秋の夜長に読みたい、編集部カルチャー班のおすすめ本!
Culture 2024.11.02
長かった残暑もようやく終わり、季節は秋へ。涼しい夜長に読みたい本をカルチャー班の編集者3人がピックアップしてお届け!この秋に読みたい1冊を探してみて。
エディターYOSUKE KANAIの読みたい3冊。
(左奥から時計回りに)
・大越基裕の『ロジカルペアリング レストランのためのドリンクペアリング講座』
・京極夏彦の『鵼の碑』
・安野モヨコの『還暦不行届』
いつもセミナーなどでお世話になるソムリエ・大越さんの考え方がわかりやすく解説された一冊。自然派ワインや焼酎に関してのペアリングが載っているのもうれしい限り。イベント前にはいつも参考にさせてもらっています。先日、余市取材の途中で買った個性派ワインを並べて、いまから何を合わせるか考え中。。。
中学生の頃から読み続けている京極先生の百鬼夜行シリーズ最新作。もう続編出ないんだろうな......と思ってました、ごめんなさい!! また京極堂、関口先生、木場刑事、榎木津探偵に会える幸福。読めば読むほど、日常では全く役に立たないけど、全国の神社仏閣に行った時に「あっっ!!!」と思い出すことが増えていく、そんな知的好奇心をくすぐってくれるレンガのような厚さの本。電車の中でこの厚い本を読んでいるのが最高にカッコいいと思っていた学生時代のように、カバンに入れて通勤します。
庵野監督作品に心酔してオタクとして生きることを確信し、モヨコ先生の『働きマン』を読んだことがマスコミ業界に進むきっかけになった自分は、おふたりの「チルドレン」だと確信しています。前作の漫画版『監督不行届』を読んだのは多分高校生の頃だったけど、あれから10年以上、続編となるエッセイを読んでしみじみ感動してるのは、私自身も結婚したから? モヨコ先生の優しく、日々に美点を見つけるまなざしに心打たれます。
---fadeinpager---
エディターRINAKO FUKUSHIMAが読みたい3冊。
(左奥から時計回りに)
・『文字と絵の小宇宙 国立西洋美術館所蔵 内藤コレクション写本リーフ作品選』
・シルヴィア・プラスの『ベル・ジャー』
・尹東柱(ユン・ドンジュ)の『空と風と星と詩』
今年の夏、国立西洋美術館で開催されていた「内藤コレクション写本 -- いとも優雅なる中世の小宇宙」の図録。印刷技術のなかった時代に、羊や子羊など動物の皮を薄くした紙の上に職人たちが一言ずつ書いていた写本。聖書や詩集として使用されたこの写本を愛し、数多くの作品を収集した内藤裕史氏のコレクションが展示され、それをまとめた1冊だ。
私は、アルファベトのフォントを眺めるのが好きで、学生時代にタイポグラフィーやカリグラフィーの授業を受けたり......とにかくフォントを見るとなぜか幸せな気持ちになる。
写本は、はじめて京都の丹というお店で初めてみて、今回の展示が行われるのを心待ちにしていた。いつか私も内藤氏のようにパリの古本屋で本物の写本をゲットしたい。
写真の帯にも書いてある通り、私がこの本を知ったのは川上未映子さんのInstagram。川上さんが大絶賛される本は絶対に読みたい!と思い、あらすじを読まずに手に取った。主人公エスターは、優秀な大学生。ニューヨークでインターンをしながら、作家として成功する日を待ち侘びていた。しかし、あることから自分の才能が決して特別なものではないことを知る。作品の終盤には精神を崩壊し、自分を失い、世の中の欺瞞と対峙するエスターをみると、私自身が過去に感じたような体験であり、現在抱えている問題とも重なる。主人公のエスターに共感を覚え、癒されるような作品だった。
先日から放送がスタートした、韓国ドラマ『愛のあとにくるもの』。坂口健太郎演じる潤吾とイ・セヨン演じるホンの過去と現在の恋愛を描くドラマに夢中♡ 過去と現在を行き来するこのドラマには、韓国の詩人、ユン・ドンジュの詩碑が出てくる。第二次世界大戦中に立教大学や同志社大学で留学経験もある彼の末路は、壮絶だったと言われている。そんなユン・ドンジュが綴った詩をまとめた詩集から、当時の韓国からの留学生がどんなことを感じていたのかが読み取れる。KPOPやKドラマで日本のみならず世界的に多くの人が関心を寄せる韓国。韓国の成り立ちは日本の存在が欠かせないものであり、私たちも知っておくべきことも多い。潤吾とホンの恋模様を楽しみながら、ユン・ドンジュの詩集を通して彼の人生にも触れてみては?
