150周年を祝うオペラ・ガルニエをバーチャルに体験するふたつの方法。

La Magie Opéra
伝説的な3つのオペラ歌曲を聴きながら。

5月8日からパリ・オペラ座で始まったバーチャル・リアリティ体験ができる25分の「La Magie Opéra（オペラの魔法）」。会場はガルニエ宮内のライブラリー・ミュージアムにて。このチケット（1名39ユーロ）は劇場見学代も含まれているので、体験の前か後に劇場内を見学することができる。しかも、見学者が行列をなすオペラ・ガルニエのチケットコントロールに際して優先入場できるというメリットも付いているのだ。

これはパリ・オペラ座がBlacklight、VIVE Artsと共同制作した、イマーシブで感覚的な音楽の冒険。アバターはオペラ歌手として成功を夢見る若き女性セレステで、参加者はバーチャル・リアリティ・ヘルメットをつけて彼女の後に続いて、オペラの旅へと出かけるのだ（言語セレクションは仏語か英語／12歳以上がのぞましい）。ガルニエ宮の劇場から出発し、海底を長いことくるくると歩いた後、耳を澄ますのはドヴォルザークのオペラ『ルサルカ』からルネ・フレミングが歌う「月に寄せる歌」。哀愁漂うソプラノにうっとり聞き惚れた後に向かうのは、ローマのファルネーゼ宮殿である。この場所にオペラファンならすぐにぴんと来るだろう。ここで歌われるのは、プッチーニの『トスカ』第2幕から「歌に生き、愛に生き」だ。オペラ・ガルニエで2024年に公演のあった際に録音されたマルティナ・セラフィンの歌声が使われている。最後、ビゼーの『カルメン』から「ハバネラ」を歌って、いよいよセレステがオペラ・ガルニエのステージで満場の観客から拍手喝采を浴びることになるのだ。なお、ここで聞くことができるのは2017年にオペラ座で録音されたエリーナ・ガランチャの歌声である。

バーチャル・リアリティ体験会場内、参加者たちはヘルメットをつけてセレステについて時に早足で歩いたりするものの、実際には64平米とさほど広くないスクエアの中での出来事。でも美しい歌声に導かれての幻想的な時空の旅にとても遠くまで行ったような感覚が残る。会場には荷物預け場所が設けられているので手ぶらで体験に集中できる。最初に登場人物何名かの中から参加者はそれぞれコスチュームを選び、その姿でバーチャル・リアリティの中に参加するので、ヘルメットをつけていてもほかの参加者ともぶつかることなく距離を取ることができる。ここで歌われるのはオペラに強くない人でも、どこかで聞いたことのあるという有名な3つのアリア。もし8月31日までにオペラ・ガルニエを訪問する予定があるのなら、ぜひこのLa Magie Opéraのユニークな体験も！

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自宅にいながらオペラ・ガルニエをディテールまでオンライン見学！

3月22日から、360度のバーチャルツアーに参加してオペラ・ガルニエの中を解説付きで訪問できるようになった。実際の訪問と同様にロトンド・デザボネを経由してガルニエ宮へと入って、モザイクが多用された廊下や階段、赤とゴールドの劇場内......バレエの歴史だったりシャルル・ガルニエによる建築についてといった話を交えながらガイドが案内してゆく。画面にクローズアップで映し出されるのは、現場でのフィジカルな訪問での肉眼では見ることのできないディテール。これこそがバーチャルツアーの醍醐味だろう。また公演のリハーサルなどが行われている時は入れない客席や一般公開していない舞台裏のフォワイエ・ドゥ・ラ・ダンスといった場所の訪問もバーチャルにできるのだ。

なお、高画質なので1024✕640ピクセル以上の画面サイズのコンピューターやiPad、スマートフォンが推奨。バーチャルガイドながら予約が日時指定制なのはライブでガイドが案内するからで、終わりにはガイドとの質疑応答も可能なのだ。また終了後48時間は画面上の地図で見たい場所をクリックすることで、自分のリズムで再訪ができる。なお、いまのところガイドはフランス語のみだが、もうじき英語のツアーもスタート。また、この先日本語も含め、より多国語でのツアーが用意されるらしい。

グラン・フォワイエやシャガールの天井といった有名どころはもちろん、マルチェロ作『ピュティア』像や天井、フォワイエ・ドゥ・ラ・ダンスなども、バーチャルツアーで細部に寄ってじっくりと見学できる（※写真はバーチャルツアーではなく、実際の訪問時に撮影したもの）。photography: Mariko Omura