【注目の書籍4選】文学からエッセイ、フォトエッセイまで幅広く紹介。
Culture 2025.03.19
新しい物語と出会いたいあなたへ。2025年話題作4冊を厳選!
芥川賞作家のデビュー作『カメオ』、黒人女性たちの生き様を描いた短編集『チャーチ・レディの秘密の生活』、そしてロイヤルホスト愛に満ちたエッセイ集『ロイヤルホストで夜まで語りたい』など、今話題の本をピックアップ。さらに、世界的ファッションアイコン・アイリス・アプフェルのフォトエッセイも登場。読書リストに加えたい珠玉の4冊をご紹介。
芥川賞作家のデビュー作、犬小説に新たな名作誕生。
『カメオ』

現場監督をしている高見はクレーマーの亀夫に悩まされていたが、亀夫が急死して遺された飼い犬を預かることになる。頭が大きく馬面で小さな目、奇妙な見た目をしたその犬をカメオと名付け、ペット禁止のマンションで同居生活が始まった。近所の目が気がかりの高見の心配をよそに、カメオはどんどん大きく逞しくなっていく。『バリ山行』で芥川賞を受賞した著者のデビュー作は、爽快なラストまで一気読み必至の犬小説。
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ひとりの娘として、女として、生きることの豊穣さを味わう。
『チャーチ・レディの秘密の生活』

黒人女性が語り手となった9つの短編は、4世代の女たちの抑圧と解放を描き出す。毎週月曜に訪れる愛人の牧師のため、母はピーチ・コブラーを作る。信心深い母に縛られていたライラはエリックと出会い、初めて自分の欲望を受け入れる。敬虔な信仰とセクシャルな感情の狭間で揺れる彼女たちが愛を求め、自分自身を生きるために踏み出す一歩がまぶしい。全米図書賞最終候補になったアフリカ系アメリカ人作家の珠玉のデビュー作。
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ロイホ愛が止まらない、豪華執筆陣のエッセイ集。
『ロイヤルホストで夜まで語りたい』

「幸せってどういうことかというと、例えば体の芯まで冷え切った夜にオレンジ色のロゴが輝くロイヤルホストに駆け込んで、熱々のコスモドリアを食べること」。平野紗季子の冒頭の一編から深く頷かずにはいられない。稲田俊輔、ブレイディみかこ、朝井リョウ、柚木麻子ほか総勢17人の選りすぐりの執筆陣。それぞれのいちばん好きなメニュー、よく行く時間帯、好きな席を読むだけでもう楽しい、ロイホ愛を語り尽くしたアンソロジー。
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最高齢のスタイルアイコン、アイリスが教えてくれたこと。
『フォトエッセイ アイリス・アプフェル 世界一おしゃれな102歳のスタイル』

インテリアデザイナーだったアイリスが一躍注目されたのは84歳の時、メトロポリタン美術館で開催された展覧会がきっかけ。カラフルなファッションに大胆にジュエリーを配した彼女のコレクションは評判を呼び、その人気はドキュメンタリー映画『アイリス・アプフェル! 94歳のニューヨーカー』が製作されたほど。昨年102歳で亡くなるまで自由で冒険心にあふれたスタイルを貫いた彼女のエンパワメントな写真と名言が満載の一冊。
*「フィガロジャポン」2025年4月号より抜粋
text: Harumi Taki