カンヌの公式作品セレクションで存在感を増した女性監督。

Culture 2020.06.07

コロナ禍で中止となった2020年のカンヌ国際映画祭は、6月3日に56本のオフィシャルセレクション作品を発表。女性監督による作品が4分の1以上を占めた。

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カンヌ国際映画祭のレッドカーペットでフラッシュを浴びる、マイウェン(左)とニコール・ガルシア(右)。(フランス・カンヌ、2017年5月23日)photo:Abaca

2020年のカンヌ国際映画祭は開催されなかった。少なくとも通常の形では――。新型コロナウイルス感染症の大流行を理由にキャンセルされ映画祭は、バーチャルな形で存続する。6月3日、映画祭ディレクターのティエリー・フレモーと映画祭プレジデントのピエール・レスキュールは、オフィシャルセレクション作品を発表。このセレクション作品には「カンヌ2020」レーベルが与えられ、映画館での封切りや、他の映画祭に参加する際に支援が差し伸べられるという。

選出された56本の映画のうち、女性監督による作品は16本。昨年に比べて2本増えた。監督自身のアルジェリアとフランスのルーツを探るマイウェンの『DNA』。レバノン系フランス人ダニエル・アルビッド監督は、レティシア・ドッシュを起用し、アニー・エルノーの小説『シンプルな情熱』を映画化した。マリー=カスティーユ・マンシオン=シャールの『A Good Man』は、ノエミ・メルランとSokoの出演で、家族を築こうと夢見るカップルを描く。現代のエジプト人女性たちの日常を描いたアイテン・アミン監督の『Souad』。キャロリーヌ・ヴィニャル監督、ロール・カラミー出演の『Antoinette dans les Cévennes』。そしてこちらも常連、河瀨直美監督の『朝が来る』も忘れてはならない。

女性たちの物語。

いっぽう、15本を数える監督初作品にも注目したい。サンドリーヌ・キベルランとヴァンサン・ランドンの娘のシュザンヌ・ランドンは弱冠20歳で、オフィシャルセレクション中最年少。デビュー作の『16 Printemps』は、ティエリー・フレモーによれば、「若い女性の映画」だという。シャルレーヌ・ファヴィエは『Slalom』で、女性アスリートに対する男性トレーナーの支配を描いた。スウェーデンのニニャ・ティバリの『Pleasure』は、ポルノ映画業界に身を投じる若い女性の物語だ。ドキュメンタリーの分野では、グザヴィエ・ドゥ・ローザンヌの『9 jours à Raqqa』 が、イスラム国の元首都だったラッカの女性市長レイラ・ムスタファを追う。

映画祭を彩るはずだった女優たちのなかには、ウェス・アンダーソン監督作『The French Dispatch』に出演したレア・セドゥや、ブリュノ・ポダリデスの『Les Deux Alfred』で難しい女性上司を演じたサンドリーヌ・キベルランがいる。19世紀末のイギリスを舞台に、病気療養中の若い女性と有名な考古学者の愛の物語を描いたフランシス・リーの『Ammonite』では、ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンが顔を揃えるはずだった。メイン会場の大階段は、女優不在の寂しいレッドカーペットを嘆いているに違いない。

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texte : Pascaline Potdevin (madame.lefigaro.jp)

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