保存方法、カビや皮の取り扱い......チーズにまつわる嘘と本当。
Gourmet 2019.02.26
チーズの皮を食べると身体に悪い? 少しでもカビが生えたチーズは捨てるべき? チーズの正しい保存法は? 乳製品販売・熟成部門で国家最優秀職人章(MOF)の称号を持つ職人が、チーズにまつわる疑問に答える。
チーズは購入時の包装紙に包んで保存しよう。photo:iStock
国家最優秀職人章チーズ部門の第26回選考会最終選考が2月17、18日に開催された。この機会に、フランスの食文化を象徴する食品であるチーズについてまとめておこう。果物や野菜と同じようにチーズにも旬があるのか? どんなチーズでも冷蔵庫で保存するべきなのか? 2015年に乳製品販売・熟成部門で国家最優秀職人章の称号を獲得した、チーズ専門店「フロマジュリー・ジャナン(Fromagerie Janin )」のマルク・ジャナンが私たちの疑問に答える。
チーズにシーズンはない?
嘘。消費者として環境に配慮するなら、果物や野菜、肉、魚と同じように、チーズにも厳密な旬があることを知っておきたい。たとえば冬のチーズの代名詞といえばモンドール(Mont-d'or)だ。「モンドールはこの季節にしか製造されません」とジャナンは言う。秋にお目見えするのは、モルビエ(Morbier)、サンネクテール(Saint-nectaire)、トム(Tommes)といった、いわゆる「保存の効く」より濃厚なチーズだ。
春になると山羊のチーズが食卓を賑わす。「この時期には、長い熟成を必要としないフレッシュタイプのチーズが出回ります。ミルクの分泌の季節が始まるのが3月ですから」とジャナンは説明する。最後に夏はどうかというと、ルブロション(Reblochon)、カマンベール(Camembert)、ブルゴーニュのエポワス(Époisses)など、小ぶりでより深い味わいのある牛乳のチーズが旬だ。とはいえ、シーズンを外れていても美味しいチーズを見つけることは可能だ。
冷蔵庫で保存するべき?
本当。一般的にどんなチーズも冷蔵庫で保存するようにした方がいい。フレッシュタイプのチーズの理想的な保存温度は4度。コンテ(Comté)のような長期間熟成されたチーズの場合は8度が理想だ。
保存場所は自分の家の冷蔵庫の温度に合わせて、チーズの種類ごとに冷蔵庫の上段や野菜室などに分けて保存するようにしよう。「食卓に出す1時間前に冷蔵庫から出しておくことが理想です。常温に戻すことで、チーズの香りを引き出すためです」。ただ、夏場の特に暑い時には10分で十分。チーズをさらに熟成させたい場合は、例外的に冷蔵庫に入れずに常温で保存するのが望ましい。
購入時の包装紙に包んで保存する?
本当。ただし、これはチーズを専門店で購入した場合だ。「専門店で使用している包装紙は保存に適したもので、チーズの乾燥を防いでくれます。もちろん、きちんと包んでおけばですけれど」。スーパーマーケットなどで購入したチーズの場合は、箱に入れるようにしよう。「チーズの呼吸を妨げることなく、適度な湿度を保つことができます。それを密閉容器に入れておけば、良好な状態で保存できます」とジャナンはアドバイスする。
包装紙や箱がない場合、食品用ラップフィルムやアルミホイルを使うという手もある。ただし、中身が柔らかくなったカマンベールやルブロションなどのクリーミーなタイプのチーズを、ラップフィルムやアルミホイルで包んだまま長く放置すると、風味が強くなり味に苦味が出てしまうので気をつけよう。
チーズの皮は捨てるべき?
嘘。「食べ過ぎはよくありませんが、健康上の観点から言えば、チーズの外皮を食べてはいけないということはありません。工場生産のチーズでも同様です」。ただし、ミモレット(Mimolette)やゴーダ(Gouda)は別だ。これらのチーズは製造の段階でワックスコーディングされることが多い。
それ以外のチーズについては好みの問題になる。「味に関して言えば、サンマルスラン(Saint-marcellin)のように、薄くてクリーミーで口当たりの軽い皮は美味しいです。カンタル(Cantal)、ボーフォール(Beaufort)、コンテなどのハードタイプのチーズの外皮は、硬くてぱさぱさしていて粉っぽい味がするので、あまりおすすめしません」
カビは食べない方がいい?
嘘。それどころか、「カビはチーズに風味をもたらすものですし、チーズの熟成にも欠かせません。身体に害のあるものではありません」。この良性のカビはあらゆるチーズの中に存在している。見過ごしがちだが、カマンベールの白い産毛で覆われた皮にももちろんカビは生えている。
一方、コンテやボーフォールに青カビや白カビが生えてしまったら、ナイフの先を使ってその部分だけ取り除いておけば大丈夫だ。「たとえチーズに生えたカビを食べてしまっても、たいしたことはありません。ただあまり美味しくないだけです」とジャナンは補足する。
フレッシュタイプのチーズの方が脂肪分が少ない?
本当。「フレッシュタイプのチーズは水分が多く、脂質の含有量が少ないのが特徴です」。それに対して熟成されたチーズは、製造の段階で乾燥させるため、脂肪分が濃縮されている。なお、牛乳と山羊乳のチーズに関しては、脂質の量は熟成具合とチーズの種類の違いでしかない。
ただし、身体のラインが気になる人は羊乳のチーズを食べ過ぎないように気をつけよう。羊乳のチーズはカルシウムが豊富だが、牛乳や山羊乳を原料とするチーズの倍の脂肪分が含まれている。
texte:Léa Ferry (madame.lefigaro.fr)