【憧れの家作り】早坂香須子が北アルプスの麓で叶えた、現代版「森の生活」。

Interiors 2026.04.05

家を買う、建てる、建て直す――家を形作ることは暮らし方そのものを考えること。間取りも内装も自由な一方、一筋縄ではいかないからこそ愛着も増すというもの。実際に家作りをした人を参考に、自分らしいマイホームを実現しよう。2026年の新しい生活、まず「家」から始めてみませんか。


憧れの家作り case 6
JAPAN ― NAGANO
早坂香須子
画家、メイクアップアーティスト、植物療法士

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白と木で統一した空間。リビングダイニングから続く階段の上にキッチンを配置。調理しながら窓越しの景色を楽しめるよう、キッチンでの目線に高さを合わせた窓を設けた。

メイクアップアーティスト&植物療法士として活動してきた早坂香須子は一昨年の夏、長野県北部の山間に移住を果たした。犬3匹、猫3匹と暮らすのは、3,000坪のカラマツの森に佇む平屋。東京と長野のデュアルライフを見据えて数年前から軽井沢周辺の土地を探していた早坂が運命的に出合ったのが、後立山連峰を一望するこの土地だった。

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左:エントランスの外に設えたウッドデッキには森で採取した枝物を飾って。こちらは清々しい香りのクロモジで、画材としても使用している。 右:美しい木目が印象的なエントランス。ここで使われている無垢材はすべて目の前の森で間伐したスギ材。森の恵みを余すところなく活用している。

「森の向こうに小さな湖があり、木立の上に北アルプスの稜線が連なる風景に、一瞬で恋に落ちました。東京とは行き来しにくいから完全移住になるけれど、この森に暮らす未来を諦めることはできなかった」

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ジョージア・オキーフのアビキューの家にインスピレーションを得たL字形の窓。

間伐したカラマツやスギ材をふんだんに使った家は、L字形に配した窓と山小屋を思わせる三角屋根、斜面を生かした二層構造、回遊できる動線に特にこだわった。建築家とのイメージ共有のために早坂が作った分厚いノートには、手描きのイラストや写真とともに、「光の森の家」「秘密基地」といった理想の自宅に求めたキーワードが並ぶ。

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長野県大町市に工房を構える木工ヤマニに依頼した建具はひょうたん形の引き手が愛らしい。こちらも森の間伐材が使われている。

「イメージしたのは、ジョージア・オキーフがニューメキシコのアビキューとゴーストランチに構えたふたつの自邸。周辺の景色を額縁のように切り取る窓と、コクーンのような寝室、機能的なキッチン、ものがあるのに整然としているアトリエやパントリー。好きなものに囲まれて、自分の暮らしと仕事がひとつに溶け合う、そんな居場所を目指しました」

白と無垢材の組み合わせが温かなムードを醸すこの家で、存在感を発揮するのが色彩豊かなドローイング。多くが早坂と親交のある作家による作品で、それぞれの作品に思い出やストーリーがある。

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キッチン、ダイニング、リビングがひと続きになった空間。横長の窓が切り取る風景を楽しめるよう、幅2m超のロングダイニングテーブルをレイアウト。

「ダイニングテーブルの前に飾った下條ユリさんの絵は、2拠点生活を思い描くようになった時に出合ったものですが、描かれている土と水の要素がこの家のロケーションにぴったり重なって。『この絵を迎える場所はここなんだ!』というひらめきがありました」

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制作の場であるアトリエにはさまざまな画材がずらり。心の赴くままに筆をとるひとときは、この家がもたらしてくれたギフトのひとつだ。

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ここで始める人生の第2章。

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たくさんのアート作品を飾りたいアトリエの壁面は石膏ボードで仕上げた。「それなのに、この窓の景色が美しすぎてアートを飾るところまで辿りつかないんです」

芽吹きの喜びを知る春、爆発するようなグリーンに包まれる夏、紅葉の秋、静けさに浸る冬。「ダイナミックに移り変わるから一瞬も目を離せない」という森との出合いがもたらしたのは、理想の我が家だけではない。この環境に背中を押されるように、早坂はここで絵を描くようになった。日々の徒然を綴る絵日記から始まり、いつしかカズテラモリ名義で作品を発表するまでに。一昨年には初の詩画集の刊行、個展の開催も果たした。第一線で活躍するメイクアップアーティストから新進画家へと大転換を遂げた背景には、自然のタイミングに身を委ねたシンプルな暮らしがあったようだ。

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スギ材で仕上げたコンパクトなキッチン。

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こだわりのバスルームは多治見で見つけたリサイクルタイルで仕上げた。絶妙な色ムラがお気に入り。

「地下から汲み上げた井戸水を飲み、土地の食材をいただき、森の手入れの方法を学ぶ。そんな日々のなかでは、自ずと意識や興味の対象が本質に向かっていくのでしょう」

そんな心情を物語っているのが、家の一角に飾られた、カズテラモリのカラフルな水彩画。優しいタッチのその作品には、自然と共生する悦びが満ちあふれていた。

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最近家族に加わったのは、生後4カ月のゴールデンドゥードル。犬舎の奥のシェルフに飾っているのは下條ユリ(左)と黒田征太郎(右)の作品。

*「フィガロジャポン」2026年3月号より抜粋

photography: Teppei Daido text: Ryoko Kuraishi

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