「日本の出生率が落ちたのは女性のせいなのか?」フランスメディアの報道とは。

Society & Business 2023.03.30

日本の人口が超高齢化に突き進むのをなんとか食い止めようとするなかで、出生率が落ちたのは女性のせいだという声がある。これに対し、日本の女性たちはSNSで反論している。

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日本の出生数は2022年に80万人を切った。photography: Getty Images

昨年、日本の出生数は80万人を切った。「1899年に統計を取りはじめてから初の事態」と、日本に20年以上住んでいるフランス人ジャーナリストの西村カリンは今年の1月末に掲載された仏版「マダムフィガロ」誌の記事で語った。それにしてもどうして? 実のところこれには多くの要因がからんでいる。そのひとつとして「いまの経済状況や労働環境で子どもをつくりたいと思う人が少ない」と西村カリンは指摘する。「それに保育園が足りないのもマイナス要因」とも。

こうした状況にあって、少子化対策は日本の重要課題のひとつとなっている。2023年1月、日本の岸田首相は、日本の「社会機能」を脅かす少子化に警鐘を鳴らした。以来、マスコミもこの問題を取りあげるようになった。その中で、「日本の50歳女性はOECD加盟国の中で無子率が最も高い」ことを紹介した記事がネットユーザーの怒りを買い、「#生涯子供なし」のハッシュタグをつけたコメントがネット上にあふれた。女性たちは、少子化問題について自分たちの意見を言う場がほとんどなく、しかも女性が原因のように言われることに対してSNSで声を上げるようになったのだ。

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自分の生き方を肯定する

47歳の作家、オカダトモコさんは最初、子どものいない女性を批判するお定まりのコメントが多いのではと読むのを避けていたが、共感できる多様な意見が書かれているのを知って喜んだ。なぜ母親になれないのか、あるいはならないのかの理由を説明する人もいた。オカダさんはAFPに対し、「以前は子どもを産むことが『当たり前』だと思っていました」と語る。

過去にはパートナーを見つけるために出会い系サイトに登録したこともあったが、うまくいかなかった。父の日に父親から「孫が欲しい」と言われ、後ろめたい気持ちになったこともある。しかし、自分の経験を他の人と共有することで、「自分の生き方を肯定できる」ことに気づいたという。

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「女性を責めないで」

出生率は多くの先進国でも低い。しかしながら日本はモナコに次いで世界で2番目に高齢化が進んでおり問題は特に深刻だ。厳しい移民規制があり、労働力不足も深刻化している。首相は子育て世帯への経済的支援、保育の利用しやすさ、育児休暇の充実を約束している。

しかし、女性閣僚が2人しかおらず、衆議院議員の90%以上が男性という現状では、女性の多くが公的な議論からしめ出され、非難されているとさえ感じている。「少子化を女性のせいにしないで」とツイートしたのは、東京在住の38歳女性、アヤコさんだ。子どもはおらず、人生に「さまざまな選択」があっていいことをネットで主張している。彼女の意見では少子化の根本原因は日本の伝統的な役割分担にある。政府が2021年に実施した調査によると、男性のテレワークが増えているにもかかわらず、日本の女性は男性の4倍もの時間を育児や家事に費やしている。

若い世代の親はもっと柔軟になってはいるものの、女性には「完璧な母親」であらねばならないというプレッシャーがまだまだ強い。「子供のために最高の『お弁当』を用意しようと朝から頑張っている女性たちがいる」と西村カリンは仏版「マダムフィガロ」誌に語る。「こうした精神的プレッシャーに加え、日本社会の性差別も女性に重くのしかかる。最近、与党の有力者が、少子化の主原因は女性の晩婚化にあると発言した。その裏には『女性が自由すぎる』という考えがある」とも。

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女性の本音にあふれるSNS

アヤコさんはネット上で意見を堂々と言うが、実生活でこうした話題を口にしても「けむたがられる」と感じている。AFPの取材に名字を伏せることにしたアヤコさんは「女性が意見を言うことに対して非常に批判的な風潮があるように思う」と語った。

ジェンダー学を専門とする明治大学の藤田結子教授によると、SNSは女性が誰はばかることなく、しばしば匿名で政治や社会問題を語ることのできる場だ。もっとも、ワンオペ育児や保育園に落ちたことを訴えるハッシュタグはTwitterでこそ拡散したが、ネットの外ではほとんど影響をもたなかったと教授は言う。

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施策への反応

日本の出生率低下という難問に対し、専門家は複数の要因を指摘しており、そのうちのひとつが強固な家族制度だと言う。日本で婚外子は出生数のたった2.4%で、OECD加盟国のなかで最も低い。日本の経済が停滞したために子どもを作る意欲が失われていると経済要因を指摘する声もある。また、「ベビーシッターもいなければ、夜に子どもを預けるところもほとんどないため、親になると映画館にもコンサートやレストランにも行けず、社会生活に支障をきたす」と西村カリンは指摘する。

これを意識してか、具体的な施策として保育サービスを増やすことが考えられている。これにより、出生率向上が期待されているが、日本総研の藤波匠は「一時的」な効果しかないとみている。それよりも、家庭内の役割分担の改善に加えて、「長期的な経済の安定と賃金の上昇が不可欠」だと言う。

text: Ségolène Forgar avec AFP (madame.lefigaro.fr)

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