ニュージーランドワイン「アーラー」の魅力を堪能!ジャヌ東京のワインメーカーズディナーが見逃せない。

Gourmet 2025.06.06

YOSUKE KANAI

編集者が訪れたワインの試飲会、セミナー、生産者の来日イベントなどをレポート! ワインを取り巻く「いま」をお伝えします。今回は麻布台ヒルズにあるラグジュアリーホテル・ジャヌ東京で始まった、ワインメーカーズディナーについて。次回の開催情報もあるのでぜひ最後までチェックして!


「ジャヌ東京のワインがすごい」という噂は、インスタで相互フォローしているワインジャーナリストたちやワイン好きの投稿でよく見知っていたし、昨年末に発売したフィガロジャポン「ワインがあれば、人生は楽しい!」の特集の中でも紹介している(こちらのページはまりモグ部長が担当)。シェフソムリエの藤森達也さんは日本最年少の20歳でソムリエ資格を取得した経歴の持ち主だし、特集内で紹介している中華と自然派ワインのペアリングもとても興味をそそられるものだった。

そんなジャヌ東京藤森さんが企画した、ワイン生産者を招いたメーカーズディナーが始まる、というのだからワイン好きにはたまらない。早速、第1回となるニュージーランド「アーラー」のメーカーズディナーに参加した。アーラーは以前、フィガロジャポンの取材班が訪れたことがあるワイナリーでもあり、また「ワインがあれば、人生は楽しい!」の特集では料理家・ちづかみゆきさんが薬膳料理にぴったりなペアリングとしてロゼワインを選出している

IMG_8178.jpeg
アーラー栽培醸造経営責任者・小山浩平さんによる資料より。

ニュージーランド北島の南端、グラッドストーンでワイナリー「アーラー」を手がけるのは、日本人醸造家であり、栽培、そしてワイナリーの経営責任者でもある小山浩平さん。東京大学卒業後、金融機関勤務を経てワインの道を志し、ニュージーランドに移住。名門リンカーン大学のブドウ栽培・ワイン醸造学科を首席で卒業、カリフォルニアやニュージーランド国内で経験を積んだ後に、2018年からアーラーの栽培醸造責任者に。

IMG_8068(大).jpeg
写真左からジャヌ東京シェフソムリエ藤森達也さん、アーラーのオーナーであり販売を手がける西酒造の営業統括部長・舩木茂さん、小山さん。

経歴やインタビューを読んでいて、勝手に小山さんに対して「真面目で堅そう」というイメージを抱いていたのだが、テーブルについてすぐ小山さんが発した「海外移住して12年、日本語が変だったら遠慮なく教えてください(笑)」という言葉に思わずなごんでしまった。もちろん「真面目」という方の印象に関しては、ワインの説明やテロワールの解説を聞けば、この上なく真摯にブドウに向き合っていることがわかる。

IMG_8072.jpeg
アーラー グラッドストーン ロゼ ブリュット 2022とともに、鴨肉とそら豆 山菜のフリット トリュフ風味のひと口コーンクリームスープ

乾杯に供されたのはアーラー グラッドストーン ロゼ ブリュット 2022。ニュージーランド国内において、ブドウ栽培総数の78%がソーヴィニヨン・ブランを占める中で、アーラーでは作付の50%をピノ・ノワールが占めている。「『アーラー』という名前は古英語で『大地』という意味です。文字どおり、私たちは大地の力を信じ、バイオダイナミック農法でブドウを育てます。グラッドストーンの気候と土壌は、最高級のピノ・ノワールを生み出してくれるんです」 と小山さん。

シャンパーニュを筆頭とする「食事に合うスパークリングワイン」を造るためには、酵母の餌になるブドウそのものの十分な糖度と、ワインが2次発酵終えた際にもきりりと引き締まる酸味が必要だ。だからこそブドウの熟度は十分でなくてはならず、しかし通常のスティル(非発泡)ワインを造るためのブドウよりは酸味が残るギリギリの合間を見極めなければならない。それをふまえた上で、アーラーのピノ・ノワールを使ったロゼ ブリュットは完璧だ。しっかりとした果実味に、美しい色合い。そしてきゅっと引き締まった酸味。合わせる料理も最初から完璧だ。鴨肉とピノ・ノワールのペアリングは鉄板だし、小山さんは「アーラーの畑の前に池があって、ダックハント(鴨猟)をする人もいるんです。これは最高のペアリングですね」と語る。ピノ・ノワールのキノコのようなニュアンスを丁寧に拾ったコーンスープ、そして泡の爽やかさを生かす山菜のフリットもたまらない。

---fadeinpager---

IMG_8077.jpeg
アーラー グラッドストーン ソーヴィニヨン ブラン シュールリー 2023とともに、桜鯛のカルパッチョ 塩水ウニとキャビア サルサヴェルデと柑橘の香り

アーラーが手がけると、ニュージーランド名産のソーヴィニヨン ブランもひと味違うものになる。ニュージーランドのソーヴィニヨンといえばフレッシュ、草原を感じるような青い香り、絞ったライムのような鋭い酸味を想起する人も多いのではないかと思う。ところが、アーラーのソーヴィニヨン ブランは、古樽の中、澱の上で熟成させるシュールリーで、穏やかな香りが広がった後、爽やかに伸びる酸味が長い余韻を引き締めてくれる。

