フィガロが選ぶ、今月の5冊 内面の記憶をたどった、オースター70歳の回想録。
Culture 2017.06.20
『内面からの報告書』
ポール・オースター著 柴田元幸訳 新潮社刊 ¥2,376
アメリカ現代文学を代表する作家も70歳。肉体に刻まれた記憶を語った回想録『冬の日誌』と対になる1冊で、内面の記憶を掘り起こす。6歳の時、内なる声が目覚めた瞬間を覚えている。もの思う自分の始まり。初めて書いた詩。父親がついた嘘。アメリカ人であることとユダヤ人であること。過去の自分に〈君〉と語りかけることで、小説のような読み心地がする。衝撃を受けた2本の映画を語った「脳天に二発」、前妻リディア・ディヴィスに宛てた500通に及ぶラブレターを抜粋して、若き日をたどる「タイムカプセル」、写真で構成する「アルバム」の全4章。
*『フィガロジャポン』2017年6月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI