
齊藤工とシネマバードが、航空機の整備場を「巨大な映画館」に変えた夜。
学生時代に池袋の新文芸座でオールナイト興行のモギリのバイトをしていた、カルチャー担当のYKです。作品としての映画はもちろん、映画館をはじめとした映画文化全般を愛する私。齊藤工さんが2014年から取り組まれている移動映画館「シネマバード」のプロジェクトも、大変興味深く注目していました。そんな折、シネマバードが航空関係者を招いて羽田空港の整備場でシークレットに開催され、取材に出かけました。滑走路からの轟音も新鮮な現場からのレポートをお届けします。
開場前、準備中の様子。スクリーンの後ろは羽田空港の滑走路! 普段は航空機の機体が収められる広大な空間に観客席が設置された。photography:Mirei Sakaki
東日本大震災をきっかけに、「映画館のない土地に映画館を届けたい」という齊藤工さんの思いから始まったシネマバード。災害に見舞われた各地を中心に活動を広げ、コロナ禍の2020年には、安全性を考慮し葛西臨海公園でドライブインシアターとして開催。医療現場で危険と隣り合わせになりながらも、懸命に医療活動に従事している関係者とその家族に癒しを届けるべく無料で彼らを招待するイベントとなりました。今回は、コロナ禍で大きなダメージを受けながらも、インフラを支え続ける航空関係者を招くシークレットなイベントに。会場となったのは、羽田空港に隣接して作られた全日空の整備場! イベント開始時には大きなシャッターが解放されており、スクリーンの背後には巨大な飛行機が鎮座していました。
メンバーと軽妙なトークを繰り広げつつ、ウェルカムライブに表れた齊藤さん。photography:Mirei Sakaki
イベントが開場し観客が席につき始めると、スクリーンの前に齊藤さん率いるバンド「cinéma bird」が登場。イベント開始時間まで、軽妙なトークと優しい歌が集まった観客を癒してくれます。曲の最中にも「ゴオオオ」という轟音とともに、滑走路の離発着の音が。「この音も、この環境ならではですよね。この後シャッターを閉めますが、上映中も響きわたるんじゃないかな(笑)。整備場ならではの映画体験をお楽しみください」と齊藤さん。
ウェルカムライブが終わると、常連メンバーである芸人の永野さんとともに齊藤さんが壇上へ。これまでのシネマバードの歩みを動画とともに振り返りました。そして再びライブ、永野さんのステージへとイベントは進みます。上映時間が迫る中、リハーサルをしていたネタができなくなった永野さん。「持ち時間2分って、何やればいいんだよ!!」とキレながらも、即興でバンドメンバーと「ラッセンが好き」のネタを繰り出す芸人魂、爆笑してしまいました。
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「今回の企画は、コロナ禍でもインフラを支え続けてくれている航空関係者のみなさんのために」と語った齊藤さん。photography:Mirei Sakaki
上映前、再度壇上に上がった齊藤さんは「コロナ禍でも、インフラを支え続けてくれた皆さんのために何かできないかと思っていました」と語ります。ドラマの撮影で整備場を訪れていたこともあり、今回の会場には感慨もひとしおの様子です。
広大な空間には1000人ほどの観客が。photography:Mirei Sakaki
そして静かに上映が始まりました。齊藤さんが企画、脚本を担当し、声優を務めたクレイアニメーション『映画の妖精 フィルとムー』、そしてアカデミー賞受賞作にして齊藤さんも大好きな『コーダ あいのうた』が上映されました。集まった1000人ほどの観客が、一心にスクリーンを見つめる様子には、何とも言えない感動を覚えました。
cínema bird初参加となった大橋トリオ。
上映終了後には、イベント初参加となった大橋トリオの演奏が。整備場の大きな空間で聞く彼らの生演奏……。至高の時間です。
最後に齊藤さんが、「少しでも今日の体験が明日からの活力となることを願っています。そしてシネマバードも、飛行機のように全国へ羽ばたいて行きたい」と仰っていたのが印象的でした。心を震わせる新しい映画体験シネマバード、次回の開催もいまから楽しみです。
https://cinemabird.com/
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