終わらないダイエット......せめて楽しく! グルメ・ワイン担当編集者が守っている「5つのポイント」とは?
Lifestyle 2025.01.31
フィガロワインクラブ、グルメ、カルチャー担当のカナイです。
取材でおいしいご飯やスウィーツ、新ヴィンテージのワイン、日本酒、ウィスキーにオリジナルのペアリングフードを堪能。試写室やゲネプロに行けば2時間座って前を見つめ、「いい作品」と涙をこぼし。......担当分野を振り返って、ちょっと思うことが。魅力的な取材が多いのはうれしいのですが、仕事でカロリーを摂取する機会は多いのに、消費する割合が少ないのです。
さて、昨年でいちばん増加の凄まじかった、自身の誕生日近辺でもあるゴールデンウィークのスケジュールを振り返ってみましょう。
金曜日にカリフォルニアワイン協会ディナー⇨翌週月曜に朝からワインの輸入業者の試飲会、昼にイタリアワインセミナー、夜はシャンパーニュの立食イベント取材⇨翌日キャビアの試食会⇨誕生日、週末にどんちゃん騒ぎ⇨翌週月曜、レストラン撮影&試食⇨翌日友人のレストランオープンパーティ⇨ゴールデンウィーク突入、昼飲みの日々⇨翌週北海道取材でワイナリー訪問。回転寿司、セコマ(道民御用達のローカルコンビニ)でホットシェフと「やきそば弁当」(道民御用達のスープ付きカップ焼きそば)......。
体重増加に服の締め付けで気付き、慌ててダイエット→ちょい痩せ→安心 and 飽きる→リバウンド......を繰り返してきた私。そんな中、あるYouTubeチャンネルを見かけたことでダイエットの考え方を抜本的に見直すことに。昨年11月に北海道取材で食べまくって77kgまで増量しましたが、正月太りを挟んでも現在72.5kgまで減量、まだまだ減少傾向で「これなら誰でも諦めないで続く!」という5つのポイントが見えてきたのでご報告がてら、やっていることを共有したいと思います。「なかなかダイエットが続かない」とお悩みの皆さまと一緒に、グルメ・ワイン担当から、辛い現実をちょっとでも楽にできるように、と祈りを込めて。
なおこの後、編集者のひとり語りが長尺で続きます。「5つのポイント」だけご覧になりたい方は、下記のリンクをご参照くださいませ。
脂肪という名の服を着て by安野モヨコ
編集者カナイ、男性、今年で32歳です。......高校生の頃からフツーに社会人に間違われており、いまも実年齢より10歳は上に見られます。平成生まれ、小学生の時に初めて小遣いで買ったCDはポルノグラフィティの「アゲハ蝶」です、信じてください。
高校時代は運動部、どれだけ食べても体重が増えなかった日常が仇になりました。大学時代に酒を覚えると、新宿界隈のバーに入り浸るように。文学部で戦後日本文学なんか専攻していたおかげで「退廃的に朝まで飲むのが最高にカッコいい」と思っていたのです。ここでシメのラーメンの味を覚えます。
その後、なんの巡り合わせか飲食の道へ。朝から晩まで働く中でコンビニ弁当の利便性と丼モノのおいしさにびっくりしたり、深夜までやっている赤坂・六本木の中華、ラーメン屋のお世話になる日々。ストレスは全て食欲とアルコールへ。
その後、心身ともにいろいろあって退職、2ヶ月ほど社会活動をお休みし、Pen編集部のバイト→Pen編集者→フィガロ編集部所属となるのですが、いちど食べる癖がついてしまうとなかなか戻すことができません。男性誌にいた独身時代は「手軽に」「すばやく」「味付けが濃い」の煩悩でカップ麺とコンビニ弁当が主食に。......グルメ担当とは? 夜は「情報収集」と称してゴールデン街に繰り出し、映画や文学、アニメーションの話で大盛り上がり、その後締めのラーメン食べて帰る日々。25歳から31歳までの6年で68kg→2024年6月、MAX79.8kgまで突き進んだのでした。
+12kgって......怖ッ。
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「睡眠時無呼吸症候群」と「悲しい別れ」。
とはいえ、別に丸っこいフォルムが嫌いではないのです。そもそも大学の卒論にコピーライターで芥川賞作家の開高健を選んだがためにこの業界に入ったようなものですし。
