創設から1年。フランス国内、海外で踊るパリ・オペラ座ジュニア・バレエ団。

昨年パリ・オペラ座に生まれた、シャネルが創設メセナを務めるジュニア・バレエ団。初年度の団員18名は5月27~28日のアテネ公演を皮切りにフランスと海外の9カ所で公演を行い、8月にスペインで開催されるフェスティバルに参加してシーズン2024~25年を終える。来シーズン2025~26年はなんとツアーがマレーシアからスタートし、ドイツ、スイス、スペインと海外は4カ国合計6都市で。そしてフランス国内では19都市での公演が予定されている。

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ジュニア・バレエの18名とパリ・オペラ座バレエ団芸術監督ジョゼ・マルティネス。photography: Julien Benhamou / OnP

彼らのツアーのプログラムを構成するのは、10名が踊るジョージ・バランシンの『Allégro Brillante』、8名のダンサーによるモーリス・ベジャールの『Cantate 51』、アナベル・ロペス=オチョアが12名に創作した『Requiem for a Rose』、そして18名全員が踊るジョゼ・マルティネスの『Mi Favorita』の4演目だ。ちなみにこの『Requiem for a Rose』はシーズン2025~26年度開幕ガラでデフィレと『ジゼル』の間に踊られることになっている。ジュニア・バレエ団の団員の一部はオペラ・バスティーユでの『眠れる森の美女』のコール・ド・バレエに参加しているけれど、このガラが全員にとってガルニエ宮でのデビューとなるわけだ。

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ジョージ・バランシン作『Allégro Brillante』

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ダンサーそれぞれが持つ優れたテクニックはパートナーなしで踊る時に発揮されていた。またコール・ド・バレエに契約団員の外部のダンサーが多く含まれていた2023年2〜3月の『Ballet Impérial』の時と同様に、全員揃ってのステージにはスタイルの統一感が欠けていた印象がある。ダイバーシティの課題だろう。photography: Julien Benhamou / OnP

モーリス・ベジャール作『Cantate 51』

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受胎告知をテーマにバッハの音楽、ピュアな歌声に乗せて踊られる作品。配役されたダンサーたちの素晴らしい技術、作品が求める抑制の効いた動き、そして優美さが感動を生み出す。photography: Julien Benhamou / OnP

アナベル・ロペス=オチョア作『Requiem for a Rose』

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『薔薇に捧げるレクイエム』は儚いロマンスと永遠の愛をテーマに創作された。シューベルトの音楽で旋回するように踊る男女12名のコスチュームは薔薇の花弁を思わせるスカート。弾けるような音楽に合わせた動きで舞台に12輪の花を開かせる。唇に薔薇をくわえたひとりの女性がコンテンポラリーな振り付けで踊る際は、鼓動を感じさせるリズムというコントラストも見ものだ。photography: Julien Benhamou / OnP

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早くも世界を股にかけた活動をするジュニア・バレエ団。その創設と同時に早々に発表されたように、6月13〜15日、ヴェルサイユ宮殿ロイヤル・オペラ劇場で公演が開催された。ここはルイ14世がヴェルサイユ宮殿にぜひ!と夢見たものの着手できなかった劇場で、実際に建築されたのはルイ15世統治下の1770年。マリー・アントワネットとルイ16世の成婚記念である。小さな空間ながら天井のフレスコ画はもちろん、その壮麗なゴールドの装飾に目が奪われる素晴らしい劇場だ。コンサートやバレエの公演が定期的に催されているので、ヴェルサイユ宮殿訪問の際に劇場見学を兼ねて行ってみよう。

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左:ヴェルサイユ宮殿ではチャペル、ロイヤル・オペラ座の見学は正門向かって右手の入口Bから。 右:劇場のフォワイエ。photography: Mariko Omura

この劇場では2013年にオペラ座バレエ学校の創立300周年の記念公演が行われ、学校の生徒たちが『D'or et déja』、ピエール・ラコットによる記念創作『Célébration』をリュドミラ・パリエロとマチュー・ガニオが踊っている。パリ・オペラ座バレエ団のほかの団員たちも踊れる機会に恵まれていない劇場、しかもフランスの名所であるヴェルサイユ宮殿での公演ということで心を昂ぶらせた団員もいたのではないだろうか。というのも団員の半分は国籍がイタリア、韓国、アメリカ、ニュージーランド、オーストラリアという外国人。残り半数はパリ・オペラ座バレエ学校出身者で入団試験に受からなかった団員、パリのコンセルヴァトワール出身の団員、パリ・オペラ座の契約団員経験のある団員で、彼らの国籍は必ずしもフランスではない。ツアーにはパリ以外の土地を発見する喜びもあることだろう。このように学んだダンスのスタイルがさまざまな18名である。昨年9月からテクニックの養成を受け、ツアーでその成果を見せているのだ。ちなみにジュニア・バレエ団のバレエ・マスターはベアトリス・マルテルとジャン=クリストフ・ゲリというオペラ座バレエ団の出身者が務めている。

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ロイヤル・オペラ座劇場内。photography: Mariko Omura

公演の締めくくりに踊られるジョゼ・マルティネスが2002年に創作した『ミ・ファヴォリータ』は彼の初の振付作品である。『若きダンサーたち』の公演で踊られ、2003年にパリ・オペラ座のレパートリーに入った際に3カップルのための振り付けだったものが5カップル用に改定された。少し開いたカーテンの下からつま先の動きだけが見えるという『エチュード』を思わせる始まりを含め、オペラ座バレエ団のクラシック作品のレパートリーの多くにオマージュを捧げるテクニックが満載された作品だ。このジュニア・バレエ団の公演では再度アレンジされたのだろう、18名の団員全員が配役されている。アニエス・ルテスチュによるコスチュームも、ステージに華やぎと遊びをプラス。『僕のお気に入り』というタイトルからも察せられるように踊りにはユーモアも含まれていて、17〜23歳の若い団員たちが溌剌と陽気に公演を締めくくるのにぴったりの作品と言えそうだ。

ジョゼ・マルティネス作『Mi Favorita』

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2024年に創設されたジュニアバレエ団の18名全員が踊った『ミ・ファヴォリータ』。この中には6月末から7月頭にかけて行われる2025年度の外部入団試験に受かり、カンパニー入りする団員もいるかもしれない。ジュニア・バレエ団はこの試験による採用で、2025年9月からフルの24名になることが発表されている。photography: Julien Benhamou / OnP

editing: Mariko Omura

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