクにも匹敵する格調の高さが素晴らしい。日本ではTOHOシネマライズ日本橋ほかで、2027年4月16日(金)~4月22日(木)に上映が予定されている。これからのパリ・オペラ座を背負う新しいエトワールを見に行ってみよう。

来シーズン開幕に『マノン』の公演がある。過去にトマはレスコー役に配役されているが、彼がいつか踊りたいという役のひとつが、このデ・グリュー役。すでに発表された次回の配役表によると、1日だけまだ主役の配役未定の日がある。彼はこの公演と重なるように踊られるミックスプログラム『Paysage intérieur』で『Vers un pays sage』に配役されているので、どうなるか……。