散策が楽しくなる湘南ミニガイド【#02】 湘南散歩のお供は、できたてのアイスクリーム。

Travel 2019.07.07

老若男女誰もが笑顔になってしまう冷たいスイーツ、アイスクリーム。ここ数年、湘南では夏のかき氷以上に、おいしいアイスクリームがブームだ。濃厚な牛乳に加えて、地元の農園で収穫された新鮮なフルーツや野菜までもがアイスクリームへと姿を変えている。どことなく潮風が似合うアイスを片手に、海まで散歩してみては!?

元料理人が作るジェラートで、冷たい旬を味わって。

ザ・マーケット SE1|江ノ島

目の前の路面を江ノ電が通り過ぎ、老舗の和菓子店や古い神社などが軒を連ねる、湘南・鎌倉らしい風情のある地域。江ノ島までも歩いてすぐの場所だ。地元の人が、散歩ついでにふらりと立ち寄る小さなジェラート店では、「今日はスイカがあるよ!」とか「今朝、パッションフルーツが届いたよ!」とか、八百屋さんさながらの会話がちょっと面白い。

190702-m01.jpg店の前は、路面から線路へと入っていく江ノ電が見られる場所。

この場所で11年、地域密着型のジェラート店を切り盛りする新安夫さんは変わった経歴の持ち主だ。料理学校を出て、赤坂や西麻布の有名懐石料理店に勤務し、その後に渡英しロンドンのレストランへ。さらに、ホンダのF1レーシーングチームの専属シェフとして世界各国を巡り、F1の世界で「シェフ・オブ・ザ・イヤー」を受賞した腕前の持ち主だ。そんな料理人が作るジェラートだから、その味は遊び心と驚きに満ちている。

190702-m02.jpg左:地元客とのコミュニケーションを大切にする、オーナーの新さん。右:鮮度を大切にしたいから、ジェラートは一度にたくさんは作らず、店近くの工房で毎日少しずつ作られる。

「ライチときゅうり」「信州ルバーブ」「湘南片浦レモン」「黒糖バナナ」「スイカにルビー」……。味の想像ができないジェラートだからこそ、食べた時の驚きもひとしお。脂肪分が少なく、口に乗せるとさらりと溶けていくジェラート。でも、しっかりとミルクの味がついているのは、山地で放牧される牛から絞られる濃厚な牛乳を使っているから。フレーバーが持つ酸味とのバランスも絶妙だ。新鮮さにこだわりたいから、味はすべて日替わり。その日に何が並ぶか分からないのが、常連客をワクワクさせるのか「今日は何がある?」とのぞきに来る客も少なくない。フレーバーの元となる材料は、自家栽培もしくは知り合いの生産者から届くものだけを使用している。ジェラートで旬を食べる、という感覚でありたいと新さんは語る。

190702-m03.jpg左:ベースとなるミルクは、島根県の木次牛乳を使用。「山のみるく」¥430(1フレーバー)、奥は「スイカにルビー」と「お茶屋の抹茶」¥540(2フレーバー)。右:これまでに数えきれないほどのジェラートを作った。思い出のネームカードも大切に。

小さな店内には数席のカウンターがあり、ジェラートのほかオーナー手作りの焼きたてピザも食べることができる。生地から練られるピザもまた、さまざまな味が日によって加わる。さらに、江ノ電の線路沿いを腰越方面に向かった先には、姉妹店でもあるアイスキャンディ「イグル氷菓」の工房直売所が。こちらは、新さんの妻がひとりで製造販売をしている人気店だ。世界を舞台に、さまざまな経験をした料理人だからこそ、食材を喜びに変える力をもっているのかもしれない。

190702-m04.jpg上:500度の釜で焼き上げられるもちもちのピザにもファンが多い。定番の「マルゲリータ」¥860 下:店名の「SE1」は、かつて住んでいたロンドンの住所から。

The Market SE1
神奈川県藤沢市片瀬海岸1-6-6
tel : 0466-24-8499
営)11時30分〜18時
休)月(冬季不定休)
https://themarketse1.com/

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フワフワで美味な、カスタマイズできるアイスクリーム。

プレンティーズ|茅ヶ崎

茅ヶ崎駅から真っすぐ海へと伸びる“雄三通り”は、街で最も賑わいを見せる商店街。その中でも、パステルカラーのポップな外観がひときわ目を引くアイスクリーム店は茅ヶ崎のアイコン的存在だ。平日は、地元の学生たちの自転車が店前に並び、週末にはたくさんの観光客が訪れる。今年でオープンから14年。昨年には同じ通りの交差点の角へと移転をし、店内にはカフェスペースも誕生した。

190702-p01.jpg茅ヶ崎本店は、雄三通りと鉄砲道の交差点に移転したばかり。

「プレンティーズ」のアイスクリームの楽しさは、なんといっても目の前で繰り広げられるパフォーマンス。アイスクリームと一緒に、好きなトッピングの具材を選べば、マイナス20℃の大理石の上でぐるぐると混ぜてくれる。湘南出身のオーナー長谷川裕さんが、アメリカで見た冷たいストーンの上でアイスをまぜるスタイルと、できたてのアイスクリームの味に衝撃を受け、地元でもおいしいアイスクリームが食べられたら、という思いでスタートさせたのだ。

190702-p02.jpg左:マイナス20度の大理石の上で、アイスクリームとトッピングを混ぜ合せる。右:天然素材だけで作られたアイスクリームは、どれもやさしい色味。

