味覚を総動員させて堪能する究極のシャンパーニュ、クリュッグ。

Gourmet 2020.04.28

数あるシャンパーニュのなかでも「比類なき個性を備えた至高のシャンパーニュ」と称され、世界中に熱烈な愛好家を持つクリュッグ。1843年ヨーゼフ・クリュッグによって創立されたメゾンの6代目当主オリヴィエ・クリュッグは、日本の食や文化に造詣が深い人物で、今年2月、久々に訪れた東京でリラックスした表情を見せていた。

「初めて日本に来たのは1990年。大学を出たばかりの私に父から課せられたミッションは、日本でクリュッグの存在を広めることでした」当時の日本はバブル景気が弾け始めた頃で、まだクリュッグの知名度は低かったという。若きオリヴィエは日本中の食の名店を一軒ずつ訪ね歩き、メゾンのストーリーを丁寧に説明して回った。

「日本ではほとんど無名だった高価なシャンパーニュに対して、初めは尻込みしていたレストランも、根気強くテイスティングをしてもらうと次第に受け入れてくださり、好調な売り上げを見せ始めました」
複雑な味わいのあるクリュッグが日本人の味覚に合うと感じたオリヴィエは、当時ホテル西洋銀座にあった名店・吉兆で、和食とシャンパーニュのペアリングを提案し、大成功を収めた。いまでこそ珍しくない異文化の食の組み合わせは画期的だったといえよう。

オリヴィエ・クリュッグ　Olivier Krug
フランス・ランス生まれ。パリとランスでビジネスと経済学を専攻し、1989年クリュッグ入社。1990年より2年間日本に駐在し販売業者やソムリエ、ワイン愛好家、ジャーナリストらとの会合を重ね、販路と知名度を確立する。現在はメゾンが提携する120以上の契約農家とのネットワーク強化を図り、テイスティング委員のメンバーとしてその奥義を深めている。photo : KENICHI FUJIMOTO

2012年のブドウを中心に1996年から11年間、異なるワイン198種類をブレンドしてできたグランド・キュヴェ。単一ヴィンテージでは表現できない個性的でふくよかな味わいとアロマが生まれた。クリュッググランド・キュヴェ￥34,980/ MHDモエヘネシーディアジオ

ずばりクリュッグの魅力とは？　との問いにオリヴィエはこう答える。
「初代クリュッグが掲げたビジョンは“どんな年にも最高のシャンパーニュを造ること”でした」
天候に左右されず継続的に高品質のシャンパーニュを生み出すために初代が考案したのは、収穫年の異なる単一区画のブドウから造られたワインを保存し、ブレンドする醸造法だ。
「グランド・キュヴェを飲むと、まるで花火大会のフィナーレのような感覚を味わうことができるでしょう。口の中ではすべての感覚に訴えかけるような、味わいの爆発が起こります。色にたとえるなら、すべての色彩が揃っているような」

リッチでフレッシュ、ハチミツやバターのようなまろやかさ、スパイシー感……数え上げたらキリがないほど、その味わいは奥深い。この完璧な味のバランスを保ち続けるために欠かせないのが、テイスティング委員会だ。男女6名から構成されるこの委員会では単一区画のワインごとにおよそ500種類ものテイスティングが行われ、その記録をもとに高品質な味わいを保ち続けている。

クリュッグでは自社畑のほか、100以上の契約農家から厳選したブドウを仕入れている。長期にわたって歴史あるメゾンとの信頼関係が保たれているという。

唯一無二の卓越した独創性をボトルに込めたクリュッグを最大限に堪能してもらうために行っているのが、クリュッグiDのサービスだ。ボトル背面にある6桁の番号を携帯のクリュッグアプリやウェブサイトに打ち込み、商品のストーリーにアクセスすると、その年の収穫秘話や料理とのペアリング、おすすめの音楽までが紹介される仕組み。

「耳に響く音色と舌で感じる味わいは共鳴するという研究結果もあり、どちらも私たちの感覚を研ぎ澄ましてくれます」
音楽も味覚も受け取る人によって印象は変化するが、音楽とともに味わうことで、シャンパーニュの新たな一面が引き出されるという。特別な味わいであると同時に普遍的な感覚へと昇華する最高峰シャンパーニュの尽きせぬ魅力、ぜひ体験してみたい。