---fadeinpager---
エディターNANANA SATOが読みたい3冊。
(左奥から時計回りに)
・角田光代の『恋するように旅をして』
・江國香織の『読んでばっか』
・江口寿史の『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション』
『恋するように旅をして』
まとまった時間ができると、予定も立てず、かばんひとつで、未知なる国に旅に出る。それが、24才で無計画に旅に出たのをきっかけに続けている角田光代の旅のルールだ。見知らぬ土地を自分の足で歩き、見て、人と出会って、感じながら、自分だけの世界地図を作り続けている。そんな角田さんのフォトエッセイはとにかく描写がリアルで、まるでその場に居合わせたような気分になる。
その国の人はどんな生活をして、どんな表情を浮かべているのか? "自分の足と目で、確かめに行くことに意味がある"と教えてくれた一冊です。散歩しに行くかのようにふらっと旅に出る、角田さんの生き様がカッコいい。
『読んでばっか』
江國さんの本に出合ったのは恋愛もしたことがない高校生の頃。そこから、独特な江國ワールドに病みつきになっていきました。この本は今年出たばかりの本にまつわるエッセイ集。小説、童話、エッセイ、詩など60冊以上の本が出てくるので、"この秋、何を読もうかな?"と探している人におすすめです。
私は次の一節から始まる、文豪・佐藤春夫が詠んだ「秋刀魚の歌」が印象に残りました。『あはれ 秋風よ 情あらば伝へてよ 男ありて 今日の夕食に ひとり さんまを食ひて 思ひにふける と。』
歌の背景には、佐藤春夫が谷崎潤一郎の妻を好きになり、谷崎が妻を譲ると約束したにも関わらず、破ったため絶縁になったという事件が。(その後、本当に妻を譲ってしまう⋯⋯)秋刀魚の歌が書かれたのは、妻が譲られる前。好きな女と子どもとさんまを食べている生活感、その束の間の幸せが現実にはならない哀しさがひしひしと伝わってくる秀逸な詩です。
江國さんの本の中で、"自分の感情に真っ直ぐに人を愛する" 情熱的な人たちを数多く見てきましたが、江國さんが選ぶ文豪も、負けじと愛に生きているな〜!と嬉しくなりました。
『ストップ!!ひばりくん! コンプリート・エディション』(全3巻)
『週刊少年ジャンプ』で1981年に連載していた、漫画家兼イラストレーター江口寿史の代表作『ストップ!!ひばりくん!』。
母との死別をきっかけに、ヤクザの関東大空組に世話になることになった高校生の坂本耕作。美少女の大空ひばりを含めた4姉妹と一緒に暮らすことになり、喜んだのも束の間。実はひばりは男だった⋯⋯。だが、家の外ではひばりが男であることは秘密、というロマンスを秘めたギャグ漫画。
ひばりは容姿端麗、運動神経抜群、頭脳明晰なスーパーガールで、その才能に出会う人がたちまち虜に。ここぞ、という時にはヤクザも慄くほど喧嘩が強くて、見ていて爽快! コロコロと表情を変えるひばりくんに、夢中になってしまいます。