オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームに泊まって、シャンティイ散策。

Paris 2025.01.25

ルレ・エ・シャトーの5ツ星ホテルであるオーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームはパリ北駅から1時間もかからずに到着できる。ちょっとしたパリ脱出の旅にぴったりの行き先だ。先に紹介したようにホテルにこもって過ごす滞在もいいし、またこのホテルを起点に観光をするのもいいだろう。

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シャンティイ城の庭に隣接しているホテル、オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポーム。

ラファエロの3点を鑑賞しに、シャンティイ城へ。

このホテルからシャンティイ城まで徒歩でたったの10分である。ここに宿泊したからには、是非ともシャトーを訪問しなければ! 城内のあちこちで見かけることになるのは最後の城主Henri d'Orléan(アンリ・ドルレアン/1822~97年)のイニシャルHOをあしらったモノグラムだ。フランス最後の王ルイ・フィリップの五男の彼は、8歳の時に名付け親のコンデ公ルイ6世が亡くなった際に莫大な全財産を相続した。その中に、コンデ公のファミリーが1643年から所有していたシャンティイ城が含まれていたのである。

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フランス文化遺産の中でも珠玉のひとつとうたわれるシャンティイ城。
https://chateaudechantilly.fr/en/
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入り口で待つモンモランシー大元帥の騎馬像。photography: Mariko Omura
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アンリ・ドルレアンのイニシャルHOをあしらった意匠さまざまなモノグラムがシャトー内で見つけられる。photography: Mariko Omura

Duc d'Aumale(オーマル公爵)とも呼ばれるアンリ・ドルレアン。第二帝政期はほかのフランスの貴族たち同様に英国に亡命し、1871年にフランスに戻りシャトーを再建した。シシリア王の娘との結婚で生まれたふたりの息子が早世したため、相続者のいない彼は1884年に城をフランス学士院に寄贈したのだが、所蔵品の展示をそのままに保存し、何ひとつ外部に貸し出さないことが条件だった。おかげで訪問者は19世紀の彼の生前のままの状態でイタリアやフランスの絵画などを鑑賞できるのだ。

オーマル公は自身のコレクションを収めたシャトー内の一連の部屋をコンデ美術館と呼んでいた。ここまで来て見逃したら惜しいのはラファエロの3点である。その中でもっとも有名なのはサンチュラリオという部屋に展示されている小さな『三美神』だろうか。画家の初期の作品でとても人気者なので、大勢が常に囲むようにして鑑賞している。同じ部屋にはラファエロの『オルレアンの聖母』も。長いこと19世紀に制作された複製と見なされていたのだが、1970年代にオリジナルであることが判明したというエピソードがある作品だ。3点目の『ロレットの聖母』は絵画のギャラリー奥のロトンドで鑑賞できる。オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームのガストロノミーレストランのラ・ターブル・デュ・コネターブルの壁にはシャトーが持つ絵画の複製が飾られている。ロトンド入り口の左右の壁に、その2点のオリジナルを絵画のギャラリーで見つけるとちょっとうれしい気分になるだろう。

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ラファエロの『三美神』(1504〜05年頃)。photography: Mariko Omura
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ラファエロ作『オルレアンの聖母』(1506〜07年)。photography: Mariko Omura
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左: 写真のように、オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームに複製が飾られているシャンパン(ドン・ペリニョン)が初めて絵画に描かれた作品とされるジャン=フランソワ・ドゥ・トロワの『牡蠣の昼食』(1735年)。オリジナルはシャンティイ城内、絵画のギャラリー内のロトンド入り口の左手の壁に。 右: ロトンド入り口の右手の壁にはニコラ・ランクレ作『ハムの昼食』(1735年)。これもオーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームのレストランに複製が飾られている。photography: Mariko Omura

このほかにもアングル、ボッティチェリ、レオナルド・ダ・ヴィンチ......さすが古典絵画においてルーヴル美術館に次ぐ美術館!と言われるコンデ美術館である。庭も含めて見どころはたくさん。オマール公夫妻の居住区、猿の小さな間などガイド付きツアーに参加することで訪問できる場所もあるのだ。なお3月8日から6月15日までは『ワトーの世界』展が開催される。展示予定の中には先日のロサンゼルスの大火事を免れた作品もあるというから、希少なワトーを見る機会となるだろう。