デヴィッド・スーシェが長年演じていたドラマ版のポワロさんも。
『紅の豚』、ポルコ・ロッソなんか渋さもあって最高じゃないですか。
丸い体型に落ち着きや愛嬌、優しさみたいなものがフォルムから滲み出るというか、得難い個性とオーラがあるのは真実だと思います。"Be yourself, no matter what they say"ってスティングも歌ってるし、ありのままでいいんです。
......と思う自分がいる一方で、問題がふたつ。
ひとつは「睡眠時無呼吸症候群」。寝ている際、筋肉が緩んで舌根が喉に落ち込んでしまうことで気道が塞がり、呼吸できない時間があるという症状です。全く自覚はなく、パートナーから指摘されて初めて分かったのですが、検査入院を経て症状が確定。首周りに脂肪がついてしまったことで気道が狭くなり、飲酒するとさらに気道が収縮するので、無呼吸と同時に「いびき」も併発。就寝時、下顎を前に固定するマウスピースの着用で若干の改善はあるものの、主治医から「気になるなら痩せたほうがいいよね」とバッサリ。
もうひとつは服のサイズ問題。学生時代からクラシカルな服が好きでメイド・トゥ・メジャーでスーツを仕立てたり、シルエットが気に入ればウィメンズのパンツとか履いてたりもしたのですが、もちろんすべて入らなくなりました。色落ちも風合いもいい感じになってきたのに、太ったという理由だけで履けなくなったジーンズたちを畳んでいると、情けなさに涙が出てきます。
コロナ禍でリラックス系やジャージー素材、ファストファッションに包まれてしまったのも、自分のサイズ感を認識できなくなった一因に。趣味の古着屋通いを再開すると、素材感や肩幅、袖丈はめちゃくちゃいいのに「ボタン、閉まらないや☆」で諦めるという悲しい出合いと別れに何度も遭遇。
何度も言いますが、丸っこいフォルムも結構気に入っているのです。しかし、ボタンに引っ張られて服にパツパツな張りやシワが出たり、風呂場で締まりのないカラダを見るにつけ「テンションが下がる」ことが頻発。マインドだけは痩せていた頃のままなのに、カラダが心を追い越して肥大化してしまったのです。「まあ、お酒も飲むしグルメ担当だし」と自分を慰めていたのですが、周囲のワインジャーナリストたちは自分よりキャリアも長いはずなのにスリムな方がほとんど。もはや言い訳もできない状況に。
夜中の自分の呼吸さえ思い通りにいかないこんな世の中で、せめて心とカラダだけは気持ちよくいたい。私は痩せることに決めました。
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1.「摂取カロリー<消費カロリー」が原則。
AIの発達は恐ろしいもので、「痩せたいな」と思い始めると、webブラウザの広告やインスタのおすすめに、ダイエット系インフルエンサーやパーソナルトレーナーの動画があふれ始めました。気になる筋トレや食事方法はすぐ「お気に入り」登録、やってみるとすぐ1〜2kg減り、「めっちゃいいじゃん!」とテンションが上がります......が、気付けば体重は元通り、熱も冷めてしまいます。「水を1日4ℓ飲もう」「毎朝、脚パカ体操やろう」の誓いはどこへやら。
そんな中、YouTubeのショート動画からあるパーソナルトレーナーを発見します。
「ダイエット中のしゃべるキウイ」こと、パーソナルトレーナーの片倉岳人さんの「片倉岳人/ダイエットの知恵袋」。質問への応答や爆食いした後のリカバリー方法など、おもしろい情報満載なのでぜひご覧いただきたいのですが、特に響いたポイントが「ダイエットのために生きてるんじゃないでしょ?」というコメント。
・SNSで発信してるダイエット方法、ちゃんとやれば速攻で痩せられるかもしれません。
→早く痩せたら絶対、ほぼ100%リバウンドします。だって体脂肪が減ってるんじゃなくて、筋肉が落ちてるか、溜まってた水分か排泄物が身体から出て行ってるだけだから。
→他人のSNSのダイエットアカウントなんて、もしかしたら100%嘘かもしれないですよ。
→「痩せたい」とは思うけど、「ダイエットのために生きてる」わけじゃないですよね?
