黒川想矢、16歳の恋愛観。「人を好きになるって、どういうこと?」
佐賀県唐津市と韓国・釜山を舞台に、ふたりの高校生が出会い、少しずつ心の距離を縮めていく青春ラブストーリー『3ミリの恋』。主人公のタツヒコを演じるのは、まっさらな感性で役と向き合い、現場で出会うものすべてを吸収しながら変化していく黒川想矢。

韓国からやってきた留学生ユンスルを、キム・ジアンが演じる。文化も言葉も異なるふたりが、互いの違いを受け止めながら、少しずつ相手を知ろうとする姿を、唐津と釜山の美しい海や街並みが見守る。そのひたむきな思いは、どこか殺伐とした時代を生きる私たちの心に、まっすぐ届く。作品を通して新たな経験を重ねた黒川想矢に、役への向き合い方や、旅、恋愛、そしてこれからのことを語ってもらった。青春を駆け抜ける彼の「いま」の声に耳を傾けたい。


自分を知るためには、周りの人が必要
――瑞々しく、心が温まるラブストーリーでした。本格的なラブストーリーは初挑戦だと思いますが、オファーを受けたときはどんな気持ちでしたか?
あまりラブストーリーという感覚はなくて。恋愛をする役は初めてだったので、タツヒコと同じように、「人を好きになるってどういうことなんだろう」と思いました。家族や友達への「好き」と、恋愛の「好き」は何が違うんだろうと、改めて考えるきっかけにもなりましたし、人のことが気になる、その延長線上にあるものなのかなとも思いました。でも、タツヒコ自身もわかっていないので、この作品でタツヒコと一緒に見つけていけたらいいなと思っていました。
――演じるなかで、その答えは見つかりましたか?
いや、見つからなかったです(笑)。でも、「大切に思う」ということでいいのかな、とは思いました。
――タツヒコは、どんな人物だと捉えていましたか?
最初は、変わらないことが好きなのかな、と思いました。タツヒコのお父さんも漁師なので、自分もこのまま漁師になっていくのかなと。でも、ユンスルと出会って、少しずつ変わっていきます。彼は自分のやりたいこともよくわかっていないし、大学に行くのかどうかもわからない。そんな彼が、ユンスルを通して自分のことを知っていくような気がしました。彼女と出会ったことで、唐津から釜山へと、考えも視野も世界も大きく広がっていったんだと思います。

――この夏、インスタグラムにはスペインやドバイに行かれた様子を投稿されていましたが、黒川さん自身は、旅をすることのどこに面白さを感じていますか?
新しいことを知ること、特に文化の違いを知ることですね。自分を知るためには、周りの人が必要だと思うんです。自分のことは、自分だけではわからない。他人がいてこその自分というか、人との違いに気づくから、自分のこともわかるんだと思います。旅に出ると、文化も言語も違うので、そういう違いを通して、自分を知ることができる気がします。
――ジアンさんとは、言葉が違うなかで、どのようにして気持ちを通わせていったのでしょうか?
最初は、言語が違うのに気持ちのキャッチボールができるのかな、という不安がありました。でも、実際にやってみたら、言葉はあまり関係ないのかもしれないと思えたんです。言葉よりも、その場の空気感や、お互いの関係性のほうが大事なのかなと思いました。ジアンさんは、日本語のセリフを音で覚えて話されていたのですが、僕たちは演じ合うというより、感情を共有して、お互いに感じ合うことに重点を置いていた気がします。僕は、そもそも演じることがあまりできないので(笑)、そういう意味でも、言葉だけではないやり取りができたことは、すごく印象に残っています。

初めて食べたサムゲタンは驚くほど美味しかった(笑)
――実際に韓国で撮影をして、日本との違いを感じたことは?
撮影の進め方がまず違いました。韓国ではテストがあまりないんです。段取りはあるのですが、テストがない分、本番に集中できた気がします。それから、食事の時間も印象的でした。日本では各自でお弁当を食べることが多いけれど、韓国では一度撮影を止めて、みんなで食堂にご飯を食べに行くんです。キャストもスタッフの皆さんも一緒に食事をしながら撮影の話をしたりして、すごく温かい時間でした。みんなで食べることで、関係性も築けていたと思います。日本の良さも韓国の良さも感じられて、とても楽しかったです。芝居に関しては、韓国の俳優さんは感情をストレートに表現するんだな、と思いました。日本では感情を抑えて、内側から出てくるものを大切にすることもあると思いますが、感情を表に出す姿も素敵ですし、すごいなと感じました。
――劇中、釜山の名物「ミルミョン」が登場しますが、黒川さん自身が特に感動した韓国グルメはありましたか?
撮影の合間にみんなでお昼を食べに行った先が、サムゲタンのお店だったんです。僕、サムゲタンを食べたことがなかったので、ランチに鶏が丸ごと出てきたことにまず驚いて(笑)。でも、食べてみたら「こんなにおいしいものは食べたことがない!」と思うくらい、本当においしくて。日本に帰ってきてからも、お店をあちこち探して食べています。
――タツヒコは思い切って一人で韓国へ向かいますが、黒川さん自身、これまでに大きな冒険をしたことはありますか?
僕にとっては、この撮影自体が冒険でした。黒川想矢としての悩みが、そのままタツヒコになっていくような感覚もありました。でも、韓国での撮影という環境だったからこそ、タツヒコになろうとしなくても、そのままでいられたというか。環境から役に入っていけたところはありました。台本を読んだときからこの作品が気になっていて、これは絶対に楽しいぞ、と思っていたのですが、実際に撮影してみて、言葉や演技だけではないやり取りがすごく重要なんだと、改めて実感しました。以前、海外の映画祭に行ったときも、街中で「よかったよ」と声をかけてもらったことがあるんです。そのときに、言語や文化が違っても通じ合えるものはあるんだな、と感じました。今回も、演技を通してそれを確かめられたことは、僕にとって大きな経験になりました。
――撮影で特に大変だったことは?
韓国で花火のシーンを撮ったとき、急に雨が降ってきて、花火が上がらないかもしれない、という状況になったんです。撮影できる時間も限られていたので、ドキドキしました。でも、雨がやんで撮影できたときは、すごくうれしかったですね。

