出生率の急降下が進むフランスで、子育て支援の新提案が続々!
Paris 2026.03.24
政府が若者にお手紙?
少子化問題に直面するフランスの方策とは。

「ベビー・クラッシュ」(チャレンジ誌)、「子どものいないフランス?」(ヌーヴェル・オプス誌)、「ベビー・ブルース」(ル・ポワン誌)、いくつもの週刊誌が少子化を取り上げて特集を組んだ。
「出生数が死者数を下回った」――1月13日、国立統計経済研究所(INSEE)が毎年恒例の人口統計を発表したところ、その衝撃のリポートにメディアが一斉に反応した。なにしろフランスにおける人口減少は第2次世界大戦が終結した1945年以来のこと。「ベビー・クラッシュ」「子どものいないフランス?」などの文字が雑誌の表紙に登場することになった。

INSEEが1月13日に発表した2025年の人口統計リポートでは、わかりやすい図式で鍵となる数字が示された。出生はベビーカー、死者数は棺で表している。女性1人あたりの子どもの数は1917年以来最も低い1.56人。出生数が減り、死者数が増えている。
フランスの出生率はヨーロッパの隣国に比べても高く、日本でも少子化対策が語られる際には、フランスの社会制度がお手本として取り上げられてきた。ところがこの10年で、女性1人あたりの子どもの数は1.96人から1.56人へと急降下。進行する少子化傾向について、マクロン大統領はすでに2年前の年頭スピーチで触れており、少子化と闘う「人口の再軍備」計画を表明している。それを受けて発足した国民議会の調査委員会はようやく今年になって報告書を発表。子どもを望むカップルの障壁を分析するとともに、37に及ぶ提案が示された。
なかでも脚光を浴びた提案は3つ。子どもの誕生から幼稚園入学まで、1年間は給与と同額、その後段階的に減額しつつも育児休暇中の収入を保障する新しい育児休暇制度と、父親の産後育児休暇の取得義務をこれまでの2倍の15日間に延長すること。この10年で若いカップルの住宅が25㎡狭くなったことから、5歳までの子ども1人につき10万ユーロまでの住宅購入や拡張資金を無利子とする貸付制度。第1子を含め、子ども1人につき毎月250ユーロを20歳まで支給する新助成金。これまで手厚いといわれてきた子育て支援関連の援助をさらに充実させる提案が並んだ。

ニュース専門局LCIの「24h Pujadas, lʼInfo en Questions」では、連帯・保健省の対策を紹介。AIに作成させた"政府の手紙"の予想版を使って解説。
これに先駆けた2月5日には、連帯・保健省も16の対策を発表している。こちらの話題は「政府から29歳の国民へのお手紙」作戦だ。同省によれば、レターは個人の選択を尊重するために避妊関連の情報も記した上で、「知っていれば産んだのに」を避けるための策だという。精子や卵子の凍結保存が医学上の条件なしに行えるようになる29歳の男女に向けて、生殖補助医療についての情報を伝える手紙というわけだ。
一方で、1月に国鉄が発表した"No Kids"車両が論議を呼んでいる。パリ―リヨン間のTGV(高速鉄道)で12歳以下お断りのビジネスクラスが登場したのだ。レストランやホテルですでに始まっている"No Kids"空間の波が公共の列車に及んだことが、少子化社会への懸念と相まって問題視されている。「いくら助成金を増やし、生殖補助医療の情報を与えても、子どもを排除する社会に子どもは生まれない」、そんな意見が聞こえてくる。政府主導の少子化対策ははたしてグラフの曲線の向きを変えることができるのだろうか。
2017年より「フィガロジャポン」のパリ支局長。腸閉塞の激痛に見舞われ、誕生日を救急病棟で過ごした2月。フランスの救急医療のカオスに満ちた現場を身をもって体験。
*「フィガロジャポン」2026年5月号より抜粋
●1ユーロ=約184円(2026年3月現在)
text: Masae Takata(Paris Office)






