【篠原ともえ連載Vol.28】正倉院宝物をファッションへと昇華。
TOMOE SHINOHARA MAKING 2025.06.24
この度、大阪歴史博物館で開催中の『正倉院 THE SHOW ー 感じる。いま、ここにある奇跡 ー』にコラボレーションアーティストとして参加させていただくことになりました。
本展覧会は正倉院の神秘の魅力を現代へと再構築する新しい試みの特別展となっており、宮内庁正倉院事務所の全面監修によって大阪と東京で開催します。
宝物を360度からスキャンして取得された高精細な3Dデジタルデータに演出を施した展示を行い、宝物の細部や質感を実物を鑑賞する以上にリアルに感じることができます。幅約20メートルのスクリーンで上映する世界観は圧巻です。
また、天下の名香「蘭奢待(らんじゃたい)」を科学的に分析して再現した香りも初公開しています。ガラスボールの中に閉じ込めて香りを実際に楽しんでいただくことができ、それぞれの印象が違うのもとても楽しく、まさに五感で感じる空間です。
そして私が正倉院に所蔵されるおよそ9,000件の宝物の中から、モチーフに選んだ宝物はシルクロードの美意識と精緻な工芸技術の結晶となる水瓶「漆胡瓶(しっこへい)」。草花や鳥獣が表され『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』にも記載されたこの品は圧倒的な存在感を放ち、現代デザインにもインスピレーションを与え続ける至宝です。
この正倉院宝物を、纏うアートピースの象徴としてファッションへと昇華させました。作品名は「LACQUERED EWER SHOSOIN DRESS」。職人技術の粋を集めた古代の水瓶は、時を超えた美意識とおおらかな大陸の流れを感じさせその歴史に魂が震えました。守り残された記憶をなぞり現代へと甦らせるこの手仕事は、過去の職人との創作を通じた会話のようであり、制作者として至福の瞬間でありました。
会場ではこの思いのカケラをお持ち帰りいただきたいと、ポストカードセットも手に取っていただくことができます。新しい形で私たちの中に生きていく本作品が、正倉院宝物の魅力と手仕事の価値を届けるきっかけになればと願っています。
<大阪展>
会期:開催中〜2025年8月24日(日)
会場:大阪歴史博物館
大阪府大阪市中央区大手前4丁目1-32
06-6946-5728
開)9:30〜17:00最終入場
休)火 (8月12日は開館)
料)一般¥2,000
https://www.osakamushis.jp
<東京展>
会期:2025年9月20日(土)〜11月9日(日)
会場:上野の森美術館
東京都台東区上野公園1-2 · 9.4 km
03-3833-4191
*チケット料金など詳細は後日発表。
https://www.ueno-mori.org
https://shosoin-the-show.jp
photo:Sayuki Inoue

1995年歌手デビュー。文化女子大学(現・文化学園)短期大学部服装学科デザイン専攻卒。歌手・ナレーター・女優活動を通じ、映画やドラマ、舞台、CMなどさまざまな分野で活躍。現在はイラストレーター、テキスタイルデザイナーなど企業ブランドとコラボレーションするほか、衣装デザイナーとしても松任谷由実コンサートツアー、嵐ドームコンサートやアーティストのステージ・ジャケット衣装を多数手がける。2020年、アートディレクター・池澤樹と共にクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。
篠原ともえ公式サイト:www.tomoeshinohara.net
公式インスタグラム:www.instagram.com/tomoe_shinohara/