京友禅の老舗「千總」初の旗艦店で、優美な世界に浸る。
Travel 2020.09.09
海老茶色を基調としたシックな雰囲気の店内。着物と中庭の自然をともに楽しむことができる。
1555年創業の以来、京友禅の随一の老舗として伝統の技や美を発信してきた「千總」。8月23日、創業の地である烏丸三条に初のフラッグシップストアをオープンした。
店内に足を踏み入れると、長い歴史の積み重ねを感じさせる重厚かつ優美な空間に包まれる。まず目を引くのが、着物の向こうに中庭の緑が見渡せるよう設えられたガラスの衣桁(いこう)。千總のインスピレーションの源である自然と感性と技術の結晶である着物を、ともに感じられるようデザインされている。店舗デザインを手がけたのは、パリを拠点に活動する建築家の田根剛。
広々とした店内には、訪問着から子供のお祝い着や、スカーフといった千總が展開する全コレクションを一堂にラインナップ。本店限定アイテムとして、現在では希少となった国産の絹を国内で織った純国産の白生地や、その白生地を素材や技法にこだわった草木染で仕上げた色無地を展開。着物に合わせたオリジナル帯も本店限定で初めて制作される。
そして、お誂えを強化。豊富なアーカイブ資料や技術見本を閲覧しながら、製作担当者や図案家と相談し、真っ白な絹から自分だけの一枚を完成できる。なんとも贅沢なオートクチュール体験となる。
2階のギャラリーでは、オープン企画として、「白―はじまりの色―」を開催。約2万点の所蔵品から選ばれた小袖や婚礼衣装、屏風の図案などの展示を通して、古来人々を魅了してきた白の魅力や千總の美意識に触れられる。
千總が大切に受け継いできた技術や文化、そして新しいものを生み出す創造性、芸術性など、千總の世界観をトータルで感じられる場所となる初の旗艦店。着物好きならずとも、ぜひ訪れて、日本の伝統美に触れてほしい。
現在展示してあるのは、「鏡花水月」をテーマにした2020年の新作着物。
お誂えはこちらのテーブルで。刺繍や箔の追加、色替えなどカスタムオーダーにも対応する。
持続可能なものづくりを大切にする千總ならではの、草木染めの色無地。各色1点で10色を取り揃える。
店内入って右手の吹き抜けの空間には、オリジナルのスカーフや扇子などをディスプレイ。
本店準備のため休館していた千總ギャラリーが、本店オープンとともに再開。展覧会「白ーはじまりの色ー」では、宝尽くし文様の産着や、幕末から明治時代の日本画家、岸竹堂の下絵と屏風などを展示。
Chiso Flagship store
京都市中京区三条通烏丸西入御倉町80
tel:075-253-1555
営)11時〜18時
休)火、水
www.chiso.co.jp
『白―はじまりの色―』
会期)開催中〜11月23日
休)火、水
料:無料
texte:NATSUKO KONAGAYA