→でもダイエットって、一生続きます。それをどう楽しく「習慣化するか」。
考えてみれば当然のことなんですが、プロの視点、目から鱗でした。私は一時期取り憑かれたようにフォローしまくっていたダイエットアカウントたちにそっと別れを告げ、自分に向き合う時間を増やすことに。
究極の基本は、1日の「摂取カロリー」が「消費カロリー」を超えないこと。稼ぐ金額よりも使う金額が多ければ預金残高が減っていくように、食事量を適度に抑え、摂取カロリーを消費カロリー以下に収めていくことがダイエットのいちばんの近道なのです。人間、基礎代謝があるので、生きているだけで勝手にカロリーを使います。(→自分の基礎代謝を知りたい方はこちらのサイトをご活用ください)。極論、カロリーコントロールさえできれば勝手に痩せていくのです。
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「食べたものを記録する」だけ。
「それができれば苦労しないんだよ!」。わかります。つい食べちゃう、人間だもの。それを防ぐために有効なのが、摂取カロリーを認識するために食事の内容を記録し、1日の摂取カロリーを計算する「レコーディングダイエット」。古くは岡田斗司夫『いつまでもデブと思うなよ』(2007年、新潮社刊)など、成功例も数多い方法です。が、「ノートにわざわざつけるのめんどくさそうだな......」と遠くから眺めていた私。そんな中、革新的なデバイスが登場しました。そう、iPhoneです。......いつの話だ。
というか、この手のブログではだいたい紹介されてますが、記録用のアプリ「あすけん」を活用するのがとんでもなく楽です。具体的な商品名を入力すればカロリーや栄養分がすぐ表示され、コンビニの商品なんかだとバーコードを読み取るだけでOK。自分で計算しなくていいので、隙間時間に入力するだけで1日の大体の目標摂取カロリーが目に見えます。自分の基礎代謝や、目標摂取カロリーもすぐに計算してくれるなどいいこと尽くし。やってみると、思っていたより食べてもいいことにまず安心。そしてラーメンのカロリーに改めて驚愕。「脂質とりすぎかしら」「あ、今日食べ過ぎだから明日は節制しようかな」ができるようになるだけで、意識がだいぶ変わってきます。
ついでに体重も入力しておけば、「この時期入稿忙しかったし、体重増え気味だな」など、変化の過程を振り返る時にめちゃくちゃ便利です。目標体重を設定すると、身体に大きな負担なく痩せられるスケジュールもアプリが提案してくれます。
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とりあえず10,000歩、歩こう。
基礎代謝以外に、もちろん運動も必要。「ジムに通うのが最も効率的!」「水泳とかどうでしょう?」という声も聞こえます。とはいえ最近、オンライン英会話もサボりがちな自分、新しいことにチャレンジするのにはもう少しエネルギーが必要そうです。
そんな中、先ほどの片倉さんの動画から教わったTIPSが「1日10,000歩生活」。人間、1時間歩くと大体8,000〜10,000歩となるそうです。最も単純な運動「歩行」。身長、体重によって消費カロリーは変わりますが「立って」「どこかに行く」という超単純作業でカロリーが消費できるのですからお得です。最近、できるだけ10,000歩を達成すべく、急いでいない時は自宅から特急が停まる下北沢駅まで2駅分歩く、移動は階段、トイレは下の階を利用するというルールにしてみることに。
毎日することはスマホの歩数計アプリを確認してみるだけ。「何もしなかった日曜日」が「15,000歩も歩けた日曜日」に変わると、それだけで自己肯定感が上がります。
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数字の乱高下に気分を振り回されない合言葉、「体重は季節の変わり目と一緒」。
どれだけ頑張っても、体重は乱高下します。「あんまり食べてないのに体重増えた!」がいちばんキツいですよね。これでダイエット諦める人、多いのでは? 正直、私もそうでした。
でも人間だもの。会食で食べなきゃいけない日もあれば、つい頂き物のお菓子を摘んでしまうことも。せっかく旅行に行ったら、おいしいものを食べなきゃもったいないです。
こちらも片倉さんの言葉より、「体重は季節の変わり目と一緒」。春になったからといって急に暖かくなるわけでもなく、めちゃくちゃ寒い日と微妙にあったかい日を乱高下しながら、徐々にその季節に合った温度へと変わっていきます。体重なんてあくまで目安。平均で見た時に、前よりも下がっていればそれで良いのです。
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サボってもいいんです。
先ほども書いた通り、ダイエットのために人生を送ってるわけではないのです。たまには飲んで、食べて、歌い、騒ぎます。取材で北海道に行ったら、回転寿司も食べますしジンギスカンもザンギも食べます。「あ、自分、ダイエット中なんで」と飲み会のお誘いを全部断るのもストイックな方法だとは思いますが、人間関係苦労しそうです。
「摂取カロリー<消費カロリー」は何も1日だけのことではなく、毎日毎日の積み重ね。お酒飲んで楽しかった日、わざわざ帰りの電車で「あれ食べたな、これ食べたな、ハイボールは何杯飲んで......」とスマホに打ち込んでたら、晴れやかな気分も台無しに。次の日起きて、「昨日は食べすぎたな! ちょっと今日は控えめにしとこうかな」でいいのです。連日宴会が続いたなら、次の週にバランスを取っていけばいい。
毎日「結果発表!!!」だと思うと体重計に乗るのもキツいですが、あくまで中間報告だと思えば、あまり怖くなくなります。明日の自分に期待、でいいのです。
数字だけの話をすれば、「約80kgから、半年かけて7kg落として72.5kg」になった私。とは言え、その間に超絶なる乱高下とサボり期、ガチ期、停滞期を経て、やっと辿り着いたのがいまの境地です。とはいえ、正月に食っちゃ寝したりで、まだまだ当分、目標体重68kgまでは辿り着けそうもありません。よかったのは、数字に振り回されないメンタルを手に入れられたこと。大学時代の後輩の結婚式が11月にあるので、その頃までにはもう少し痩せてるといいな、と思っている次第です。
文豪ゲーテがいいこと言ってます。「急がずに、だが休まずに」。みなさんもぜひ、明日の自分に期待して、終わらないダイエットに向き合ってみませんか?
フィガロJPカルチャー/グルメ担当、フィガロワインクラブ担当編集者。大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、文化とグルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。2023年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。
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