映画通が薦める、2018年のベスト3本。 編集KIMが薦める、不器用さが愛おしい映画。

Culture 2018.12.21

師走の12月とはよく言ったもので、あっという間に新年を迎えようとしているこの時期。あらためて2018年に公開された映画を振り返って、編集KIMが選ぶベスト3本をそれぞれ解説とともに紹介。うまく生きられない人間への愛を込めて選んだ、編集KIMのラインナップとは?

人々が抱える「本当の気持ち」に触れたい。

「『君僕』のように主人公たちが完璧で美しい映画も捨てがたいけれど、あえて”欠点”が魅力的に映る映画を2018年のベスト3にしてみました。滑稽でぶざまであっても、どうしようもなく愛おしく思えてしまうキャラクターに共感したり、驚かされたり。
いまの時代、LGBTQやありえないファンタジックな物語から、人というものが持つ「本当の気持ち」に、そっと優しく触れさせてくれる体験を映画で味わいたいものかもしれない。そんな視点から、観た後に、じわじわと訴えかけてくる3本を選びました」

『心と体と』

181212-kim-kokoro.jpg2017©INFORG - M&M FILM

片手が不自由な上司の男性と、コミュニケーション障害のある従業員の女性。世間から置き去りにされたようなふたりが働く食肉処理場が舞台の、とっても不思議な映画。「不器用な男女の職場恋愛が成就するまでのラブストーリー」とフツウに表現できてしまうけれど、ひと筋縄ではいかない恋の一歩一歩がたまらなく愛らしい。

ふたりが共通して見る「森の中のつがいの鹿」の夢がシュールで、飼いならせない恋の想いがにじみ出た暗喩みたいだ。これが恋だ! と認めるには、大人は時間がかかる。越えなきゃいけない外側の条件に、上手に対処できない姿が誠実に映る。

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●監督・脚本/イルディコー・エニェディ
●出演/アレクサンドラ・ボルベーイ、ゲーザ・モルチャーニ、レーカ・テンキ、エルヴィン・ナジ
●2017年、ハンガリー映画
●配給/ サンリス
※2019年1月5日(土)~10日(木)アップリンク吉祥寺「見逃した映画特集Five Years」にて上映。

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『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』

181212-kim-battle.jpg©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

テニス史の伝説であるビリー・ジーン・キング女史が、元男子チャンピオンと闘い、勝利する試合までの道のりを描いた実話に基づく作品。
女性選手の賞金が低いのは不当だという訴えから組まれた名マッチだけれど、映画の中では試合実現に向けて懸命に働くキング女史が、やがて自身の性の嗜好、同性愛に気付く過程を重ねている。

完璧に強かった話題の選手が、70年代に人目を気にしなければいけない自身の恋とアイデンティティに悩む姿。遠征先のホテルの部屋で、ひとり苦しむ場面が心に残った。ヒロインの心は、決してそのテニスの腕ほどは強くなかったはず。それでも「課して超えるために」闘う姿が、観る者の心を打つ。

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●監督/バレリー・ファリス、ジョナサン・デイトン
●脚本/サイモン・ビューフォイ
●出演/エマ・ストーン、スティーヴ・カレル、アンドレア・ライズブロー、サラ・シルヴァーマン、ビル・プルマン、アラン・カミング、エリザベス・シュー、オースティン・ストウェル、ナタリー・モラレス、ジェシカ・マクナミー、エリック・クリスチャン・オルセン、ジェームズ・マッケイ、フレッド・アーミセン
●2017年、アメリカ映画
●Blu-ray2枚組¥4,309
●販売元/20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン

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『プーと大人になった僕』

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「仕事って、赤い風船よりも大事なものなの?」。劇中、くまのプーさんの台詞にドキッとした。共感する自分がいたことと、雑誌編集者である私は、読者に「赤い風船」のように素敵なコトを伝えるために働いているのに、ときに仕事に疲れてしまうこともあるから……。

プーは主人公のクリストファー・ロビンを導く強いキャラなどではなく、ちょっと純粋すぎるおとぼけさん。でも見事に本質を突く。ラストシーンで、「今日がいちばん好き。今日が明日だった昨日には、届くと思えなかった日だから」と言うプー。びっくりした。そんなこと考えもしなかったけど、本当にそうだなあ、と感じたのと、いまこの瞬間をまっすぐ生きることの大切さを再確認したから。

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●監督/マーク・フォースター
●出演者/ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ブロンテ・カーマイケル、ジム・カミングス、ブラッド・ギャレット、トビー・ジョーンズ、ニック・モハメッド、ピーター・キャパルディ、ソフィー・オコネドー、サラ・シーン
●2018年、アメリカ映画
●MovieNEX¥4,536
※MovieNEX初回版は、プーと森の仲間たちによる可愛いアウターケース付き(両面仕様)
●販売元/ウォルト・ディズニー・ジャパン

 

編集KIM
カンフー映画にときめき、フランス映画を女らしさの教科書にして、スター・ウォーズにもはまる。つまり映画雑食主義、そして偏愛主義。映画のためなら寝不足もシアワセ。
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