
松涛美術館「セーヴル展」へ
パリスタイルのアンティークシルバーレッスン、昨年は英国ティータイムをテーマにしたものが多かったのですが、今年は「フランス」に変更。
私自身、渡航数が圧倒的にフランスの方が多く、食器も書籍もフランス関連の方が多いため、実は準備がとてもスムーズで、何より楽しい!
フランス=カフェの国のイメージが定着し、お茶に関してはそれほどスポットが当たらないようですが、実はフランスの茶の歴史はイギリスより古く、優雅なルイ王朝の舞台裏で花開いた嗜好品文化には、数限りないエピソードが存在します。
とろこで、ヴェルサイユ宮殿の貴婦人たちのティータイムを語る上で欠かせないのが「セーヴル」の食器。
18世紀、ルイ15世の庇護を受け王立セーブル製陶所として設立された工房ですが、助言は、公妾ポンパドゥール夫人によるものだということは有名な話。
王立の独占産業として保護され、顧客は王侯貴族のみ。現在でもその生産量は制限され、しかも対象は国家レベルの贈呈品等、主にプロトコールの舞台でしか登場しない製品であるため、「幻の磁器」とも言われています。
ウエッジウッド、ジノリ、ロイヤルコペンハーゲン等、他のヨーロッパの国々の代表ブランドとは異なる存在で、圧倒的に格上のイメージがあるのはそのような理由から。
ちょうど、タイムリーにセーブル展が松涛美術館で開催されているため、レッスン準備を兼ねて、期間中に二回鑑賞。一度目は、仕事でご一緒しているフランスのラグジュアリー食器ブランド関係者の方と。そして、自宅で図録を読み込んでから、二回目のソロ鑑賞へ。
映画でもアートでも、関心の深いテーマのものは、先日の台湾故宮同様、数回足を運びたくなります。
特にこちらは、小規模ミュゼなので混雑もなく、隙間時間に気軽に行けてよかったです。
さて、今回のテーマは、「妃たちのオーダーメイド」
当時の絶対的なトレンドセッターといえば、王妃やプリンセス等の宮廷女性。
現代のキャサリン妃ファッションが脚光を浴び、即完売というように、当時でも、宮廷の主役である王妃たちの好みを反映したデザインモチーフの食器やファッションは、周囲の女性たちに多大な影響を与え、流行しました。
この時代は、ファッションや家具同様、基本的に既製品というものは存在せず、受注生産が中心です。
こちらのセーヴル展では、その流行変遷が分かりやく展示されていて、コンパクトながらも見ごたえ十分。
ところで、ルイ王朝でマリーアントワネットと並ぶ、エレガント女性の代表格といえばポンパドゥール夫人。宮廷に出入りできるような階級とはかけ離れた身分でありながらも、並外れた美貌と知性、そして、強烈な野心で、ルイ15世を虜にし実権を掌握。
というより、ルイ13、14世と絶対的カリスマの偉大な王たちに続く三代目。
生まれながらにして将来が約束されたイケメン王のルイ15世、あまにりも恵まれた環境と容姿故か、政治に関心は薄く放蕩にふけていたため、(この時代、ショコラショーは媚薬として大流行しましたが、このトレンドセッターもルイ15世だったとか!)手練手管に長けたポンパドゥール夫人にとっては、助言しやすい王様だったのかもしれませんね。
ただ残念なことに、元々病弱だった夫人は、陰謀渦巻く宮廷での生活で心身共に疲弊し、寝付くことが多かったのですが、ベッドの中でも飲み物がこぼれないよう、こんなカップが作られました。
ソーサーが深く窪んでいて、ソケットスタイルになっています。
又、香水好きだったマリーアントワネットは、バラ、すみれ、ジャスミン、オレンジなどの香を好み、身にまとうだけではなく、アロマテラピーのようにも使っていました。
もちろん、お茶にも香り付けをするのがお好みだったようで、旅行用ティーサービスには、リキュールなどをろ過するための道具もセットされています。
元祖フレーバーティは、19世紀、英国の「アールグレイ」と言われていますが、50年近く前のフランスでは、既に始まっているのですね。
こんな風に、宮廷女性たちでのティータイムに思いを馳せながら鑑賞するのは、この上ない贅沢な時間。
6月8日が終了なのですが、フランスのエレガンス回顧にご関心のある方、是非!
★渋谷区立松涛美術館
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