和食ブームのパリ、オーセンティックを求めてヴァンドーム広場近くの作(サク)へ。
パリ1区のモンタボール通り9番地といったら、モード界の人々も集めパリ初のシックな高級和食レストランである衣川があった伝説の住所である。その場所をSAKU(サク)が引き継ぎ、新しい章を開いた。といっても、そこに根付いたDNAを継承し、サクもまた正統派の和食レストランである。パリは空前の和食ブームで、市内至る所でお寿司が食べられるようになった。第一次寿司ブームは20年以上も前のことで、中国人による寿司レストランが幅を利かせていた時代だ。いまの第二次寿司ブームはカリフォルニアと香港経由の寿司が席巻している。寿司といっても魚は鮮度も良くまずくはないけれど、江戸前などという言葉とは無関係。日本人からみるとちょっと“トゥーマッチ”と言いたくなるような、良く言えばファンシーな寿司が少なくない。

そんなわけで、サクの洗練されたオーセンティックな和食はいまのパリでは希少価値があるのだ。経営するグループの最初の店が6区の寿司店の築地だと聞けば、これまた安心材料のひとつである。このグループの2軒目は同じ通りのShin Izakaya。伝統を守って丁寧な寿司を提供し続ける築地と、居酒屋の温かな雰囲気のShin Izakayaという2軒のアイデンティティをミックスして生まれたのがサクなので、寿司&居酒屋と謳っている。なお、フランス人たちにすっかりおなじみとなった“居酒屋”という言葉だが、タパスっぽく小皿料理をシェアして食べるという意味が大きく、日本人が思う価格の安さはあまり考慮されていない。


メニューは前菜とは別に、コロッケやシシトウ焼きなどのおつまみのコーナーが設けられている。天ぷら、寿司、刺身……お肉と魚料理はオススメコーナーに。スシとマキはアラカルトでもオーダーできる。月曜から金曜のランチタイムには盛りだくさんのお弁当(42ユーロ)があり、また夜は一階のカウンターでおまかせ料理(145ユーロ/要予約)が味わえる。19時と21時の2回転で内容は小鉢、酢の物、揚げ物、刺身、焼き物または煮物、寿司が8~10ピース、味噌汁、デザートの8品。シェフが季節の素材とインスピレーションで腕を振るう。最近高級化が目覚ましいパリの寿司店でのディナーでこの価格は結構うれしい。カウンター内で寿司を握るのは江戸前寿司を専門とするヴィクトール・エマニュエルである。魚の選別とカット、米と酢のバランス、握りのテクニック……職人の頼もしい腕前だ。


店内は衣川時代のエレガンスを踏襲しつつ、よりモダンに改装された。漆を思わせる赤がアクセント。床の刺し子模様のカーペットは正田啓介によるデザインで、リズム感と明るさがインテリアにプラスされている。ゆったりと食事を楽しめる広いダイニングルームと廊下を挟んで、居酒屋カウンターを備えた小さなスペースがあり、ここはガラス扉を閉めて貸切にすることも可能。サク、覚えておきたいアドレスでは?

住所:
9, rue du Mont Thabor 75001 Paris
営:
12:00~15:00、19;00~23:00
休:
無休