Hot from Paris 混迷するフランス政界。新首相は誰に?
Paris 2024.08.29
6月以来、政界が混迷している。富裕層優遇、エリート主義といわれ人気が低迷しているマクロン大統領。その信任投票の意味合いを持つ欧州議会選挙で、極右政党の国民連合(RN)が31%の得票率を記録したのだ。
RNの前身は反移民、差別主義的主張を繰り広げた国民戦線(FN)だが、近年は党名を変えてイメージを和らげ、ポピュリズムで国民の心を掴んでいる。特にTikTokのフォロワー数200万人を数えるジョルダン・バルデラ党首のミーティングは、人気歌手のコンサートを思わせる熱狂ぶりだ。
ところがこの選挙でのRN大躍進を受けてマクロン大統領が国民議会を電撃解散したことから混迷が始まった。
選挙運動はたった3週間、計2回の投票はヴァカンス開始のタイミング。極右政権誕生を阻むために左派連合の新人民戦線(NFP)が結成され、社会党のオランド元大統領が復帰して立候補。サッカーのエムバペ選手も反極右への投票を訴え、メディアは連日大騒ぎ。
フランス人は普段から政治の話題が大好きなのだが、今回の騒ぎは話の肴だけでなく投票にも繋がった。ヴァカンス組も慌てて委任投票手続を行い、投票率は第1回が69%、第2回が66.63%という高スコアを記録した。
第1回投票で議席過半数に迫る勢いだったRNだが、フタを開けてみると7月7日の決戦投票ではNFPが逆転。左派陣営NFPに極右のRN、大統領陣営が続き、議席の3分の1ずつを分け合った。極右バルデラ内閣誕生のシナリオが回避され、レピュブリック広場には左派パリジャンが集結、「リベラシヨン」紙の一面には「C'EST OUF」の文字が踊った。ホッとした「ふう」とも「クレイジー」とも取れるタイトルは、まさに国民の空気を言い当てている。ヴァカンスを前に、サスペンスの果ての結果にほっとひと息、というわけだ。
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ここで国民の政治への興味は一気に冷めた感がある。
オリンピックの盛り上がりも終わって「休戦」期限が切れても、辞職したアタル内閣が暫定的に執務する状況は変わっていない。大統領は各政治グループとの面談を行った結果、左派の首相候補を却下。これに対して左派は「国民の投票結果を無視」と反発する一方で、内部に亀裂も生まれている。
8月も終わろうといういま、一巡したはずの大統領と政治グループとの面談はさらに続く様子。パラリンピックも「オリンピック休戦」期間にカウントされていたのだろうか? いずれにしろ、首相任命にはまだまだ時間がかかりそうだ。
*「フィガロジャポン」2024年10月号より抜粋
text: Masae Takata (Paris Office)