伝統文化といまを繋ぎ、世界の女性の生き方を照らす。【BWAアワード2025受賞者:佐藤マクニッシュ怜子】

Society & Business

「こうあるべき」にとらわれず、自分の感性や思いを大切にしながら働くことを通して社会にインパクトを与える次世代のロールモデルたちに光を当てるフィガロジャポンBusiness with Attitude(BWA)Award
5回目となる今年のテーマは、「楽しみながら舵を取る女性たち」。

困難な状況でも、仲間とともに航路を進み、新しい可能性や豊かさを見つけ出すストーリーを紹介します。


佐藤マクニッシュ怜子
【アマテラス代表取締役社長】

1995年東京都生まれ、カナダ育ち。国際基督教大学在学中にナイトウエアブランド、アマテラスを起業し、CEO兼デザイナーを務める。2024年からはライフスタイルブランドとしてリブランディング。25年からは空間ブランディング事業、THE ZEN をスタート。若者を中心に多くの支持を得る。https://www.amateras-japan.com/

日本で生まれ、思春期をカナダで過ごした佐藤マクニッシュ怜子。帰国してから抱いた疑問があった。

「日本人は自国の価値に気付いていないと思ったんです。伝統文化もどんどん衰退していて、30年後には西陣織をはじめとする着物の技術が絶滅するといわれています。日本の伝統文化は守られすぎたがゆえにモダナイズされず、現代に生きる人たちに魅力的に映る形でアップデートされてこなかった。若い子たちはキラキラした海外のものに目を奪われています。この現実を解決する方法はないかと考えたのが大学4年生の頃です」

大学在籍中にモデルの仕事をしていた佐藤は、アパレル業界でブランドを立ち上げることを思いつく。

「モデルの仕事をする中で、日本の女性の自己肯定感の低さも感じていました。歳を重ねるにつれて、年齢の壁に対する社会からの圧力に負けてしまう女性が多い。そこで日本女性をエンパワメントしたいという思いも込めて、周囲を照らす女性を想起させる『アマテラス』というブランド名に決めました」

発売当時、10秒に1個売れるベストセラーとなったドリーミーブラ。ノンワイヤーで肌にフィットするパッドが入ったブラは、インナーとトップ2ウェイで着用でき、どんな人にもきれいな胸元を作ってくれる。

ちょうどその頃、ネットフリックスをはじめとする海外の配信サービスが日本でも広がり、アメリカのライフスタイルに対する憧れが日本の若い女性の間で高まっていた。

「女子高生の間ではドラマ『ゴシップガール』のファッションが注目されていました。一方でカナダの友だちからは、日本の洋服が欲しいから買ってきてと言われてハッとしたんです。日本が発信できる洋服って何だろうと。日本を感じさせるブランドがないのなら、自分でつくってしまおうと考案したのが、和柄をモチーフにしたローブでした」

欧米の女性にはおなじみのガウンやナイトウエアといった部屋着。これを日常的におしゃれに着こなす文化は日本にない。そこで佐藤はまず海外の女性に向けて和柄をモダンにデザインしたルームウエアを発信した。

「創業2年目でコロナ禍になってしまったんですが、海外の有名スタイリストが私のSNSを見てDMをくれたんです。それがきっかけで海外のセレブに商品を送ったところ、たちまち話題になりました」

彼女たちが自宅やメイクルームで身につけたアマテラスのウエアは逆輸入という形で日本の消費者にも広がった。

「伝統的な着物のままだと着方がわからない人も多いけれど、和柄を海外の人になじみのあるシルクサテンのローブやパジャマと組み合わせた点が新鮮で、広く受け入れられることに繋がったのだと思います」

モデルやインフルエンサーがセルフィーであげた写真はすべてチェックし、アマテラスのコンテンツやメディアニュースとして発信した。世界のトレンドをいち早くキャッチし、メディアを活用したスピーディな展開で、アマテラスはクールジャパンを体現するブランドへと成長した。

米国でのアマテラスのポップアップも好評。
渋谷の古民家で開催した「アマテラス リミテッドストア」。和と洋を組み合わせた空間でゆっくりと試着ができた。 

佐藤が目指すのは、外国人も日本人もかっこいいと思える日本だ。

「海外ではいまだに日本に対してサムライやニンジャといったステレオタイプのイメージを抱いている人が多い。安くて機能的な電化製品や車はあるけど、もっと上質なカルチャーやエンターテインメントもあるんだよ、ということを伝えたいんです」

佐藤が次に目指すのは、働く女性をターゲットにしたウェルネスブランド。

「数年前からサウナがブームになっていますが、これは日本のストレス社会の象徴だと思うんです。自分自身、仕事に没頭する中で、身体を癒やすことの大切さに気付いた。女性がもっと活躍するためにはオンとオフの両方が大事です。そこできちんと休むためのウェルネスブランド、THE ZENを新たに立ち上げました。5ツ星の外資系ホテルとコラボしてステイケーションを提案したり、リトリートパッケージではお寺の住職の方に坐禅や瞑想を教えてもらったり。心を解放して自分と向き合うための体験を組み込んでいます」

佐藤がデザインを手がける和モダンをコンセプトにしたインテリアのパース図。今後は「空間」をとおして和の魅力を発信する。「世界のラグジュアリー市場は日本文化の奥深さを求めています。この価値観をグローバルスタンダードへ押し上げていきたい」

22歳で起業した佐藤。現在10人の女性スタッフと一緒にブランドの発展に向けて邁進中だ。ともに働く仲間について聞いてみた。

「これから成長していくブランドなので、仕事を自分ごととして捉え、120パーセントの力で返せる人が理想。転職して入社した女性も多く、アマテラスで自分のやりたいことを形にして自信がついてくると、女性らしさもアップしてくるんです」

同じ目標に向かって持てる力を十二分に発揮し、やがて周囲を照らす存在になっていく。
日本をアップデートするのはそんな女性たちなのかもしれない。


Judges’ Comments

マリウス葉

アマテラスの哲学に深く共感。侘び寂び―不完全さを受け入れ、静けさの中に豊かさを見いだす感性―が、私が重視するメンタルウェルビーイング(自己受容と回復力)と地続きだから。この世界観を、美しさだけでなく、生き方として社会に根づかせている姿勢を心から支持している。

森田聖美 フィガロジャポン編集長

自分の人生と世の中のタイミングをうまく結びつける天性のトレンド感覚を持っている。禅スタイルを、ライフスタイルブランドとして昇華させ、自身が共感できる世代を観察して、揺らぐハートを持つ女性たちの心に平穏をもたらす環境づくりというコンセプトが受け入れられていると思う。

阿座上陽平(ゼブラアンドカンパニー共同創業者)

インスタグラムのアカウントをとおし、事業の成長とともに彼女自身が精神的にも成長する姿を見てきた。海外で育まれた、相対化された日本人というアイデンティティと、グローバルな感性の両方を生かし、自分らしくありながら、事業を成長させているさまを評価。

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*「フィガロジャポン」2026年1月号より抜粋

この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/society-business/251119-BWA-reikomcnishsato.html