コロナ禍で人との出会いが減り、「マッチングアプリ」が気になっている方も多いのではないでしょうか? ひと昔前は「出会い系」などと呼ばれ、ともすればマイナスのイメージを漂わせていましたが、コロナ禍ですっかり市民権を得た様子。現代の恋愛模様は、マッチングアプリの普及でどう変わったのでしょう。マッチングアプリを通じて見えた悲喜劇を、ライターの馬越ありさが綴ります。

画像はイメージ。 photo:allensima_istock
優香さん(28歳)IT企業勤務の場合
「東京でハイスぺ男子と合コンしたって、遊ばれるだけだと思いますよ」
慣れた手つきでメンソールのタバコをふかしながら、優香さんはあざ笑うかのように言い放った。ゆるく巻かれたロングヘアに、派手すぎないジェルネイルが施された指先。レースのタイトスカートにノースリーブのニットを合わせ、カーディガンを肩掛けするという、お天気お姉さんを彷彿とさせるスタイル。大学生の時にミスコンに出場していたというのもうなずける、並行二重の大きな瞳が印象的な美女だ。
「まあ、私が狙っていたのはトップクラスの男の人だったのもありますけどね。商社マンなら、財閥系で家柄も良い人。そういうスペックの男の人に正攻法でアタックしても、遊ばれるだけですよ」
ツンと筋が通った鼻を鳴らし、そう思うにいたった経緯を話してくれた。
「私、どうしても女子アナになりたかったんです。だから、女子アナを多く輩出しているMARCHの中の一校に入学して、すぐにミスコンに出場しました。けど、ミスにも準ミスにもなれなくて。ミスに選ばれたコには、女子アナが多く所属する事務所からスカウトが来てて……悔しかったです」
「でも、格差を感じたのは、それくらい。ミスコンメンバーでの合コンは、みんな同じようにモテてました。私にも、医学部生と、外銀、経営者の彼氏がいましたね」
悪びれる素振りも無く、3股をしていた事を話す優香さん。
「遊んでばっかりじゃ無くて、ちゃんとアナウンススクールにも通いましたよ。……それなのに、キー局の女子アナ試験は、最終まで残れなかったんです。結局、うちの学校からはミスになったコがキー局に内定しました」
ミスコン出場美女が、味わった屈辱とは。
「昨日まで“一緒に頑張ろうね”って言ってたのに、内定が出た途端、女子アナ内定者としかつるまなくなって。私が就職活動をしている間に、女子アナ内定者だけで合コンに行ったりしてると聞きました。見下された気がしましたね」
「少しでも合コン受けが良いステイタスでいたくて、読者モデルの先輩も多く就職しているIT企業に入社したんですけど……。かなり残業が多くて、合コンにも満足に行けない生活に、早々に音をあげそうになりました。経営者の方との合コンって、18時位から始まるのが多いんです」
3人いた彼氏はどうしたのだろうか…? 思わず訪ねると、口元を歪め怒りを露わにする。その表情から、哀しみは感じられなかった。
「ああ、あれ。結婚をほのめかしたら、3人ともフェードアウトしていきました。そんな事より許せないのが、疲れた体に鞭を打って22時スタートのコンサルの人達との合コンに行ったら、そこら辺にいるキレイなOLのひとりという感じで軽くあしらわれた事です」
「私たち女の子がいる前で、“こいつ、この前女子アナと週刊誌に載っちゃって~”とか言うんですよ。悔しいけど、好奇心を押さえられなくて聞いていたら、相手はミスコンで優勝した例のコでした」
「見た目のレベルは大して変わらないのに……。ミスコン優勝、キー局の女子アナというスペックが無いだけで、こんな理不尽な目にあうなんて。戦い方を変えなくちゃとマッチングアプリを始めました」
”遊び目的”が多いマッチングアプリの、意外な活用方法。
美女とハイスぺ男子が多いという謳い文句のアプリだろうか? そう思ったのを見透かしたのか、得意気に優香さんは教えてくれた。
「私が使ったのは、位置情報で検索が出来るアプリです」
学歴や年収を入力しなくても登録できるため、遊び目的の男性が多いと聞くアプリとは意外だ。
「と言っても、使うのは夏休みとお正月休みで、お友達と海外に行った時。ニューヨークやシンガポールに遊びに行って、近くにいる人に絞って検索するんです。そうすると、かなりの確率で駐在しているエリートとマッチングできて。マッチしたら“現地を案内して頂ける方を探してマッチングアプリをやっています”と伝えれば、遊び人と思われなくて済む。完璧な戦略だと思いませんか?」
事実、そうして現地を案内してもらった駐在員たちは、日本への一時帰国や本帰国が決まった際、高確率で連絡をくれたという。
その中のひとりである、財閥系商社に勤める男性と結婚。親族が何名もウィキペディアに載っているような、有名な一族だそうだ。
「ミスコンでも女子アナ試験でも、最後のひとりに選ばれなかった。その時点で、自分の身の程を知りました。そんな私がハイスぺ男子の最後のひとりに選んでもらうために、希少性を演出したんです」
しおらしい事を言うと、優香さんは可憐で、その裏にこんな戦略が隠されていたと気付ける男性は少ないだろう。
「東京の合コンで知り合っていたら、きっとステイタス目的のOLと軽くあしらわれていたと思います」
倫理観はさておき、アプリの特性を上手く活用した戦略に、思わず感心してしまった。
次回は5月8日公開予定
馬越ありさ
東京都出身。慶應義塾大学を卒業後、メーカーで販売促進に従事しつつ、ライターとしても活動。
この記事の元URL: https://madamefigaro.jp/culture/210501-dating-app.html