「小ぶりのグラスもいいですが、少し大ぶりのシャルドネグラスで温度変化を楽しんでもらいたいソーヴィニヨンです」と小山さん。また、キャビアやウニとワインは、実はかなり取り合わせが難しく、ちょっとでもフレッシュ感が覗けば魚介の生臭さがたちのぼってしまい、余韻に妙な感覚が残るものだ。西酒造の営業統括を担当する、日本ソムリエ協会シニアソムリエの資格も持つ舟木茂さんは「(小山)浩平の造るワインに合わせた時、魚介の生臭さが出たことは一度もないんです。こうしたカルパッチョもいいですが、寿司との取り合わせも最高です」と太鼓判を押す。

IMG_8084.jpeg
アーラー グラッドストーン ロゼ 2020と、天使エビとホタテ貝のグリル バーニャカウダソース サフランリゾットとともに。

そして「ワインに本気」という姿勢がとても伝わってくるのが、アーラーのロゼだ。ピノ・ノワールの中でもロゼワインを造るためにブドウをより分け、さらに手間のかかる直接圧搾法で仕上げる。繊細な色合いと味わいの幅の広さが身上で、だからこそ造り手の向き合い方が試される、と言っても過言ではない。

「冷やせば前菜に、温度を上げていけばメインにも対応できるロゼの万能さは見逃せません。今回は地中海をイメージしてサフランリゾットとエビやホタテ、ニンニクの効いたバーニャカウダソースといった味わいの強いものと合わせてみました」とシェフソムリエの藤森さん。果実味のふくよかさにボリューム感のある魚介のグリルはピッタリだし、ちょっと冷えた酸味のあるワインが舌を洗ってくれる。鶏肉や、ちょっと甘辛な感じの中華にも絶対に合うはずだ。

---fadeinpager---

IMG_8101.jpeg
アーラー グラッドストーン ピノ ノワール 2023(右)、アーラー グラッドストーン ヘヴンズ セレクション ピノ ノワール 2014とともに、黒樺牛テンダーロインのポシェ マスタードソース ゴボウのキャラメリゼと花ズッキーニ

そしてメインとともに、アーラーの真骨頂たるピノ・ノワールが登場した。

「ピノ・ノワールは、キノコ、土の香りが特徴、まさに『アーラー(大地)』のワインです。畑に植っているブドウ樹は平均樹齢40年くらい、真骨頂を発揮しています。そして隣に用意したのは、その年にとれたピノ・ノワールから最高の4樽だけを選んで長期熟成をかけたヘヴンズ セレクションで、2014年収穫のもの。熟成によるワインの進化がありますが、同時にその時のブドウ樹はいまよりも10歳若かった......そんなことを考えながら味わっていただければ」と小山さん。

2023年のピノ・ノワールはグラスからバラのような優雅な香りが立ち上り、同時にどこかに土やキノコの香りも。口に含めば、タンニンの優雅さの奥にどこか旨味を感じる味わい......シナモンのようなスパイス感もたまらない。次に、2014年のピノ・ノワールを手に取る。縁が明るくなったルビー色のグラスから立ち上がるのはスミレのような花の香りだ。キノコのニュアンスはその強さを増し、旨味の要素が増している。余韻がどこまでも長く、口を閉じて鼻で呼吸している香りさえ楽しい......そんなピノ・ノワールだ。チャコールの香りを纏った、マスタードの酸味が効いたビーフとの相性も最高だ。

IMG_8110.jpeg
アーラー グラッドストーン ノーブル リースリング 2021と、クレーム ダンジュ チェリーコンポートを合わせて。

デザートともに供されたのは、現地のセラードアでしか発売していないという貴腐ワイン! 育てているリースリングにうまく貴腐菌(ボトリシス・シネレア)が着いた時にしか造らないというレアワインだ。その味わいはどこまでも甘美、しかしリースリングの特徴的な酸味が余韻の奥にキリリと引き締め感を与えてくれて......。

IMG_8117.jpeg
飲食店への発売が多いというアーラーだが、一部の商品はギンザシックス地下2階にあるIMADEYA GINZAでも購入が可能。
IMG_8113.jpeg
会場となった東京タワーが見える個室で小山さんと。ニュージーランド取材、ぜひまた伺わせてください!!

ワインを造った本人に、飲んで疑問に思ったことをすぐに聞いたり、思わぬ裏話が聞けたりするメーカーズディナー。ジャヌ東京では今後も月1回の予定でメーカーズディナーを実施予定。次回は6月13日に、宮崎県の都農ワイナリー×虎景軒(中華)のコラボが決定。ぜひ気になる生産者のスケジュールをチェックして!

ジャヌ東京「メーカーズディナー」
6月13日 都農ワイナリー × 虎景軒(中国料理/40名限定)
7月18日 九平治(日本酒&ワイン) × 「飯倉」(鮨/日本料理・貸切)
8月8日 獺祭(日本酒) × 「SUMI」(日本料理・貸切)
9月5日 Pommery Champagne × 「ジャヌ グリル」(20名限定)
10月24日 Cos d'Estournel(フランス赤ワイン)× 「虎景軒」(30名限定)

東京都港区麻布台1-2-2
050-1809-5550
https://www.janu.com/janu-tokyo/ja/experiences/dining/

フィガロJPカルチャー/グルメ担当、フィガロワインクラブ担当編集者。大学時代、元週刊プレイボーイ編集長で現在はエッセイスト&バーマンの島地勝彦氏の「書生」としてカバン持ちを経験、文化とグルメの洗礼を浴びる。ホテルの配膳のバイト→和牛を扱う飲食店に就職した後、いろいろあって編集部バイトから編集者に。2023年、J.S.A.認定ワインエキスパートを取得。

記事一覧へ

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest
夏の暑さへの準備はOK? 涼しいメイク、ひんやりボディケア。
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.