
2019年春夏のパリコレクションを振り返って。
気が早いファッション界では、そろそろ2019年春夏のことを考える時期になってきた。
大きなトレンドがなくなった、と言われて久しいが、大多数が取り上げているからきっといいものなのだろうと信じて選択する、というよりも、自分のスタイルに合うものを好みでピックアップする時代になってきたのか。今後は私がいつも振りかざしている「独断と偏見」を言い合うことが主流になるのか。
ともあれ、このたびは先月見てきたパリコレで個人的にとくに心に残ったことを3つご紹介したい。
まずは、ヴァレンティノのトップを飾ったモデル、クリステン・マクメナミーだ。白髪をなびかせ、ボリュームのあるブラックのロングドレスで颯爽と歩く姿。あの人は誰?! と周囲に聞いてまわったら、1990年代スーパーモデルブームで人気を博し、今年で54歳になる彼女だった。
ドレス自体もダイナミックではあるのだが、若い頃のエキセントリックさがすごみになってきたクリステンが着ると存在感がはんぱない。フレッシュな子だったらもっと色柄装飾、ヘアメイクが必要だったかも。「若作り」とかいった無理は一切しておらず、年を重ねているからこそかっこよく見える。私も襲い来る老いに向けて、そんな装いをめざしたいと思いを新たにした。
2つ目は、「ジェンダーレス」を声高に訴えるブランドが多かったことだ。もはやモード界の定番キーワードになってはいるが、ユニセックスで着られたり、従来男性、女性それぞれの要素とされてきたものを融合したり、トランスジェンダーのモデルを起用したり。メゾン マルジェラでは、男女両方の性的特徴を持つインターセックスであることを昨年公表したハンネ・ギャビーがスーツを着てランウェイを歩き、目を引いた。
男だろうが女だろうがどっちでもなかろうが、かっこいいものはかっこいいのだ。魅力的であろうとして性を強調するのはもうファッションの役目ではなくなってきたのでは。まだ男性がスカートやショーツなど、「女性用」と分類されてきたアイテムを身につけているとどきっとしてしまうが、これもどんどん目が慣れていくのでしょう。
ということで、服というよりも、着る人のことにまず思いを馳せてしまいがちなシーズンではあったが、最後はミーハー精神を発揮してほしいアイテムを発表したい。それは、タトゥーTシャツだ。
7月までパリで行なわれていたマルタン・マルジェラの回顧展で展示されていた1988年のファーストコレクションにも登場していたが、今季、クチュールのスケジュールで一足先に発表されたヴェトモンを皮切りに、いくつかのブランドで見られた。取材で音楽ライターの方にお話を伺った時、以前と大きく変わったのは、ミュージシャンがタトゥーをするようになったことですね、とおっしゃっていたが(それはスポーツマンも同様か)、とにかく、タトゥーは今やファッションの一部。注射でさえ怖い私は無痛タトゥーがあればやってみたいと日々思っていたところだ。マルタン・マルジェラの解説には「マルタンのトロンプルイユへの強い関心が表れている」とあったが、まさにトロンプルイユ!ぜひ皆をだましたいともくろんでいます。
ARCHIVE
MONTHLY