フィガロが選ぶ、今月の5冊 心に沁みる、ドラマ「富士ファミリー」の前日の物語。

Culture 2018.07.13

生と死の間できらめく、富士ファミリーの前日譚。

『さざなみのよる』

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木皿泉著 河出書房新社刊 ¥1,512

木皿泉とは夫婦脚本家のユニット名。本作も、富士山の麓にある小さなコンビニを舞台にしたドラマ「富士ファミリー」の前日譚だ。ドラマでは幽霊として登場する、三姉妹の次女ナスミが43歳で癌で死ぬところから始まる連作短編。突然の急変に呆然とする夫の日出男。人は死んでも、遺された人たちの心の中で生き続ける。よく言われるそのことが、日常の出来事を積み重ねながら描かれていて、胸に沁みる。思い出は寄せては返すさざ波のようにそれぞれのいまを揺らし、背中を押す。生まれて生きて死んでいく、当たり前で偉大な営みが浮かび上がる。

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*「フィガロジャポン」2018年7月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

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