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ガイドツアーで訪問できる「猿の小間」。1735年にクリストフ・ユエがブルボン公のために描いたブードワールだ。なお猿の大広間は一般見学コースに含まれている。いずれも18世紀に流行った、猿を擬人化した作品で満たされている。photography: Mariko Omura
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オマール公の簡素な寝室。折りたたみ式ベッドの上には、母の王妃マリー=アメリーの肖像画が掲げられている。この部屋もガイドツアー訪問コースで見学できる。photography: Mariko Omura

なおかつてのシャトーの大厩舎は現在、馬の博物館として一般公開されている。オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームからすぐの場所なので、ここから観光を始めるのもいいだろう。「Musée Vivant du Cheval」、つまり"活馬博物館"というのが正式名称。馬のショーが開催されたり、また早朝には博物館の外で馬が草を食みながら日光浴する姿も。さすが馬の町と呼ばれるシャンティイだけある。

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馬の博物館。右手のサン・ドゥニ門をくぐったすぐの右手にあるのがオーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームだ。photography: Mariko Omura

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町歩き、そしてクレーム・シャンティイ作りに挑戦

オーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポームを出て、コネターブル通りを町の中心へと向かって右側に進む。パリの街並みと異なり、並ぶ建物が低層なので空の眺めが気持ち良い。商店が並ぶ中、クレーム・シャンティイを専門とするティールームがあり、ウインドーに「L'Atelier de la Chantilly(ラトリエ・ドゥ・ラ・シャンティイ)」と大きく書かれているのが目に入る。1時間で本場のクレーム・シャンティイの作り方を教わる場所だ。使う材料やホイップのテクニックを学び......自分で作ったクレームをボトルに詰めて持ち帰るという1時間のレッスン(33ユーロ~)。思い出作りに試してみる?

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L'Atelier de la Chantilly(48, rue du Connétable 60500 Chantilly)でボールと泡立て器を持ってクレーム・シャンティイ作りの実践。出来上がりは持ち帰りできる。photography: Mariko Omura

有名なシャンティイ競馬場も見事な緑の眺めを呈し、目を和ませてくれる。馬のファンでなくても、シャンティイという土地名にピンとくるのはふんわり甘いクレーム・ドゥ・シャンティイゆえであり、またシャンティイ・レースゆえでもあるだろう。オーベルジュから徒歩15分くらいの場所には「Musée de la Dentelle de Chantilly(シャンティイ・レース博物館)」(34, rue d'Aumale, 60500 Chantilly)がある。レンガのくすんだオレンジ色が魅力の瀟洒な19世紀建築の建物だ。17世紀末にこの街でレースの製造が始まり、王侯貴族たちにその繊細さがもてはやされた。19世紀前半に最盛期を迎えたシャンティイのレース。ナポレオン3世の妃ウージェニーに愛されたものの、19世紀末は機械化の波に押されて手作りレースは衰退し......現在はフランス北部でシャンティイ・レースは機械生産されている。博物館では皇妃が所有したショールを含め、18〜19世紀のドレスや扇などの展示に加え、当時使われていたボビンレースの織り機も見ることができる。

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シャンティイ・レース博物館では2月23日までフィフィ・シャシュニル展を開催している。photography: Mariko Omura

3月末から11月頭にかけてのシャンティ観光の楽しみのひとつは、「Potager des Princes(ポタジェ・デ・プランス)」だ。かつて大コンデ公の庭師だったイヴ・ビアンエメがクリエイトした庭園で"傑出した庭"のひとつとして登録されている。英国庭園、菜園、エキゾチックな庭園、日本の庭園......一角には世界複数国の鶏たち、鳩の小屋も。さてシャンティから約10km離れたところには、美しい中世都市のサンリスがある。パリからはダイレクトな一般交通機関がなくサンリスは訪問するのがとても不便な場所なのだ。シャンティイからは車で15分、バスで30分強。シャンティイに行ったら、思い切ってサンリスまで足を伸ばしてみたらどうだろうか。

Auberge du Jeu de Paume
4, rue du Connétable 60500 Chantilly
https://aubergedujeudepaumechantilly.fr/

 【関連記事】
クリームとお城と馬の街、シャンティイ。お宿はオーベルジュ・デュ・ジュ・ドゥ・ポーム。

editing: Mariko Omura

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