ショーケースにならぶアイスクリームは常時9種類。定番のバニラ、生チョコ、ストロベリー、クリームチーズなどに加え、毎月数種類の季節のメニューが加わる。近年は、若い人にも地元の農家とのつながりを持って欲しいという思いから、野菜を使ったガストロノミーにも挑戦していて、この夏は地元の農園でとれたトマトシャーベットがメニューに加わった。できたての味にこだわりたいから、毎朝早朝から仕込みを開始するという長谷川さん。できあがったアイスクリームも冷やし過ぎないことがポイントだ。その日の湿度や天候に合わせて、厳密な温度管理をし、ショーケースの中も種類によって温度をわける徹底ぶりだ。だからこそ、できたてのフワフワが味わえるのだ。

190702-p03.jpgレトロなアメリカンスタイルが可愛らしい店内。近所の人が持ってきてくれる古いおもちゃが、フォトジェニックな空間を作る。

この“まぜまぜアイスクリーム”が見たくてやってくる客も多く、まぜまぜ中は誰もが子どものようにショーケースに張り付いてしまう。クッキー、チョコチップ、ラムネ、アーモンドやクルミ、中にはマシュマロやマーブルチョコなど子どもに人気のお菓子もトッピングメニューに並ぶ。目の前で、自分だけの味を作ることができる楽しさは、アイスクリームを食べる幸せ度を倍増させてくれる。

190702-p04.jpg左:店の奥はカフェスペースに。焼きたてのワッフルやコーヒーなどもここで。右:「おイシイ農園 トマトシャーベット」に、ラズベリーとレインボースプレーをトッピング。プレンティーズアイス¥450(アイス1種+トッピング2種)

かつてお母さんに連れられベビーカーで店に来ていた小さな子が、女子高生になって友だちを連れ立ってやって来る。なかなか味を決められない小学生の手には、100円玉が握られている。小さな子どもからお年寄りまで、ここでは誰もが笑顔で夢のような食べ物を頬張っている。

190702-p05.jpgわくわくするカラフルなディスプレイがいっぱいの店内。手作りのガーラント。

Plenty’s
神奈川県茅ヶ崎市東海岸北1-7-28
tel : 0467-88-0013
営)9時30分〜21時(7・8月は、22時まで営業)
無休
http://plentys.net/

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ハワイ島で生まれた、ホームメイドの味を引き継いで。

ヒロ・ホームメイド・アイスクリーム|鵠沼海岸

鵠沼海岸までは目と鼻の先。海上がりのサーファーたちが、サーフボードを片手に戻ってくる姿は、まるでハワイのよう。そんなハワイらしさをさらに盛り上げてくれるお店が、「ヒロ・ホームメイド・アイスクリーム」だ。実はここ、知る人ぞ知るハワイ島の老舗アイスクリーム店。1970年代にハワイ島の日系人夫妻が自宅で始めたホームメイドのアイスクリームは、アイスクリーム大国であるアメリカ本土から入ってくるものとは一線を画すものだったという。島のフレッシュな食材をふんだんに使い、丁寧に手作りされたアイスは長い月日をかけ多くのファンを惹き付けた。卵アレルギーのある子どもでも安心して食べられるようにと、卵を一切使わないのも特徴だ。

190702-h01.jpg左:千葉県南房総のパッションフルーツを使った「リリコイ」に、地元の有機農園で採れたミントの葉をふんだんに使用した「農園たそりあのミントとチョコチップ」をダブルで。ダブル¥590、シングル¥390 右:小さな工房ショップは、いつも客で大賑わいだ。

ハワイ大学のヒロ校に通っていたオーナーの永江仁さんが、海で偶然出会ったのがそんな「ヒロ・ホームメイド・アイスクリーム」の4代目だった。その出会いから、地元の人に長年あいされ続けているアイスクリーム作りに感銘を受けた永江さんは、4代目の自宅地下に部屋を借り工房を手伝うようになったという。永江さんが、そのまま5代目としてハワイ島の店を継ぐことになったのは、とても自然な流れだった。アイスクリーム作りに携わって10年目を期に日本への帰国を考えた永江さんは、日本でもホームメイドスタイルのおいしいアイスクリームを広げたい、店を構えるならヒロに似た場所がいいと時間をかけて準備をし、2006年に満を持して鵠沼に工房をオープンした。ハワイ島の工房はいまもあり、現在は6代目が製法を引き継いでいる。

190702-h02.jpg店舗から大きなガラス窓を隔てて、アイスクリーム工房が。すべての作業がここで行われている。

店の半分以上は工房になっていて、毎日ガラス窓の向こうでアイスクリームが作られている。永江さんが引き継いだホームメイドのスタイルと卵を使わない製法に加え、新鮮なフルーツや野菜など吟味した日本の材料を取り入れ、日本人の繊細な舌に合わせ味の改良も重ねられている。それは、ハワイアンソルトやマカダミアナッツ、ココナッツといったハワイらしい定番とともに、旬の素材を使った季節限定のフレーバーに落とし込まれている。藤沢で栽培された無農薬のキャンディミントとクーベルチュールのチョコレート、マンゴーやクインシーメロンも、フルーツの旨味を凝縮したジューシーさ。人気のピスタチオにいたっては、工房でローストから行う徹底ぶりだ。味にうるさい美食家や大人のファンを多く惹き付けているのは、ラボのように実験に実験をかさねながら、とことんホームメイドにこだわる永江さんの姿勢ゆえだろう。

190700-hilo_6307.jpg

外のテラスは、アイスクリームを片手に持ったサーファーたちの憩いの場にもなっている。

Hilo Homemade Ice Cream
神奈川県藤沢市鵠沼海岸5-13-30
tel : 0466-20-6120
営)10時〜17時30分
休)水、木
http://www.hilohomemade.jp

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photos : MAYUKO EBINA, réalisation : MIKI SUKA

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