田舎でスローライフを始めたパリジェンヌたち 川辺に建つ故郷の家で、友人たちが集まる、おいしい食卓を。
Paris 2021.05.21
ロックダウンがきっかけとなり、パリから田舎に移る人たちが急増中。高校時代までを過ごした故郷の家で、地産の食材を使った料理を楽しむアリス・モアローの場合は?
窓の外はロワレ川。リビングのドアを開ければ、そのまま川辺にボートで漕ぎ出せる。オルレアンに近いアリスが育ったこの家は、世紀の初め、ギャンゲット(川辺のレストラン)だった建物。ともにアーティストで料理好きの父とテーブルアートにこだわる母は、週末にはいつも友人を招いていたそう。母が亡くなってから、家族はそれぞれ別に暮らし、ここは、父と弟が時折集まるファミリーハウスになっていた。
明るい光が差し込むキッチン。亡き母が描いた野菜や花の絵が飾られている。キッシュ生地からカラメルまで、アリスの料理は手早い。
パリ政治学院でクリエイティブ産業 のマスターコースに通いながら、モデルとしても活躍するアリスは、ロックダウンをきっかけに、この家に戻ってきた。小さい時から料理が好きで、レストランを開くのが夢だったという。 彼女のインスタグラムには、レシピが70近くアップされている。
「ここでは、とにかく料理ばかりしている。ロックダウン中は、毎日インスタグラムでレシピを紹介していたの」
画家だった母がデザインしたジアンのテーブルウェアは、白を基調にしたダイニングに優しい彩りを添える。
大きな窓からロワレ川を望むダイニング。窓辺には、両親が集めた素朴な木彫りの人形や、アリスがブロカントで見つけたオブジェが仲良く調和している。
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食材の買い出しは、地元の食材が集まる小さなマルシェで。
「人がいっぱいでアグレッシブなパリのマルシェと違って、みんな和気あいあいとしていて食材も元気。いつも寄るのは、地元農場の野菜と果物のスタンド。パリでは絶対にお目にかかれない、地元産のヤギチーズもおいしい」
ちょっと足を延ばして隣町のマルシェへ。おなじみの地元 農場ラ・ラシヌリの出店でお買い物。
高校時代まで過ごしたこの場所には、ロックダウン以来、パリとのデュアルライフを始めた友人も少なくない。アリスのおいしい料理とセンスのいい食卓に、幼なじみからパリの同級生まで、いつも仲間が集まってくる。
「夜間外出禁止になってからは、泊まっていく友人も多くて。子どもはいないけど、まるで一家の母になったよう! 急に大人になった気分ね」
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バターとチーズに、 ラ・ラシヌリで購入したネギと色とりどりのラディッシュ。
今日のランチは、黒大根とレッドミートラディッシュのトースト、ポロ葱とミントのキッシュ、オレンジカラメリゼ。
ひとりの時は、論文の準備の合間に読書、そして料理。ブロカントでグラスやアンティークリネンを探し、夏にはロワレ川にボートを漕ぎ出す。
今年の目標は、庭で野菜作りを始めること。卒業すれば、暮らしは変わるかもしれない。でも、昨年からひとりで住み始めたこの家で、パリとのデュアルライフを続けていく決心だ。
アリス・モアロー
モデル/学生
パリ政治学院のマスターコースに在籍。フーディングイベント会社の企業研修をこなしながら、モデルとしても活躍する。インスタグラムにアップするレシピにはファンも多い。
@alicemoireau
*「フィガロジャポン」2021年5月号より抜粋
photos : TAISUKE YOSHIDA, réalisation : MASAE TAKATA (PARIS OFFICE)