人と向き合うことは、人を好きになることに似ている
――タツヒコの青春は、黒川さんの目にどのように映りましたか? ご自身の高校生活と重なるところはありましたか?
いや、タツヒコがうらやましいですよ。学校に女子がいるかいないかでは、だいぶ違いますから(笑)。撮影中は、ジアンさんや荒木飛羽くん、早瀬憩さんと4人でご飯を食べに行ったり、花火を見に行ったりする時間もかなりあったんです。そのときは意識していなかったけれど、そういう時間が作品の空気感にもつながっていた気がします。普通に一緒に過ごすのが楽しくて、幸せでした。
――逆に、ご自身の高校生活で「ここは自分のほうが青春しているな」と思うところは?
ない気がしますが、「彼女が欲しい」と言っている時間こそが青春だと思います。
――でも黒川さんは、お芝居のなかで共学に通ったり、彼女ができたりする体験ができますからね。
確かにそうですね。映画が公開されたら、「お前、何やってんだよ」と友達にしばかれそうです(笑)。今回の作品は、短期留学したような気分でした。
――今、一番興味があることは何ですか?
こんなことを言ったら、ちょっと怒られるかもしれませんが、恋愛に興味があります(笑)。
――今回の役柄も、恋愛への関心につながったのでは?
それもあると思います。人を好きになるって、本当はどういうことなんだろう?と考えるようになりましたし、人と向き合うことは、人を好きになることに似ているなと、最近思うんです。この映画も、すごく愛に満ちあふれているので、そういうことが気になるんだと思います。

――本作を経験して、俳優として自分のなかで変化したことはありますか?
これまでの作品のなかでも、かなり変化したと思います。日本にいるときは、感情を隠すというか、押し込んでいる感じだったのですが、もっと出してもいいのかなと思うようになりました。これまでは「演じない」ということに徹していたのですが、どこかで自分に戻る瞬間があってもいいのかな、とも思えるようになりました。撮影では、同じ動きをしなければいけないし、一発で本番を出さないといけない。だから、本番に向けて気持ちを作っていくというより、その場で役に入ることができたら、すごくいいなと思うんです。撮影中、ずっと役のなかにいられたらいいと思っていたけれど、それだと苦しくなってしまうこともあります。でも、何か癖をつけてみると、それによって一瞬切り替わって、自分を俯瞰で見られたりするんです。作品のなかでは感覚的なものでしかないのですが、右脳と左脳がすごく高速で切り替わっていくような感覚になることもあって。演技というものが、自分のなかでまた少し変わっていったような気がします。
――タツヒコも将来について考え始めますが、黒川さん自身は、これからの進路や将来についてどのように考えていますか?
どういう大学に進もうとか、どんなことをしようとか、まだあまり目標がなくて。でも、いろいろなことをやっていくうちに、自分のやりたいことが見つかってくる気がするので、いまは目の前のことと向き合うしかないなと思っています。海外のことをもっと知ったり、言語を勉強したりするのも続けていきたいです。日本から海外へと活動の場を広げている俳優さんもいらっしゃいますが、僕はとにかく、いろいろ勉強しようと思っています。「いろいろって何やねん、お前」という感じなんですが(笑)。いろいろなメソッドもあるかもしれませんが、やっぱり自分が感じることを大切にして、まずは目の前のことを一つひとつやっていく。それがいま、自分にできることなのかなと思います。まずはいまの作品に向き合うことですね。
mSoya Kurokawa
2009年12月5日生まれ。埼玉県出身。5歳で芸能活動を開始し、2023年に『怪物』で麦野湊役を演じ、「第47回日本アカデミー賞」新人俳優賞や「第66回ブルーリボン賞」新人賞などを受賞。2025年公開の『国宝』『この夏の星を見る』では、「第17回TAMA映画賞」最優秀新進男優賞、「第38回日刊スポーツ映画大賞」石原裕次郎新人賞を受賞。2026年は『免許返納!?』の出演のほか、7月には『オールナイトニッポンPODCAST』で月替りパーソナリティを務めた。
『3ミリの恋』
●2026年11月6日公開
●出演:黒川想矢、キム・ジアン、荒木飛羽、早瀬憩、/大谷亮平、他
●監督・脚本:全辰隆
●配給:東映、東映ビデオ
www.3mmlove-movie.com
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- photography: Elaine Lam
- styling: Masaaki Ida
- Hair & Makeup: Moeka Kanehara
- text: Rieko Shibazaki