「静かに奏でるような愛」Netflixシリーズ「ソウルメイト」の見どころは?
年齢を重ねるごとに友人や恋人といった、人間関係を作りづらくなると聞く。私はいままでティーンからミドルエイジまで、さまざまな年齢層の女性ファッション雑誌でページを作ってきた。どんな年齢層の媒体でも、定期的に掲載されるのが「友達が欲しい」「どうしたらパートナーができる?」などの、人間関係を渇望する企画。既婚、未婚、子どもの有無に関わらず、人がいちどは立ち止まる事案らしい。「ちょっとしたことを話したい」「将来が不安だから生活をともにできる人が欲しい」。分かる。心の隙間は誰だって埋めたい。この気持ちに年代差はない。
でも埋めるためには時間がかかる。いきなり縮まった距離感は、簡単に崩れてしまうのを私たちは知っている。出会って、連絡先を交換して(今は順序が逆なのかもしれないけれど)、連絡を取り合って、何度か会って。少しずつ、少しずつ、関係が近付いていく。そんなプロセスを辿るようなNetflixシリーズ「ソウルメイト」を観た。
日本、韓国、ドイツ。3カ国を舞台にしたラブストーリー。

物語はふたりの青年による傷心から始まる。大学生でアイスホッケー部に所属する鳴滝 琉(りゅう/磯村勇斗)は、チームメイトの人生を自分が原因で崩壊させてしまったと、罪の意識に苛まれ、幼なじみの東雲澄子(橋本愛)が住む、ドイツ・ベルリンへ向かう。そこで偶然出会ったのは、ボクサーのファン・ヨハン(オク・テギョン/2PM)。ヨハンも琉と同様に心に傷を抱えていた。両親を亡くして、妹と生きていくためにボクシングの試合で八百長をしていたのだ。これがふたりの出会い。時代設定はおそらくいまから10年前で、Instagramが定着して、映画『君の名は。』がヒットしていた。
同じような心持ちや環境といった、シンクロニシティが起きるのは出会いが始まりやすい。昔「彼と偶然を装うために」と偶然をでっち上げて相手の心を掴めといった、極端なアドバイスの企画を作成した記憶がある。そうでもしないと幸せになれない、と女性が結婚シンドロームに脳内が襲われていた時代だった。自分もそうだったけれど、安堵を手にするために、常に焦っていたような気がする。思い返すと、失敗の原因だった。でも誤解しないでほしい。琉とヨハンの偶然は必然だった。
ふたりの関係性は急速に深まらない。まず言葉がうまくつながらない。そして感覚ではなく、物理的に日本と韓国で距離がある。だから少しずつ、かたつむりの歩みのように心を寄せていく。この様子にもどかしさはなく、ただ美しい。
愛のカテゴライズなんてナンセンスかもしれない。
その後、韓国で問題を起こしてしまい、ボクサーとして活躍できなくなったヨハン。彼の心は度重なる事件で、心の傷をえぐられていく。そんなヨハンに琉は日本で住もうと提案をする。一緒にいたい気持ちもあるけれど、あくまでも優先しているのはヨハンの心の回復。同じような経験をしたからこそ、かけられる優しさがヨハンに沁みわたって、同居が始まり、いちどは綻びかけた彼の人生が、また輝いていく。韓国語講師として働き、大学にも通う。日本語もだんだん上達していく。絶望の先には未来があることを、琉とヨハンが示していた。

冒頭で琉がドイツへ向かったことも含めて、一瞬でも環境をガラリと変えるのは傷心の回復、ウェルビーイングの向上に役立つと何人かの研究者が唱えている。そういえば私も10年くらい前に仕事でパワハラと裏切りに出くわしてしまった時は、引っ越しをした。気にしていた副鼻腔炎の手術も受けて、沖縄にも旅行へ出かけた。潤沢な資金があったわけでもないけれど、なんとなく心が呼ばれるほうに動いたら、いまこうして生きている。安い自己啓発本のような一節だけど、行動は自分を変えてくれた経験を物語に重ねていた。
続けて、ふたりの時間は過ぎていく。穏やかに静かに幸せでいるはずだったのに、不測の事態が少しずつ覆いかぶさってくる。まずは結婚して、臨月を迎えた澄子の夫・相沢精一(古舘佑太郎)との死別。琉にとっても友人を亡くす出来事だった。苦しさを乗り越えてきたふたりは澄子に同居を提案して、生まれてきた愛しい命を、大事に3人で家族として育てていく。どうかこのまま時間が経過してくれ……と思うと、琉とヨハンにもうひとつの試練が訪れてしまう。ふたりはどう乗りこえていくのか。

鑑賞を終えて「ソウルメイト」が紛れもないラブストーリーだと、確信した。この世には多種多様の愛と呼ばれるものがあって、特定の人物や物事を慈しむ。日本では恋愛によって生まれる愛、遺伝子を受け継ぐ愛などが一般的だ。でも本作から感じたのは、愛にカテゴライズなんてナンセンスで、愛の形はひとつかもしれないという見解。琉はチームメイトに、両親に、澄子に何よりヨハンに愛されて、愛した。ヨハンもまた受けた愛を継ぐように、澄子が産んだ子どもを血縁がなくても心底愛した。静かに奏でるような愛が「ソウルメイト」には流れていた。そんな愛をこれから観る人にも、感じてほしい。
Netflixシリーズ「ソウルメイト」
世界独占配信中
出演:磯村勇斗、オク・テギョン、橋本愛 、水上恒司、古舘佑太郎、イ・ジェイ、加藤千尋、安田顕、南果歩、三浦友和
監督・脚本:橋爪駿輝
主題歌:STUTS&butaji「Our Hearts ft.アイナ・ジ・エンド」
制作プロダクション:ROBOT
https://www.netflix.com/SoulMate