Dior 2024 Spring-Summer 中世の構築的なフォルムで、強い女性像を描いたディオール。
Fashion 2023.09.28
パリ・ファッションウィーク2日めを迎えた9月26日、ディオールの2024春夏コレクションが発表された。会場は、毎シーズン恒例となったチュイルリー公園内の特設テント。イエローとピンクを背景にした、「THE GAME IS NOT HER」の文字が、会場入り口でゲストを迎えた。
チュイルリー公園の特設テントで行われたディオール2024春夏ウィメンズコレクション。DIOR RTW SS24 FINALE © Adrien Dirand
マリア・グラツィア・キウリによるコレクションでは、毎回、女性アーティストが手がける、メッセージ性の強い会場デザインも楽しみのひとつ。今回のインスタレーションは、イタリア人アーティストのエレナ・ベッラントーニによる「NOT HER」だ。会場をぐるりと巡る壁に投影されたのは、鮮やかなイエローとピンクをバックに、女性差別的なイメージの紋切り型のポートレート。そこに表現された既成概念を「NOT HER」と否定し、「そんなのは彼女じゃない。彼女はもうそんなものじゃない」などの主張が大きな文字で現れる。これまでも一貫して、女性性とフェミニズムの関係性をファッションを通して表現してきたマリア・グラツィア・キウリのコレクションの舞台にふさわしい、没入感のある会場デザインだ。
エレナ・ベラントーニによるセノグラフィ。300枚以上の性差別的な広告から構成され、「完璧な主婦」というステレオタイプを「NOT HER」と否定し、女性を定義し直すフレーズに置き換える映像が会場の壁に映し出された。DIOR RTW SS24 SCENOGRAPHY INSIDE 14 © Adrien Dirand
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ピンクの背景にイエローで「NOT HER」の言葉が現れると、いよいよランウェイにはファーストルックが登場した。
ボディを優しく包む、まるでレースのような軽く繊細なニットドレス。
2024年春夏コレクションで、マリア・グラツィア・キウリは、現在の意味を考察するところからスタートしたという。過去と未来が共存しつつ、過去でも未来でもない、現在。出発点は、ムッシュ ディオールの創作活動に重要な役割を演じた、タロットや迷信への傾倒、占い師ドライエ夫人の存在。そして、男性社会の歴史の中で、魔女と呼ばれて常に非難されてきた、知識を持ち、反抗的な女性たちに向ける視線だ。
マスキュリンなジャケットが描くのは、中世のスタイルを思わせる建築的なシルエット。また、破れ、焦げ、傷によって物質性と時の記憶を表現したファブリックが、服の重要な構成要素になっている。黒と白を基調に、グレーやカモミールを加えたモノクロームトーンに近い色使いも、神秘的で厳粛なイメージを醸している。
(左)マスキュリンなジャケットにトランスペアレントなスカート、真っ白なシャツの構築的なスタイル。(右)ポケットのあしらわれたマントのシルエットにも中世の香りが。
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(左)裂けたような布地の表情が服の重要なポイントに。(右)焼け焦げたような縁取りがアクセントになったアンサンブル。
ディオールの象徴とも言える花のモチーフは、今シーズン、X線のような濃淡でダークな表情。さらに月の満ち欠けや太陽、薬草や空想上の動物たちがモチーフに取り込まれ、神秘性を表現する。また、ワンショルダーのアシンメトリーなデザインがドレスにやシャツなど様々なアイテムに登場して、力強さの中に潜むフェミニニティを表現した。
今シーズンのダークなフラワープリント。ワンショルダーのブラウスと合わせて。
(左)天体を思わせるモチーフのドレス。(右)黒いメンズライクなパンツに、ワンショルダーの真っ白なシャツでフェミニニティを加えて。
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会場には、アンバサダーを務める新木優子、BLACKPINKのジス、アニャ・テイラー=ジョイ、ディーヴァ・カッセルをはじめ、たくさんのセレブリティが訪れた。日本からは清原果耶も来場し、フォトコールでフラッシュを浴びた。
(左から)ジス、アニャ・テイラー=ジョイ© Gettyimages
(左から)清原果耶、新木優子 © Gettyimages
(左から)ロバート・パティンソン、シャーリーズ・セロン © Gettyimages
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